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「ジュリエル様も来てくださるのですか!」
キャロラインに伝えると、彼女は大喜びした。
「あの方とも、ぜひお話をしてみたかったんです」
「頭良い子同士、気が合いそうだね」
マッキーも楽しそうだ。その様子を眺めていると、何だかお腹が痛くなってくる気がした。
「どうかした、ジャネット?」
「あ……いいえ、何でもないわ」
「そう? いつもより、顔色が悪い気がするよ。気分が悪いなら医務室に連れて行くけど」
「ありがとう……でも、平気よ」
医務室に行っても、ジャネットの悩みは解決しまい。
(言えない……やっぱり言えないわ。勉強会よりお茶会の方に行くだなんて。先に約束したのはこっちなのに)
苦悩するジャネットをよそに、キャロラインとマッキーは会話を楽しんでいる。
彼女たちは優しい。ジャネットが勉強会に行かないと言っても、怒ることはないだろう。だが、せっかく歩み寄ろうとしてくれたキャロラインの気持ちを踏みにじることになるのではないか? 今彼女の誘いを断れば、もう二度と心を開いてくれないのでは?
(……勉強会の方に、行くわ)
そう考えた瞬間、ジャネットの頭の中にモードの顔が浮かぶのだった。
「ジャネット、好きなお菓子を教えてくださる? 取り寄せるから」
ジャネットに向かってモードがそう言った。
二人はまた、図書館に来たのだ。モードは軽やかな足取りで本の棚の間を進んでいく。ジャネットに向けられた笑顔は少し子供っぽく、昔に戻ったかのようだった。
「アップルパイが好きだったわね。それに、アイスクリームも」
「よく覚えているわね、モード」
たしかに、昔はアイスクリームもパイも大好物だった。
「忘れないわ。一緒に宮殿の厨房に忍び込んで、パイをつまみ食いしたんですもの」
モードはしみじみと言った。
「あの時、コックにしこたま叱られたわね、ジャネット」
「ええ、罰として3時のおやつがなしになって」
「なにしろ、2人でパイをまるごと1つ平らげてしまったものね」
ジャネットとモードは顔を見合わせて、忍び笑いをした。その瞬間、ジャネットのお腹がずきりと痛む。
(お茶会に行けないと言ったら、モードはがっかりするわ……)
結局この時も、ジャネットは何も言えなかった。
悶々としたまま日々があっという間に過ぎ、とうとう休日になってしまった。生徒たちははじめての休日にはしゃいでいる。けれどジャネットは朝から憂鬱だった。