一年に一度。立ち止まる日。
楽しい時間はあっという間。
気づけばもう時刻は23時50分。
帰りの時間までもう僅かしかない。
「ねえ」
僕は君に問う。
分かりきった問いを。
「次はいつ来れるの?」
君は当たり前の答えを言った。
僕はそれを受け入れるしかなかった。
「分かっているよ。僕は幸せだ。こうして会えるのだから」
君に言った言葉は世界で僕にしか聞こえない。
きっと、君にさえ聞こえてないのだろうと分かっていた。
だけど、君がそんなに寂しそうな顔をしているから。
もしかして伝わっているんじゃないかってどうしても期待してしまう。
『いい加減。前に進んでほしい』
声の出ない君の言葉。
こんなにも正確に読み取れるなんて。
僕はなんて不幸なんだろう。
君の背に滑稽な羽が生える。
君の頭に馬鹿馬鹿しい光輪が浮かぶ。
冗談にしか思えない事実を僕は改めて受け止める。
君は天使だ。
だって、もう死んでしまったのだから。
君は心配性だ。
だって、毎年のようにこうして僕に会いにきてくれるのだから。
時刻が変わった。
日付が変わった。
また一年。
僕は独りぼっちだ。
「分かってるよ」
聞こえなくなってから僕は呟いた。
「皆、僕を支えてくれるって」
本当はとっくに前に進んでいる。
君の死だって受け入れている。
「だけど、この日くらいは止まっていたい」
今年もまた君に聞かせる気もない言葉を呟く。
随分と遅刻して。
わざと遅刻して。
薄暗い夜の遥か頭上。
君の国に続く穴に見える月を僕は独り見上げてた。




