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~後継 succeeded to wishes5~

 砂丘が船首の突端へと少しずつずれてゆく。ラードックは、ポットにヤカンの熱湯を注ぎ込むように、慎重に修正舵を切っている。その視線は砂丘の更に奥、遠くに舞う砂塵へと向いていた。外に立てられている白旗の靡き方から今は向かい風に切り上がっている状態だ。


「減速一杯、次の指示と同時に帆を張るよう伝達しておいてください」

 敵が直ぐ近くまで迫ってきているにもかかわらず、ラードックは速度を落とすよう命じた。その指示に疑問を挟むこともなく、乗組員たちは淡々と作業を行っている。船員に握られている制御棒が点滅を始め、緑光がみるみるうちに弱くなっていった。

「9……8……7……」

「第一、距離残り約150メード、第二、距離残り約200メード」

 30カウントは残り10秒を切っていた。後方からは番号付けされた二隻の巨船がまっしぐらに向かってくる。視界を席巻してくる白い敵船にピエールは焦りを禁じ得ず、船首と船尾とを忙しなく見比べた。

「おい、なんで速度落とすんだ! このままじゃ追いつかれるぞ!」

「大丈夫、どんぴしゃです」

「……はぁ? 何言って――えっ」

 零。船員がカウントダウンの終を告げると共に船体が大きく揺れた。船首が上へ、続いて右側へ傾き、後尾にあった敵船が大きく横に移動した。続いては砂丘の頂上が視界の右から飛び込んでくる。前方にあったはずの砂丘が僅かな時間で船尾へと回っていた。

 ――違う、回っているのはこの船だ。

「ちょ、これ、倒れるぞ!」

 ピエールが足を大きく開いてバランスを取る。船全体が傾いていることにはそこにいる皆が気づいているはずだ。もし床に林檎でもあれば勢いよく転がって壁に叩きつけられてぐしゃぐしゃになるくらいの傾きっぷり。それでも船員たちは慣れたもので淡々と持ち分を守っている。

「第一、距離100メード、第二、距離140メード。――第一から魔力の質量増大を感知!」

「針路150……140……130……」

 唐突に、空が一瞬白く明滅した。

「敵船より魔法が発射されました! 属性雷!」

「――最大加速!」

 ラードックと敵船を監視していた船員の声が重なった。見ている景色がほぼ半回転し、敵船の姿を船首の横に捉えたところで緑色の制御棒が再び輝き始める。

 船底の後部に設けられた四つの穴から猛烈な風が吹き出し、砂を抉る。時を同じくして二本の綱を握り締めてマストの上から甲板へ飛び降りる船員が二人。反して下に置かれていた帆が二本の縄に引っ張られ、滑車の要領で上昇。帆柱に真っ白い帆が高々と掲げられてゆく。

 その時には近い方の敵船から範囲魔法が放たれていたが、先にマストの上にいた船員が着地、持っていた縄を手早く帆柱に結び付けた。張られた帆の真ん中に強い追い風が飛び込み、結ばれた縄からあそびの部分が失われ、ピンと張り詰める。

 次の瞬間、ほとんど止まっていた砂船が急加速した。斜めに傾いて倒れる寸前だった船体が、帆が受けた風に支えられて体勢を元に戻す。馬車並みの大きさの雷弾を右舷側にやり過ごし、敵船の左側を擦るように通過。その速度差を目の当たりにしてそのまま飛び移る余裕がないと判断したのか、大船の甲板にいた敵歩兵たちが縄つきフックを次々に投下した。鉤爪のついたフックが二つ、船尾の鉄柵に引っかかったが、乗り移る間もなく備えていた船員に剣で断ち切られる。みるみるうちに遠ざかる敵船の船尾には、柵を掴んで怒鳴り散らしている騎士たちの姿があった。


