#3突撃!二人のお部屋!
ちょっと遅れたかもしれないです。
隔日更新、もしくは隔週更新になるかもしれません。
オリジナルは久し振りで....。
最後の方はちょうどよい絡みが書けました!.....物理的に。
階段を上り、二階へと上がる。
今までいたところ、つまり実家ではこういう古き良き日本の古風な家ではなかったため、少しテンションが上がる。
それに、これから生活する場である。少々の期待を胸に抱き、割り当てられた部屋へと入った。
「どう?いい雰囲気だよね、安心する感じで」
「そうね。うん、ベッドもふかふかだし、灯りもいい感じ」
部屋にはすでに備え付けられていた家具がいくつか。
ベッドとサイドテーブル、その上にランプ。
勉強用の机に椅子と、その横には小さい冷蔵庫も設置されていた。
触った感じ、ベッドはふかふか、ランプもちょうどよい明るさ。
冷蔵庫も綺麗で、机と椅子も新品同然であった。
「至れり尽くせりですよねー」
「一生徒に与えられる部屋としては、凄いわね」
「ワタシも最初は驚いたなぁ。今は、模様替えしちゃってるけど」
「あ、そうだ、二人の部屋はどういう感じなの?」
聞くと、二人は少し沈黙した後、風の速さで部屋から出ていった。
一瞬呆気に取られたものの、すぐさま部屋を片付けに行ったのだなと理解した。
女の子にはいろいろあるのだ。いろいろ。
私もリップを塗りなおしたり、手鏡を見たりしてまったりと待った。
散々実家で『フェリスは一億年、いや十億年に一度の美少女だ!』と言われ続けたとはいえ、身嗜みは整えるべきである。
仮にも、一応、最低限、淑女であるのだから。ローグランド家の長女として。
「ふぃー。準備できました」
「ワタシも大丈夫。でも、あんまり細かいところは見ないでね?」
数分して二人は私の部屋へと戻ってきた。
出会って少ししか経っていないが、何となく性格は分かってきた気がする。
いあはしっかり者だけどふざける。
レティシアは少しおっちょこちょいで、ちょっと変わり者。
「どっちの部屋から行こうかしらね」
「「私の(いあの)部屋で」」
いあは普通に、レティシアは慌てて指定した。
まあこれからの参考程度に覗くというのが大部分なので気にしない。
........ちょっと野次馬根性、ではないけどそれに近いものがあるのは、ヒミツ。
―――IA's room―――
いあの部屋は私の向かいらしい。
扉には星空をイメージしたらしきデザインのネームプレートが下げられている。
いあがドアを開けると、まず目に飛び込んできたのは無数の人工的な光だった。
LEDディスプレイの淡い光だ。それに、接続されている周辺機器から点滅される光はまるで鼓動のよう。
一応片付けられてはいたようだが、それでも床に視線を向けると木の根のように伸びる配線が、住人の生活圏を奪っていた。
数少ない、床の色が見える場所もダンボールや食品の袋、何かのソフトのパッケージやらで覆われている。
言ってしまえば。
.......何故自分の部屋に向かったのかと。
先程感じた、彼女はふざけるがしっかり者である、というイメージを隅から隅まで破壊された。
「む、いあってばまたこんなに散らかしてるの?」
「仕方ないですよ。配線は物理的に排除できない存在ですし。他はまあ、その、部屋の雰囲気に合わせたんですよ、ははは」
「..........」
「ど、どうですかね、参考になりました?」
「汚いわね」
「.......レティシア」
「なに?」
レティシアを呼んだいあの目は、どこか反省を感じさせる、潤んだ瞳だった。
身長の関係か自然と上目遣いで、彼女は控え目に頼みごとをした。
「また、片付けるの手伝ってくれないですかね」
やはり完全なダメ人間だったらしい。
☆ ☆ ☆
結局、少しのお説教を食らういあを見物し、いあの部屋からは早々に出た。
いあにパソコンの画面を見せてもらった時は綺麗にファイルが片付いていたというのに、何故現実で同じことができないのだろう。
でもまあ、友人が怒られているところを見るのは、どこか可笑しく、あまり経験したことのない気持ちになった。
こういうのを友情というんだろうか。あんまり同年代で関わりのある子がいないものだから、よくわからない。
「あー、レティシア?そろそろアナタの部屋に行きません?」
「いや、ダメだよ!どこかのタイミングでババっと片付けないと、また散らかすんだから!」
「や、その、えっと。.....分かりました。気を付けますから。なので、今は先にアナタの部屋に行きましょう。ねっ?」
