第7話 崩壊
生命の郷は恐怖と混乱に包まれていた。
施設から出た、蜂型・蜘蛛型の生物兵器は農村や宿泊施設の信者たちを次々と襲い、叫び声が森の闇に吸い込まれる。
信者たちは逃げ惑う間もなく、計算された動きの群れに命を奪われた。
辺りは、もはや死の空間となっていた。
その混乱の中、三雲は冷静に行動していた。
「……時間はない」
汗ばむ手で拳銃を握り直す。
警報が鳴り響く中、施設長室の窓から外の光景を見た前田が叫んだ。
「一体、何が起きているんだ!」
「分かりません! とりあえず、避難を!」側にいた、冬木は答えた。
それを聞いた、周りにいる慌てていた施設の幹部たちも冬木の後につづく。
そこへ、冬木が連れた施設の幹部たちが脱出を試みる通路を三雲が立ち塞がった。
「なんだ! 貴様は?」
施設の幹部は三雲に吠えた。
「その女に聞いてみろ!」
三雲は弾丸が尽きるまで引き金を引き続けた。
血の残る通路を抜け、森の奥へ消えるその背中は憔悴そのものだった。
信者の命を奪った生物兵器の混乱の中で、三雲は完全に自らの目的だけを追った。
鷲尾は施設内で状況を把握し、決断を下した。
「ここで止めるしかない……!」
爆破用の装置は持っていない。
しかし、施設には大量の可燃性設備がある⋯⋯油槽、ガス管、乾燥施設の木材など。
鷲尾は素早く配置を確認し、装置や配線を操作して火を回す計画を立てた。
蜂型・蜘蛛型の群れが周囲をうごめく中、鷲尾は息を殺し、火を点火する。
可燃物に炎が回り、施設内は瞬く間に燃え上がった。
煙と火炎に包まれながら、鷲尾は辛うじて外へ脱出する。
施設は崩れ、燃え盛る火の中で生物も閉じ込められ、全てが灰と煙となったかに見えた。
同じ頃、香坂は培養室から胚を確保し、事前に用意した独自の脱出ルートで森の奥へ進む。
「これで、胚は確保……」
冷静に呟き、闇の中に消える。
屋外に出た蜂型・蜘蛛型の生物兵器は、炎や崩壊の中で姿を消していた。
森の闇に潜む未知の脅威は、依然として生き延びている。
鷲尾は荒れた呼吸を整えながら、燃え上がる施設を見つめる。
信者たちは全滅し、施設の教団幹部も消えた。
しかし、生物の存在、三雲の計画、香坂の思惑。
全てが、これからの戦いの序章であることを、鷲尾はまだ理解していなかった。