 ほとんど鋭角のターンを披露したルクセンの船に追従すべく、セーニアの船が二隻、左右に開くように大きく旋回を始めた。だが、ラードックたちの神業とは比べるべくもない。大型船であるということ以上に、地形を利用した方向転換でないことが決定的な差となった。

 敵船の旋回は遅れに遅れ、やっと横腹が見えた時にはその姿は豆粒大になっていた。距離を稼いだところで右手にある砂丘の裏手に回り、敵船の姿を見失う。つまりは、相手の視界からも逃れたことを意味していた。

 ピエールとシュイが圧巻の操船を褒めちぎる。

「すっげー! なんだよ今の、もうやばいかと思ってたらあっさりと振り切っちまった」

「驚いたな、船の動きとはとても思えない」

「船体の左半分だけをわざと砂丘の斜面に乗り上げさせたのさ、速度とタイミングを間違えるとそのまま転倒しちまうから内心冷や汗ものだけどな。大型船は減速しても質量がでかいからああやって慣性で進んじまう。ある程度小回りが利く中型船と違って旋回にはそれなりの時間がかかるんだ」

 副船長の得意気な説明にシュイは納得したように顎に手を添える。

「あの減速は方向転換の円を極力小さくするために行ったってわけか」

「ええ、まさしく。敵は少なくとも三隻確認されているようですし、船の動きにもどこか余裕が覗えました。大方、敵の友軍が回り込んでいる方角へと我々を追い立てていたのでしょう。一刻も早く振り切った方が得策と判断しまして」

 ラードックが片手で操舵輪を動かしつつ、もう片方の手でミニグラスを外し、胸ポケットにしまう。続いて額につけていた薄茶の遮光ゴーグルを下ろす。間もなく昇ってくる朝日への対策だろう。

「けれど、未だ速度で負けていることに変わりはない。また追いつかれてしまうこともあり得るよな」

 シュイの指摘にラードックはにこやかにうなずく。

「この状況、どうやって切り抜ける?」

「簡単なことですよ、敵船が通れなくてこちらの船だけ通れる場所へと誘い込めばいい。こちらの追撃を諦めてくれればお互い幸せになれるのですが、引き返してくれるかは何とも言えませんね。まぁ、指揮官の器量次第ですか。同じ状況下であれば、私があちらの船に乗っていたならまず諦めますけれど」

「……そんなに都合のいい場所があるのか?」

 そう訊ねたピエールの横で、イヴァンが船員の横からテーブルに広げてある砂海図を確認。引かれている直線に顔をしかめる。

「まさかとは思うが、ソロンへ向かうつもりか」

「またまたご名答、イヴァンさんに10ポイント差し上げましょう」

 何に使えるポイントだ、と訝るイヴァンに、ラードックは考えておきますと言葉を濁した。


――――


 セーニア側の船はシュイたちの乗っているものとは違い、操舵室でも快適に過ごせるよう改築がなされていた。周りは透過壁で前半分の視界は良好。室内も貴族の使うようなクッション付きの椅子が持ち込まれている。また、いつでも喉を潤せるよう食器棚や食料庫までも備え付けられているという手抜かりのなさ。どちらかといえば一般家庭のリビングという風合いだ。


「ソロンの廃墟? なんだそれは」

 紅のマントを身につけた背の高い、厳めしい顔つきの騎士バングルは壁際の椅子に寄りかかりながら前にいる操舵士に訊ねた。中肉中背の操舵士は座っているバングルの顔色を窺う。やっとのことで船が回頭し終えた時には不審船の姿はどこにも見当たらず、仕方なしにおよその見当をつけて後を追っていた。追い詰めたはずの獲物が手元をすり抜けたとあって、バングルの機嫌はお世辞にもよろしくなさそうだ。

「……ソロンはルトラバーグから西南西に位置する、数十年前の大干ばつで滅びた町の名です。以前から座礁の絶えない地域で船の墓場などという物騒な異名もついているようですが、連中の取った針路からするとその近辺を目指しているのだと思われます。このまま進めば三十分ほどで到着するかと」

