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前編

 ワンワフ! と愛犬の鳴き声がする。あー、もうちょっとだけ睡眠をくださいな。


 ワンワフ! うーん、今何時だろう? 手を枕元でごそごそやる。携帯、携帯と。そしてつかみ、時間をチェック。


 まだ、早朝の五時だった。早いよー……ガラケーを閉じパチンといわせる。そして私は口を開け指で奥歯を撫でた。ヨシヨシと……。


 すると歓喜、狂喜したようにワフワフと愛犬のポチが声を発する。


 そう、私の相棒は歯が犬の……そう歯犬(はいぬ)なのだ。


 頭をガリガリやり、おもむろに起き上がった。ああ、枕が恋しい……。惰眠をむさぼりたい……。


 出社にはまだ余裕いっぱいだよ。あちゃー、トランクス一枚で就寝だったか。「ヘブシ!」とくしゃみが出る。


 するとびっくりしたみたいでウー! とすごむ口内のワンコ。


 着替えるか。早いから長袖のジャージにしようと……。そして赤いのに着替えると顔を洗った。


 ワンワフ!

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