面倒くさいが、仕方がない。
そういう感情が駄々洩れの声と態度だったが、一応約束を取り付けたことで納得したのか、レティシアは頷いた。
「いいよ。でも、ワタシの部屋の綺麗さ、見習っておいてよね」
「りょうかいでーす」
「あら、もう終わったの?」
「一々こうして言っても聞かないしね。寮母さんに怒られるっていうのに」
「ふーん。あ、寮母さんいるのね」
思えば、当たり前か。
いくら自由度の高い学園とはいえ、生徒の団体のみで生活させる筈もない。
「そりゃあいるよ。今は確か、フェリスちゃんの歓迎するんだ!って売店区画に行ってるけど」
「歓迎ね。楽しみにしておくわ」
「あっ!その、寮母さんにはヒミツね?サプライズ、らしいし」
「......ふふ、了解。ほら、いあ。逃げないで行くわよ」
「っ!い、いや、逃げようとは、してないです、ヨ?」
「言い訳はいいから、さっさと行くわよー」
「うぅ、はいはい。行きますよーっと」
そろり、と足音を消して立ち去ろうとしていたいあを捕まえ。
半ば引きずる様な形で、レティシアの部屋へと入るのだった。
―――Laetitia's room―――
レティシアの部屋と廊下を隔てる扉には、いあと同じようにネームプレートがかかっていた。
星空をイメージしたようないあのものとは違い、彼女のはおもちゃ箱、をイメージさせるものだった。
簡単に説明をするのなら、アンディくんの人形が動き出すあの物語っぽさ、とでもいうべきか。
そんなプレートが下げられた扉を開けて部屋へと入ると、まず目に飛び込んできたのは無数の人工的な光―――。
......などではもちろんなく。
「ほわぁ.....こほん、えほん。....可愛らしい部屋ね」
「相変わらず、子供っぽい部屋ですね。この、でかいぬいぐるみとかいるんですか?邪魔では?」
「「いるよ!!」」
「あ、そーお...?」
むしろ、いあの部屋とは比べ物にならないくらいに可愛らしい、実に良き内装だった。
天蓋付きのベッドや、大きいぬいぐるみ、机の上にはクレヨンや色鉛筆などのと共に鮮やかな色彩の絵が描かれている。
壁には彼女が子供の頃に書いたのであろう可愛らしい絵や、賞状などが飾られていた。
あのぬいぐるみ.....。
「どーせいあには分からないよ。フェリスは分かるでしょ?」
「う。まあ、そうね。私は別に、特に、ぜーんぜん、だけど。まあ可愛いと思うわ」
「だよねっ!」
「わ」
私は一応、肯定して見せた。
すると、レティシアは何を思ったかふんわりと抱きしめてきた。
よくわからない。誤魔化せていない?.....いや、別にアレは本音ではないのだけれど。
「むぅ」
うん?
ムカつくことに私よりもレティシアの方が背が高い。
なので、背伸びをして隣を見ると、何故かいあがむくれていた。
「.....?」
「.....あ、そっか!いあもハグする?」
......え?
「うぅ!?いや、でもその、うぅーん、え、ええい!」
レティシアの突然の提案に、いあは私と同じように驚いた。
だが、少しの葛藤の後。
「ちょっと、いあ!?なんで私の背中に―――わわっ」
いあは抱き着いてきた。
―――私の背中に!
ただでさえ女の子であり、尚且つ背も低い私は、いくら同じ女の子で軽いと言っても人二人を支えることなど出来るはずもなく。
とどのつまり、その結果。
ドシン!
甚く古い音を出して、そのまま倒れてしまった。
「う.....重―――」
「「......」」
「―――くはないけど、痛いわね」
下にはレティシア、上にはいあ。
なにやらとても柔らかい状況だけれど、ちょっと痛い。
「あはは、ごめんごめん。でも、なんでフェリスの後ろに抱き着いたの?」
「え?」
「別に、ワタシごと横から抱き着けばよかったのに」
「へぇ~いぃやぁ、うぇっと......い、言い方が悪い!レティシアの!」
「ワタシが悪い!?確かに、空いてるのは後ろだったけど.....」
上からの抗議に、下からツッコミが返される。
元はと言えば誰も悪くない。でも二人の言い合いはちょっと面白かった。
「あははっ」
「ふぇ、フェリス?」
「あはははっ、ふふ、いや、だって、なんか可笑しくて」
「む、なぁにがオカシイの。ねぇ、いあ―――」
「ふふっ、え?」
「い、いあまでぇ....」
「ふふ、そ、そんなに笑えないなら.....こうよっ!」
私は一人笑わずにいるレティシアに、優しく笑顔を与えることにした。
.......くらえ、くすぐり攻撃!