 浮かない顔の操舵士にバングルが唇を尖らす。

「何か問題でもあるのか」

「は……、その辺りの地理にはさほど詳しくないもので。向こうに地の利があるとするならば、そこに逃げ込まれると振り切られる可能性が多々……あ、いえ、捨て切れないもので」

 自分に向けられる視線がきつくなったのに気づき、操舵士が慌てて言葉を訂正する。


 気まずい沈黙を破ったのは傍らで控えていた老騎士だった。

「連中がそこに辿り着くまでに追いつける可能性は? こちらの方が速度は勝っているのだろう」

「確かに速度はこちらに分があるようですが、先ほどの不審船の挙動を見る限り、相当な腕前の乗組員で構成されているはずです。中でも操舵士の腕前は別格、おいそれと認めたくはありませんが私より上でしょう。以上の理由からそこに辿り着くまでに追いつけるという保証は、致しかねます」

 操舵士は要点だけを掻い摘んで説明した。もちろん、相手の船がやったことがどれほど曲芸じみたことかは多分に理解している。細かい点を列挙すればいくらでも説明できる。だがおそらく、船乗りでなければその恐ろしさはちゃんと伝わらないだろうとも思われた。

「ふむ、おのれより相手の技量が優れているのを認めるは容易くない」

 腕を組んでうなずいている老騎士に操舵士が「恐れ入ります」と頭を下げた。

「……手柄を立てるチャンスをみすみす逃したくはないが、こうなっては仲間の船の索敵次第か」

 再び操舵士が何かを言おうとするのを遮って、外から一人、若い騎士が入ってくる。


「バングル隊長、これ以上持ち場の座標から離れては定刻までに戻れなくなります。既にルトラバーグの攻略戦も始まっている頃ですよ。後方支援の統括に抜擢されたディアーダ中隊長は女性ながら厳しい方だと聞き及んでいますし、一旦戻られた方が無難かと」

「ハンッ、あんな小娘に何ができるというのだ。後方支援など無賞必罰の貧乏くじ、主戦場から外された者に対して抜擢という言葉は的確ではなかろう。ま、皇家だからという理由で危険から遠ざけられたのかも知れんがな」

 男である以上綺麗な女は嫌いではないが、その下で働けとなれば話は別だ。騎士が女の下についたと後ろ指を差されかねない状況に、小隊長のバングルは苦々しい顔を隠さなかった。

「だからこそです、仮にもあの方は皇族ですよ。加えて、今尚騎士たちの尊敬を集めているナイト・マスターの遺児でもあります。彼女の人気と血統を考えれば敵に回さない方が得策かと」

「それくらいわかっておるわ! ――まったく、攻略戦が聞いて呆れる。まさか魔物をけしかけようなどとは、一体上は何を考えているのやら」

「……お願いですから会議でそのような言動は慎んでくださいよ、今の発言は軍法会議物です。あれほど大規模な砂嵐に突っ込むのは自殺行為、魔物を利用するという突飛な点に目を瞑れば中々の良策では」

 愛想笑いする若い騎士に、バングルはフンと鼻を鳴らした。今回課せられた任務はルトラバーグの攻略戦に際し、けしかけた魔物に追い立てられて逃げ延びてきた者たちを手際良く始末することだ。そのために機動力のある砂船に乗ることを許されていた。

 既に勝敗は決しているようなものなのに、徹底的に相手を潰す作戦を発案し、採用する上層部には底知れぬ悪意を感じる。そして、騎士の誉れとなりえぬ戦いを下っ端に丸投げしてくるのが何より腹立たしかった。


