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Stragglers Party  作者: 榊屋
序章―A muderous fiend―
2/12

2話 裏表リミテッド

 家に着く。

「ただいま」

 返事は無い。

 僕はリビング横の座敷に入り、祖父母の仏壇に手を合わせる。

「……」

 僕はやはり、父さんの息子なのだろう。ねぇ、じいちゃん、ばあちゃん。

 誰も何も答えない。

 僕はそのまましばらく座って手を合わせていたが、部屋の古い時計がボーンという音を立てて響く。

 時計は3時を指していた。リビングのソファーに転がって、テレビを点けた。

「……ニュースはまだやってないか」

 昔見たドラマの再放送をしていた。

 だとすれば休憩しますかね。


「ただいま」

 という声で目が覚めた。

 ああ、寝てしまっていたのか、ということに気が付いた。

「もしかして寝てた?テレビの電気がもったいないよ」

 姉が声を掛けつつ、そして冷蔵庫の前へ。

「寝てない」

「あんた、昨日の夜遅くも出かけてたでしょ?」

 人の話を聞いてないな。寝てないって言ったのに……。

 ていうか知ってたのか。

「殺人鬼だか暴力男だか分かんないのが、うろついてんだから気をつけるように」

 そう言って1ℓサイズのペットボトルのお茶を飲み始めた。

「姉さん……」

「何?」

「……本当に高校行っていいの?」

「いーよ。無償でしょ?他んとこよりマシ」

「寂しくない?」

「はぁ?」

 姉は間抜けな声で応対した。

「父さんと母さんは海外で活動中……祖父母も他界……姉さん1人になるでしょ?」

「アホか。私はもう18だ。もうすぐ成人だっつーの」

「でも彼氏もいな「殺すぞ」

「はい、すいませんでした。包丁を下ろしましょう」

 姉の殺すときの殺意は、冗談じゃないくらい僕の心をえぐってくる。父と母の影響だろうか。

 危険な女だ。

 何とかしないと。

 

「あんたは心配しなくていい」

 姉はそれだけ言うと2階に上がっていった。

 ……。

 時計を見る。

 6時だった。つまり3時間余り寝ていたということか。

 ショックー。

 で、テレビ(点けっぱなし)を見る。


『本日、15時頃、1人の男性の殴殺死体が発見されました』

 15時……僕が寝始めた頃か。

『昨夜の未明頃、殺害されたと思われ、以前からの無差別殺傷事件と同一犯で、これで被害者は17人目と警察は発表しています……』

 その後、キャスターやコメンテーターが事件について話し始めた。

 どうも人気のないところで殺されたらしく、偶然通りかかった高校生3人のグループが見つけて通報したそうだ。普段は通らない帰り道で、もし通らなかったら気付かなかっただろう、ということらしい。

「さてと」

 僕は呟いてから立ち上がり、2階に上がって仮眠を取る事にした。テレビを切るのも忘れずに。

 階段を上がって自分の部屋の前に、そしてドアノブに手を掛けた。

「襲」

 と、隣から声が上がった。

 見ると姉が自分の部屋から顔だけを出してこちらを見ている。

「夕飯は?」

 寝ようとしていることがばれているようだ。

「起きたら食べるから適当に作っといて」

「コンビニ弁当でいいか?」

「作っとけ!」

 俺は姉を叱咤してから、自分の部屋に入った。

 部屋はがらんとしていた。

 荷物はほとんどまとめられ、寝るのはロフトなのでベッドもなく、あるのはもう使うことも無い学習机と椅子だけだった。

「……」

 僕はポケットから紙を取り出して、机の上に置いてからロフトを上がる。そして布団に横になってから携帯電話を開く。

「……」

 トップニュースでは、『現代のねずみ小僧』という見出しが『オークション 全て贋作』というものがあった。もちろん、僕らの地域の『連続殺傷事件 17人目』というのもあった。世の中、犯罪に満ちているなぁ。

 思いながら連続殺傷事件の記事を見る。

「今まではナイフで14人だったが、19日以降、殴殺に転校した……か」

 呟くように読み上げる。

 まぁつまり殴殺死体は3人ということか。

 ということは事件は殴殺死体は3日前から1つずつ作られているわけだ。別に無差別殺傷事件をそこまで取り上げる必要はなかったんじゃないだろうか。だって、どうせ数年後には何の問題もなかったように表舞台から消えるのだから。

 さて、眠りに入ろう。




 ピピピピ……。

 と、アラーム設定しておいた携帯電話が、音ともに震え始めた。

 時間は12時。

 ……よし。

 隣の部屋……姉の部屋の扉をノックする。

 返事は無い。開ける。

 居ない。

 1階へ降りる。誰も居ないし、飯も無い。

 計画通り、結局はコンビニに行ったのだろう。僕と一緒で今まで寝ていたであろうことは容易に想像できる。

「……やっぱりなぁ」

 僕は自分の部屋に戻って着替える。黒いパーカーとジーンズに身を包む。

「……姉さんは楽にしてあげないとな」


 僕は自分の学習机の中からナイフを取り出した。

 父の名前が柄に刻まれているナイフだ。元々はふたが存在していなかったそうで、父が蛇の皮のようなもので作ったナイフカバーに入れてある。取り出して刃を見る。研いであり、錆なんて1つも見当たらない。

 準備完了、計画を遂行しよう。

「っと……」

 部屋を出ようと足を向けてから、机の上に置いておいた紙をポケットに入れた。それから今度こそ部屋を出た。


 家を出て、コンビニの方向を見る。

 月が無い空で星の光を感じる。

「……行ってきます」

 今行くよ。


 楽にしてあげるからね。


 姉さん。


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