プロローグ 5page
俺とフィーリアの子供に俺は「フィエム」と名付けた。フィエム・オーリス、それが俺たちの子供の名前だ。
俺はフィーリアだったものを俺自身の空間魔法の中にしまい込んだ。
そして、フィーリアを殺害した場所に俺とフィーリアの思い出の品を一つ埋めた。
「フィエム。お前は真っ直ぐに育って欲しい。父は人類、母は黒竜という特殊なハーフだけど。あいつの様に全ての者を愛せる黒竜になってくれ。」
まるで定位置とでもいうように、俺の肩に乗っているフィエムが返事をするようにクギャと鳴いた。
少し大きいサイズのベッドをと布団を1時間と少しで作り上げた僕はフィーリアの為の料理に取り掛かっていた。
日本にあったような上質の調味料などここにあるわけが無い。そもそも、ドラゴンが香辛料やら塩やらを揃えているわけがない。
木を集め、そこにフィーリアに火をつけてもらう。その上に大きな葉っぱで肉屋木のみを包んで焼く。
食べられないものではない。
俺が過去に食べていたものと比べれば、遥かにマシだ。
フィーリアに焼きあがった肉を渡せば、嬉しそうに頬張る。
「うむ、美味しいぞ!詩音!」
俺も一口食べてみる。
ジュワッと肉の旨みが口いっぱいに広がる。
「このお肉、凄く美味いな。なんていう動物の肉なんだ?」
蒸し焼きにした事で、ジューシーに仕上がった肉は今まで食べたどんなものよりも美味しかった。
何よりも、俺と一緒に食卓を囲む人が俺の作ったものを美味しそうに、嬉しそうに食べてくれることが嬉しかった。
「おい、詩音。なぜ、泣いておるのじゃ?」
言われて初めて、自分が泣いていることに気がついた。
無理をしていたことには気がついていた。
でも、慣れたつもりだった。
「別に、気にしないでくれ。」
フィーリアの手が俺の涙を拭った。
それでもなお、ポタポタと頬を伝って地面を濡らす。
「泣いてもいいのじゃ。お主もツラかったのであろう?だから、お主は人に甘えてもいいのじゃ。ここには、私しかおらぬ。」
泣いてもいいんだと言われた事は、初めてだった。泣けば叩かれた。痛いといえば叩かれた。何をしても叩かれていた。
気づけば、何も言わなくなった。
何も感じなくなった気がしていた。
初めて、僕は子供のように泣いていた。
フィーリアの胸を貸してもらってわんわんと泣き続けた。
そして僕は、泣き疲れて、いつの間にか眠ってしまっていた。
筆が珍しく進むような気がしましたので、久方ぶりに書きました。