「失礼します」

 バングルが肘の辺りを苛立たしげに指で叩いていると、白い制服を着た乗組員が入ってきた。

「バングル様、見張りから報告です。北西で軍用の照明魔石が上がりました、味方の船が不審船を発見したようです」

 船室内にどよめきが上がる。

 ――どうやら、運はまだこちらに向いているか。

「――よし、敵船のおよその航路を予測、交錯点を割り出せ! そこへ向かうぞ!」

「バ、バングル隊長!」

 ただし、とバングルが前置いてにじり寄った若い騎士を手で制す。

「あと三十分しても追いつけぬようであれば我々は引き返す、それでいいな」


――――


「右舷側に友軍の並走を確認。どうやら、先ほどの合図に気づいてくれたようですね」

 若い騎士が遠眼鏡を覗きこみながら呟く。

「だとしても手柄まではやれぬが。合戦の最中にこんな場所をうろついている商船はいまい、ジヴー側になんらかの関わりがあるはず。拿捕すればきっと色々出てくるぞ」

 貴族然とした長髪の優男は眠そうな顔でワインを傾けていた。その両隣には護衛と思しき年輩の騎士が二名控えている。

「やれやれ、徹夜の任務などどうにも、貴族たる私向きではないな、次からは代理を用意するとしようか」

 ――そもそも徹夜の任務に向いている者など。

 若い騎士は名前も顔もわからない誰かに同情しつつ自分以外の誰かであることを祈る。と、そんな自分をアジルが見つめていることに気づき、急ぎ話題を逸らす。

「そ、そういう割に、アジル様は結構楽しんでいらっしゃるようにも見えますが、私の気のせいでしょうか」

「船に乗っていると、不思議と気分が高揚してしまうのだよ。一度でもこれに乗ってしまうと何日もかけて砂漠を横断してきたことが馬鹿馬鹿しく思えてしまう」

「はは、それは確かに、いえてますね」


 開戦から大分時間も経過し、セーニア兵たちの疲労はピークに達している頃だ。そんな状態で熱気を吸い込み、喉の渇きに耐えながらの行軍は辛いものがある。そこへいくと砂船での移動は魔石のコストにさえ目を瞑れば天と地ほどの違いがあった。視野はいつもよりずっと高く広く、巨大な乗り物が船員への命令一つで思い通りに動くともなればちょっとした指揮官気分を味わえる。

 元々数が少なく、今までに軍全体で徴集した数は大小合わせて30に満たなかったが、上官たちにはちゃんと行き渡っているようだ。小隊長の身分で砂船に乗れたのは存外の幸運と呼んで差し支えなかった。

「それで、敵船との距離は?」

 アジルが操舵士に目を向け、操舵士が爪先立ちして透過窓に目を細める。砂漠に住まう者の視力は総じて高い。アジルでは白い光にしか映らぬ敵船も船員たちは輪郭で捉えられるのだ。

「少しずつですが、確実に縮まっていますね。この辺りは平野ですし小細工もできませんので純粋な速さが物をいいます。おそらく20分ほどで射程圏内に捉えられるかと」

「よろしい、船は大破させても構わん。多少は死人も出ようが、事情を聴ける人間が何人か残っていれば問題ない。ともかく逃がさないことが肝要だ――ん?」


 ドアがかなり荒っぽくノックされていることに気づき、一同そちらに注目する。外気の温度が高いため、アジルはドアを頻繁に開けることを許していなかった。

「報告か、そこで言え」

「はっ、意味がよくわからなかったのですが、見張りからの報告によると不審船が有刺鉄線を突き破り、閉鎖領域に踏み込んだとのこと。操舵士に伝えて欲しいと言われたのですが」

「なっ! ……自殺行為だ、とても正気の沙汰じゃない」

 素っ頓狂な声を上げた操舵士に、アジルがワインの入ったグラスを護衛騎士に持たせ、口を開く。

「何だ、私にもわかるように説明しろ」

「……先ほども説明しましたようにここら一帯は元々大きな町があった場所です。有刺鉄線で覆われた先はジヴーの賢老院(ルーツ)が指定した危険区域に他なりません。そこに侵入するなど砂船乗りにとって常識外れの行動ですよ。堆積した砂の中には大量の建築物や砂船の部品など、諸々の瓦礫が埋まっているはず。そんなところを航行すれば船底や船の横腹に穴が空き、確実に座礁してしまいます」


