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弁財天とクロガネ遣い  作者: 坂本光陽


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C:弁財天の沈思黙考Ⅱ


 黒之原が意識不明になったため、彼を〈クロガネ遣い〉へとつながる糸口にしようとするカノンの計画は頓挫した。しかし、行き詰ったわけではない。むしろ、逆である。新たにあらわれた〈謎の女〉という、大きな手がかりを得たのだから。


 下僕の狗藤が珍しく、的確な表現をしていた。〈謎の女〉は〈クロガネ遣い〉の黒幕。まさに、その通りである。これまで〈クロガネ遣い〉の居場所をつかめなかった理由もわかった。〈謎の女〉の力によって、巧妙にカムフラージュされていたのだろう。


 狗藤が言ったように、〈謎の女〉は人間ではない。神に匹敵する能力をもっているのだ。というよりも〈謎の女〉は神だったと言った方が早い。〈クロガネ遣い〉一人では不可能な出来事も、神がからんでいたのなら、ことごとく納得できる。


 例えば、飲み会で17万5000円が消えた事件だ。狗藤の先輩によると、代金を入れていた箱に、誰もふれなかったという。指一本ふれずに中身を盗むなど、人間には絶対に不可能である。だが、神が手を貸したのなら、それぐらいは簡単にできてしまう。


〈神のアイテム〉を神から託されていれば、子供の手をひねるようなものだ。あの狗藤でさえ、簡単にできてしまう。カノンの与えた万能アイテム〈弁天鍵〉をもっていれば、誰にでもできてしまうのだ。


 そう考えていけば、これまで解けなかったパズルが、速やかに組みあがっていく。17万5000円を盗んだ犯人は、〈クロガネ遣い〉なのだ。彼以外にはありえない。

 日本経済をゆるがす能力をもっているのに、なぜ、そんなはしたカネを盗んだりしたのか? まるっきり能力の無駄遣いである。その理由は想像もつかない。


 だが、些細ささいなことはどうでもいい。問題のポイントは、〈クロガネ遣い〉が〈弁天鍵〉を使ったことだ。さらに、〈クロガネ遣い〉に〈弁天鍵〉を与え、彼をサポートしている〈謎の女〉。彼女は明らかに、人間界に混乱を生み出そうとしている。


 神々の世界を抜けた者を〈はぐれ〉というが、〈謎の女〉は〈はぐれ弁天〉の一人にちがいない。


〈謎の女〉は一体、誰なのか? 実はカノンは、すでに目星をつけている。有力な手がかりになったのは、居酒屋の店員の証言だった。


「年上の彼女って感じ」

「めちゃくちゃ色っぽくて、たぶん、あれは人妻だ」

「一晩お相手をお願いしたいぐらい」


 これらを聞いた時、カノンの脳裏に、ある弁財天の顔が思い浮かんだ。彼女はカノンの先輩にあたり、小さい頃には可愛がってもらった記憶がある。子供の頃は憧れの存在で、姉のように慕っていたものだ。


 もし、〈謎の女〉が彼女であるなら、カノンにとっては強敵となる。

「ベティさん、やっぱり、あんたなんか?」 

 彼女の名を呟いた時、カノンの胸はチクリと痛んだ。



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