「ひゃ、え、わっ―――あははははっ!わはは!ちょっと、ねぇ、あはは!フェリスっ!」
「ほらほら、ここかしら?ここが弱いの?」
「あははははっ!ひぃ、ふひっ、ふひゅひゅ、あははは!」
「ふーん、面白そうです!よし、ボクはフェリスの第三、第四の腕になりましょうっ!」
お腹やうなじ、脇腹をくすぐられて、笑わされるレティシア。
ちょっとかわいそう.....でもないわね。
そして、日頃の行いが悪い(いあに対して)彼女は、いあの報復を受けることとなった。
いあは私の上からさらに、私がレティシアをまさぐる....くすぐる、手を追うようにしてくすぐる。
「うひゃぁ!うふ、あは、ねぇ、ちょっと、あはは、うぅぅ、いあも、あっはっは!やってるでしょ―――ひゃぁっはっは!」
「ふはははは!どうだレティシア!分かりますか!この痛みが!」
「ふひゃぁっは!痛みじゃなくてそれは、ひゃぅ、くすぐったさでは、っ?」
「おやおや、お忘れですか?こっちは二人なんですよ?数の暴力ですよ?」
いあは少し調子に乗ってレティシアをめちゃくちゃにくすぐっている。
うーん、これはちょっと本当にかわいそうね。
.........よし!
裏切ることにする!
「あーっはっはっはっは!あーっはっはっ―――にゃぇっ!?」
「はぁ、はぁ、ひぅ、ふぅ、お、終わった?」
「ふぇ、フェリス、何してるんですか!ボク達は同じ戦場を駆ける同士ではなかったのですか!―――ひゃぁう」
「ふふふふふ、勘違いしないで欲しいわね。私達は同じ戦場に居る―――同じ目的を持つだけの敵なのよ!」
ババン!
そう効果音がついてもおかしくないインパクトだった。
「う、裏切りって....コト?ワタシ、助かった?」
「うひゃ、ぐ、何を勘違いしてますか!ボクの攻撃はまだ終わりませんよぉ!ひゃ」
「ふっふっふ、レティシアは疲労困憊、いあも私が主導権を握っている.....カンペキね!」
上も下も攻略済み!
この私こそが勝者(?)っ!
.........しかし経てして、勝者の傲り、慢心とは次の敗北につながる要因なのである。
つまり―――。
「ぐぅ、くふ、うひぁ、どうすればっ」
「あっはっは、私には勝てない(?)わ!―――ひゃ、え?」
何故、私は今、変な声が出た?
違和感を感じた部分に視線を向けると、手があった。
その手の元を辿れば、そこにはかつての敗者、レティシアがいる。
「な、何を!んっ、レティシア!」
「わ、ワタシだって、まだ戦えるよ!い、いあにもっ!」
「ふぅ、にゃ!ぐっ、お返しですっ!」
「あはは!くぅ、いあっ!今度という今度は―――ひゃあ!」
不覚にも、レティシアにくすぐられてしまった。
これはもう徹底的にするほかないっ!ないっ!(強調)。
「わ、私は負けてないわ(?)。んん、二人とも、覚悟しなさいっ!」
「ボクのこと、にゃぅ、舐めたら後悔しますよ!小回りが利くんですからぁ!」
「ワタシだって、ニンジャだもん!スピードじゃ負けない!ひゃぅぅ」
「あははは、このぉっ!」
「んんー!えい!この!」
「にゃぁ、ふ、らあっ!」
「「「あははははっ!」」」
☆ ☆ ☆
結局。
その後、もみくちゃになりながら互いの体中をくすぐり合い......。
ほぼ同時に、『もう、無理っ!』と心の底から吐き出した言葉で、ひとまず落ち着いたのだった。
もう懲り懲りだけど....。
でも、まあ、こういうのも。
―――楽しかった、わね....。
次回はいよいよ入学式です!
色々演説が中身カラッポになっているかも......。