 砂船の座礁は海と違って沈没による命の危険は少ない。が、船体に穴があけば外圧によって砂が一挙に入り込み、その重みで直ぐに航行が困難になってしまう。近くに町があれば助かる確率も高いだろうが、そうでなければ相当に危険だ。食料や水の心配は言わずもがな。ことに、砂海に棲む魔物は食糧の豊富な本物の海と違い、雨季以外は常に飢えている。その分凶暴な魔物が占める割合も大きい。

「だが、敵船はあんなところまで進んでいるぞ。もう一度確認だが、本当にここは禁止区域なのだろうな」

「あれ……。いえ、本当です! そのはずです……が」

「もう少しで閉鎖領域に入ります、……このままいくんですか?」

 魔石の制御棒を握る小柄な船員が不安げに訊ねた。中型船で船底が幾分高いとはいえ、あそこまで躊躇なく突っ込んでいるのを見ると本当に瓦礫が埋まっているのか、確かに疑いたくもなる。だが、座礁のリスクを冒してまで敵船を追う意味が果たしてあるのかも疑わしい。


 額に手を当てる操舵士を尻目に、アジルの隣に座っていた護衛騎士が意見を述べる。

「こうは考えられないでしょうか。実は既にそういった瓦礫などは取り除かれているが、ここを根城にしているやつらが自分たちの身の安全を図るため、危険地帯だという噂を流し続けている」

「つまりは噂を利用して敵の追撃を避けるための安全地帯を設けているということか」

 操舵士は後ろからのやり取りに思いを馳せる。確かにその可能性も否定できない。だが、座礁は船乗りがもっとも嫌うことである。ましてや、たかだが一隻の不審船を拿捕するために船を座礁させてしまうなど考えたくもない。

「それは……いえ、そういうことなら考えられなくもないですが」

 煮え切らぬ様子の操舵士に、護衛の騎士たちがはっぱをかける。

「そうだろうそうだろう、ならば決まりだ」

「我々を引っ掛けようなどとは片腹痛いわ、奴らに目に物見せてやれ!」

 操舵士は躊躇いがちに他の乗組員と顔を見合わせた。思った通り、あまり気の進まぬ顔が並んでいた。

 今現在、砂船を操っている船員たちは商船に乗っていた乗組員や捕虜にされたジヴーの兵の中から駆り出された者だ。元々の仲間でない以上、下手に逆らえば切り捨てることも辞さないだろう。砂船乗りとしては、未知の領域に足を踏み入れるならば相応の準備をして臨むのが常道。しかしながら、弱い立場であまり強く命令に抗うことも躊躇われた。


 苦渋の判断。操舵士は大義名分の言葉を引き出すことに決める。

「……それは、命令でございますか」

 騎士たちは艦長のアジルと視線を交わし合う。アジルは足を組み直して黙考し、十秒ほどして首を縦に振る。ジヴーとの勝敗は既に決したようなものだ。もし万が一のことがあるとするなら第三勢力の介入だろう。仮に今追っている不審船がセーニアの敵対国の所属であれば、この戦いを完勝で終えるためにも無視するわけにはいかない。不確定要素の芽は摘み取っておくに限る。

 加えて、後方支援業務で手柄を立てる機会はそんなにない。ひとつでも多く手柄を立てておけば回りの者たちとの出世競争でも優位に立てる。見逃す理由はなかった。

「……わかりました。――我々も境界線を越えるぞ! 皆、気を引き締めてくれ!」

 操舵士の呼び掛けに船員たちが何とか絞り出した空元気に、それでもセーニアの騎士たちは満足そうにうなずいた。

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