プロローグ 2Page
光が彼女だったモノを包んだ。
僅かばかりの間に光は何十倍もの大きさに膨れ上がった。
光が止み、中から黒い大きな竜が姿を表した。
その竜に、首はなかった。
近くに転がる竜の首が目に入った。
その10mを超える巨体からごろりと何かが転がる。
その小さな何かはクギャーと鳴いて、ムクリと起き上がる。
必死に立ち上がろうとプルプルと震えているのは、今横に寝ている彼女だったモノに良く似た黒い小さな竜だった。
まさか、とは思う。
しかし、それしかあり得ないのだ。
彼女は俺から長く離れるコトを嫌っていた。
ある時からは、寝所を共にし、そういったコトもしていた。
十中八九、この竜は俺と彼女の子だろう。
俺は知らぬ間に小さな竜に近付いていた。
そっと触れようとするが、ふと手や体が真っ赤に染まっているコトに気が付いた。
少女は切れ長な瞳で俺を射抜いた。
そして、そっと口を開く。
「どうじゃ?このような姿になるのは久方ぶりじゃが、中々美しいじゃろう?」
プルプルと柔らかそうな唇が動き、鈴の音のような美しい音色を奏でた。
しかし、それよりも何よりも俺の目線を釘付けにしているものがある。
それは…。
「な、なんで、裸なんだよ!?」
大きくもなく小さくもない、手のひらに収まりそうな程よい大きさの胸が、可愛らしいおへそが、太ももと太ももの間の秘密の花園が、白くて美しい足が、全てがさらけ出されていたのだ。
「ふむ?…そうか!そうじゃったの!人とは、愛しい者以外に肌は晒さぬのじゃったな。しかし、どうするかの?今、服の持ち合わせはないぞ?」
俺は慌ててTシャツを脱ぐ。
ハートマークの中心にJapanと大きな字で書いてあるそのTシャツはなぜか俺が気に入って着ているTシャツだ。
そして、横を向き、チラチラとその姿を視界にいれ、脳裏に焼き付けながら、俺はそのTシャツを手渡した。
「と、とりあえず、着てくれ。俺が着てたものだけど、とりあえずそんなに臭わないと思う。」
Tシャツを受け取った少女はスンスンと匂いを嗅いでいた。
なんだか恥ずかしいが、自分で話題に出してしまったために、どうこう言いづらい。
「確かに、嫌な匂いではないが。何というか、癖になる匂いじゃの。」
少し大きめなTシャツに身を包んだ姿は中々俺のフェチ心をくすぐる。
白い足を隠す程の面積を持たぬTシャツが素晴らしい。
「そういえば、ここはどこなんだ?俺にはここの地理がさっぱりなんだが?…って、何をしている?」
俺にそろそろと近付いて来た少女は俺の体にしがみついて、スンスンと匂いを嗅いでいた。
「見てわからぬか?お主の匂いを嗅いでいるのじゃ。」
腕や背中やらに感じる柔らかさに、俺の胸はドキドキと高鳴っていた。
しかし、それを押し殺して極めて冷静を装った。
「それより、ここはどこなんだ?」
スッと俺から離れた少女が考えているとアピールするように小さな可愛らしい手を顎の辺りへと持っていった。
「私にはわからぬな。昔はなんと言っていたかの?そういえば、この間来た男が言っておった気がしたのじゃが…。さっぱり覚えておらぬ。」
気持ちがいい程にハッキリと断言して見せた。
そういえば、俺はこの少女の名を知らぬコトを思い出した。
「まぁ、それはいいや。そういえば、君の名前は?俺は天月 詩音。」
少女はニコリと笑った。
そして、俺の瞳を真っ直ぐに見つめた。
「私は黒竜ヴェルの一人娘。フィーリア・オーリスじゃ。」
ついに、二人の自己紹介ができました…。
とりあえず、現在と過去を同時に進めて行きます。
過去の話が終わってからが本編のつもりです…。
プロローグは、いつ終わるんでしょうね?