第244章 傷だらけのオフィス、溢れる罪悪感
南条隼人が狼藉を働き、警備員や社員たちによってようやく連れ出された、そのすぐ後のことだった。
何も知らぬまま、夫である早瀬碧の車の助手席に揺られ、早瀬ホールディングス本社のエントランスに足を踏み入れた私は、その光景に言葉を失った。
いつもなら完璧に磨き上げられ、美しい輝きを放っている大理石のロビー。
しかし今のそこには、無惨に蹴り倒された大きなパーテーションが転がり、引き裂かれた重要な書類が床一面に雪のように散らばっていた。
受付の女性たちはまだ恐怖に肩を震わせており、オフィス全体に異様な、そして重苦しい空気が漂っている。
「あの……これはなんですの? 一体誰が、こんな酷いことをしたのよ……」
あまりの惨状に、私は指先を震わせながら口元を押さえた。
しかし、割れたガラスや散乱したオフィスのデスクを見つめているうちに、私の脳裏に、ある一人の男の歪んだ笑顔が鮮明に浮かび上がってきた。
西園寺家から絶縁され、すべてを失って狂い果てた男。
今朝の私の婚約披露パーティーに乱入し、早瀬ホールディングスへの攻撃を叫んでいた、あの男――。
「私は……だいたい見当がつきましたわ。こんな恐ろしいことをしたのは、間違いなく南条隼人です……」
確信に満ちた私の言葉に、周囲の社員たちが小さく息をのむ。
隣に立つ碧さんは、鋭い硝子のような瞳で荒れ果てたロビーを見つめ、静かに、だけど圧倒的な怒りをその身に宿しながら拳を固く握りしめていた。
その横顔を見た瞬間、私の胸に、鋭い錐で突き刺されたような激しい痛みが走った。
碧さんは何も悪くない。ただ、私を心から愛し、妻として迎え入れてくれただけなのに。
私の過去の因縁のせいで、碧さんの大切な会社が、守るべき社員たちの仕事場が、こんなにも無惨に汚されてしまったのだ。
「ねぇ、碧さん……。会社が、めちゃくちゃになってる……」
私は碧さんの上着の袖を、すがるように小さな手でギュッと掴んだ。
こらえきれずに目から大粒の涙がポロポロと溢れ出し、大理石の床にシミを作っていく。
「私のせいです……っ。私が、あの男を完全に拒絶しきれなかったから……私のせいでこんなことになってしまって、本当に、本当にすみません……!」
頭を深く垂れ、涙ながらに謝罪する私。
早瀬ホールディングスの心臓部で、激しい怒りと、切ない罪悪感が静かに交錯していた――。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




