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2.前世は碧ちゃん、今世は竜騎士になる〜婚約破棄を添えて〜(2)



"将来竜騎士さんのお嫁さんになる!"

ではなく、

『絶対に竜騎士になりたい!』

の方向にいったのは両親兄弟共々予想外だったらしい。

だがともかく、幼い頃からカミーユとしてのわたしの将来の夢は竜騎士だった。


わたしは大変幸いなことに、竜騎士になるために必要な最低条件を生まれ持っていた。

つまり魔法騎士として戦うための強い魔法力の素質に、竜に乗ったまま戦える運動神経だ。


その上、幼い頃は領地で動物全般と触れ合いながら育った。

貴族令嬢としては必要以上に乗馬にものめり込み、気性が荒いと言われる馬でも不思議とわたしには懐くことが多かった。

その馬の気性に苦労させられていたらしい兄弟たちは首を捻っていたが、わたしとしてはあまり違和感はなかった。

前世の実家も犬や猫等の動物と共にある家だったこともあり、動物はずっと好きだったし前世での夢は獣医師だった。


またそれに加えてピエリエール家は伯爵家としてはかなり自由な気風だったことも幸いした。


伯爵家の可愛い末娘が竜騎士、つまりは魔物と戦う戦闘職に就きたいと言い出しても止めはしなかった。

そもそもわたしは兄弟姉妹合わせて五人いる内の少し歳が離れた末っ子で、蝶よ花よと溺愛されて育った。


結果的にわたし本人が竜よ馬よになってしまったのは計算外だったわけだが、とにかく『本人がやりたいことはやらせてあげよう』ということで、わたしが意欲的に取り組みたいことについて止められたことは一度もなかった。



そしてついに、幼き日のわたしが竜騎士になりたいと言い出した時にも、父であるエドモン・ピエリエール伯爵はわたしをバカにしたりはしなかった。


ただ、『おお、そうか。竜騎士になりたいのであれば、全てを頑張らねばならないよ』とだけ諭した。



"竜騎士になる"とはつまり、竜という国保有の頭数が限られる貴重な資源と契約が出来るチャンスをモノにしなければならないということだ。

当然出来得る努力をすることは最低ラインで、竜に契約を承諾してもらえる幸運も必要だ。


さらに"カミーユ"は女性である。


ヴァンテル王国自体の女性の社会進出は、前世のニホンと比べると非常に進んでいる。実際、女性の騎士も多くいる。

しかし、魔物と戦う特殊部隊となるとその特異性からその数はほぼゼロに等しくかつ出自は大抵平民で、さらに女性の竜騎士となるとこれまでに例がなかった。


理由は単純で、非常に過酷な職業だからである。


竜騎士が所属する特殊部隊に入る女性は稀にいるが、志半ばで辞めていくことがほとんどだ。

国や城を守る近衛騎士であればともかく、魔物相手ではシフト交代もクソもない。

魔物が出るのは常に突然で、緊急の呼び出しも多いし野宿に近いキャンプや数日から数週間に渡る遠征もある。女性ならではのライフイベントもこなすとなると、長く勤めることは非常に厳しい環境だ。


危険と隣り合わせの職業でもあり、とにかくお給料は良いため様々な事情により平民から希望してくる女性がいるのにはいるが、なかなか長くは続かない。

実際、特殊部隊に所属する女性の人数は常にゼロからイチの範囲内で推移していた。


そのような状況の中、ただでさえ限られたチャンスとなる"竜との契約"を行える候補者としての選抜を勝ち抜くには、男性の候補者よりさらに飛び抜けて優秀である必要があった。


当然ながらいくら女性としては運動神経がいいとはいえ、百人の男性と混ざればせいぜい上位一桁に入れるかどうかというところだ。

となると、もう一つの竜騎士としての素質の大きな要素である魔法力では抜群の強さを見せつけねばならないし、それ以外にも基礎体力の向上やお勉強の方も並行して頑張らねばならない。



…というようなことを、父はコンコンと説いた。

まだ七歳児であったわたしには全部を理解することは難しかったが、『ま、とにかく全部頑張ればいいのよね』とざっくり理解して次の日から猛烈に励み始めた。


それまでは大分乗馬や魔法の実技等、楽しい授業のみに熱を上げていたが、それ以外の筆記や地味なトレーニング等にも同じように頑張るようになった。


これまた大変幸運なことに、カミーユであるわたしは"努力が得意"という素晴らしい性質も手に入れており、目標を定めて自分を磨いていくことは苦にならなかった。


実際、元々幼少より得意だった乗馬は当然のこと、魔法に関しても非常に優秀な成績を収めた。特に魔物との戦闘に必要な攻撃系の魔法には強い適性を見せ、努力は面白いように実力となった。



また、兄弟姉妹が進んだ人生の進路も、竜騎士になりたいわたしの味方となった。


そもそもわたしが初等部に上がった時点で長兄は既に文官として城に仕え始め、長女は侯爵家への輿入れが整って来年結婚という状態だった。


つまりピエリエール家は、子育てがひと段落した状態だったわけである。


既に家を盛り立てていくための算段がついた両親は、『義務は果たした』とのことで、それ以降子どもたちが突飛なことを言い出しても多少のことでは動揺しなくなった。


さらに次男のジュリアノは国の特殊部隊に入り、わたしに先んじて魔物相手に戦う魔法騎士となった。

これはピエリエール家としても初めてのことだったため、両親は多少戸惑ったようだった。

しかしジュリアノは幼少期よりかなりやんちゃで手を焼いていたため、国に貢献出来る方向での就職はむしろ良い予想外となった。


続く三男・ルシアンは近衛騎士となり、こちらはピエリエール家王道の就職先であるため両親はホッと一息ついた。

何しろ末娘であるわたしが『竜騎士になりたい!』である。


突飛な進路が確定しているわたしの前に、ピエリエール家としては堅実な進路を選んだルシアンは両親孝行と言えた。




お読みいただき、ありがとうございます。

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