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生命の郷  作者: 小川四郎
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第6話 策略

燃え盛る施設を後に、鷲尾は山林の闇に身を潜めた。

外に出た蜂型・蜘蛛型の生物は、まだ森の中に潜んでいる。

低く響く羽音と影の揺れが、彼の背後で迫る。

息を殺し、茂みの中を必死に進む。

枝や葉に足を取られながらも、森を彷徨い続ける。

火事の煙と炎の匂いが風に混ざり、緊張感は途切れない。

遠くの森の奥で、蜂型が羽音を高く響かせ、蜘蛛型が影を潜める。

鷲尾はひたすら距離を稼ぎ、暗い山林の中で安全な場所を探す。

しかし、彼の心には確かな覚悟があった。

「コイツらを止めなければ、この恐怖は終わらない。」



三雲は「生命の郷」から遠く離れ、研究データとともに国外へ向かっていた。

密かに保管しておいた、手元の資料には蜂型・蜘蛛型の培養記録、人体実験の成果、潜在的な兵器化データが全て残されている。

覚悟を決めた表情のまま、飛行機の窓から夜景を見下ろす。

「計画は、ここからだ……」

彼の野望は、国境を越えて新たな段階に進もうとしていた。



香坂は、JIEC本部の静かなオフィスに立っていた。

直属である上司の石田ではなく、さらに上級の前本に胚を渡すためだ。


「これが、生物兵器の…胚です。」


香坂の手から、厳重に保管された生物兵器の胚が前本の手に渡る。

前本は内容を確認すると、淡々と頷きながら言った。

「よくやった、0009naonNo5 君の働きは評価に値する。昇進も約束しよう。」

彼女は冷静に微笑む。

任務を遂行しつつ、自身の地位も確実に手に入れたが、彼女は前本を信じる気にはなれなかった。

極力、表向きは忠実な接客者を演じた。


山林では、呼吸と葉擦れの音だけが響く。

屋外に残った生物の行方は不明で、闇に潜む脅威はまだ消えていない。

鷲尾の戦いはまだ終わっていなかった。

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