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彼にとっての日常  作者: 天桜犀 海陽
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この姿でできること

翌日。


直樹は約束した公園に行くと、すでに猫の頭の姿になった祐がいた。

言っていた通り、猫と話して遊んでいるみたいだった。

しかし、普通の人から見ると、何もないところで猫がニャーニャー鳴いて、ゴロゴロしているという不思議な光景が出来上がっており、公園にいる子供たちからちょっと注目を集めていた。

もちろん直樹も公園に来る前に人外の姿になっているから、他人には見えてはいないが。


直樹は祐にそっと近づき、話しかけた。


「祐、何してるの?」

「おっ、直樹!言ってただろ、猫と話して待ってるって。だから猫たちと遊んでた。」

「そうだけど…。誰もいないのに猫がニャーニャー鳴いてて、若干公園にいる人たちから視線を集めてるよ?」

「えっ!?マジで!?」


祐は周りを見渡すと、猫たちに注目が集まっていることに気づく。


「うげっ、マジかー。」

「今度から猫と遊ぶときは、昨日みたいにあんまり人がいないところでやったほうがいいかもね。」

「今度からそうするわー。ありがと、教えてくれて。」

「いやいや、どう見ても目立ってたからいつかは気づくと思うけど、気になったからね。」

「っし、それじゃ、この姿についていろいろ探ってこうぜ。」


膝についた土を払いながら、祐は立ち上がり直樹のほうへと振り向いた。


「この姿について?」

「そう、昨日さ、直樹、めちゃくちゃジャンプして屋根の上走っていっただろ?俺、そんなことできるとか知らなくてさ。だから、この姿でできることって何があるか詳しく一緒に調べてこーぜ。」

「ああ、そういうことか。それなら僕ももしかしたらまだ知らないことがたくさんあるかもしれないから、一緒に調べようか。」

「おう、じゃあまず、俺が知らなかった身体能力についてなんだが、あの屋根の上に上るのって俺でもできるのかな?」

「できるんじゃない?僕より君のほうがもっと高く飛べそうな気がするけど。」

「なんでそう思うんだ?」

「だって、猫じゃん、君。身体能力僕より高そう。」

「あ、そっか、そりゃ額縁より猫のほうが身体能力高そうだよな。よし、じゃ跳んでみるか!」


そう宣言した祐は、足に力を入れ思いっきり飛び上がった。

近くにある一軒家の屋根を優に超える高さで。


「うおぉおおおおお!すっげえ!なんだこれ!?楽しいな!!」


そういいながら、祐は何度もその場でジャンプする。

すごく楽しんでいる祐に、直樹は声をかけて止めさせた。


「楽しそうで何よりだけど、そろそろやめたほうがいいよ。」

「え?なんでだよー!もうちょっとやったっていいだろ!」

「いや、砂埃がすごくて周りの人がびっくりしてるから。」


祐は着地すると、砂埃がすごくたっていることに気づいた。

そして、公園で遊んでた子供たちがざわつくほどに目立っていることも。


「や、やめます。」

「それがいいと思うよ。それと、やっぱり僕より身体能力は高いってことがわかったね。」

「え?どうしてそう思うんだ?」

「いや、その場で僕も跳んでみたことあるけど、あそこまで高くはなかったから。」

「そうなのか!やっぱり姿によって能力差があるんだな。」

「そうみたい。これで身体能力には差があるってことが分かったけど、次は何を調べる?」

「うーん、あ、直樹はさ、額縁の頭だから写真とか撮れるんだろ?俺は猫と話せるくらいしかわからなくて。」

「僕もまだ自分のできることはすべて把握しきれてないと思うけど、僕ができることは、写真を撮ることと、ものを瓶で保存できることかな。」

「瓶で保存?どういうこと?」

「見せたほうが早いか、見てて。」


直樹はしゃがんで、公園の砂を手に取った。

そして、その砂を両手で包みこんだ。

手を開いた時には、公園の砂は瓶に包まれて手のひらにのっていた。


「すげー!そんなこともできるのか。」

「うん。多分僕の収集癖が反映されて、“集める”行為ができるんだと思う。」

「なるほど、自分の好きなことが能力に反映されるのか…。じゃあ、俺は猫だから、もしかしてかぎ爪で引っ搔いたりできるとか?」

「おお、猫っぽいね、やってみたら?」

「やってみるったって、どうやって?やったことねーからわかんねえよ。」

「うーん、手に力を入れてみるとか?」

「あー、確かに爪たてられるときは、手に力は言ってるよな。やってみる。」


そう言って、祐は手に力を入れてみた。

猫の手から鋭い爪が出てきた。


「おお!爪だ!」

「そうだね、爪だね。」

「リアクション薄いなーお前。」

「だって、爪は爪でしょ?何ができるかまだ分かんないし。」

「それもそうか。試しに振ってみるか。」


祐は手を振りかぶってみた。

すると、爪の先から斬撃のようなものが5本飛んでいき、飛んでいる途中で消えた。


「…。」

「…。」

「飛んだね、斬撃みたいなのが。」

「…な、なんじゃこりゃあ!?あっぶな!!」

「確かに、あれがもし人にもあたるようだったら危なかったね。人がいなくてよかった。」

「いやいやいや、なんでそんな冷静なんだよ!斬撃だぞ!ポ〇モンみたいなことできるのかよ!」

「ポ〇モンって…。まあ、確かにそれは僕も思ったけど。」

「猫でできることといえばと思ってたけど、ここまでできるとは思ってなかったわ!」

「これだと、僕が予想するに、俊敏に動くこと、細い隙間でも通れること、匂いを敏感に感じ取れること、体が柔らかいこともちゃんとできそうだなぁ…。」

「ああ、猫の特徴だよな。うわぁ、すごいな、これ。」

「すごいどころか、危ないね、それ。」

「使いどころには気を付けます。」

「ぜひそうしてください。」


祐と直樹は冗談めかしながらも、ちゃんと気を付けるように内心ではしっかり決めた。


「額縁だと、直樹がさっき言ってくれたこと以外にできそうなことってないよな。」

「うん。だから、僕の能力はあんまり祐みたいにすごくはないかな。」

「まあ、瓶詰め作れるのはすごいと思うけどな。」

「ありがと。そう言ってくれると、僕もまだ人外なんだなって思えるよ。」

「いやいや、身体能力がすごいことになってる時点で十分人外だと思うぜ。」

「それもそうか。…結構いろいろやってたら時間たっちゃったね。今日はもう解散しよっか。」

「そうだな、じゃあまた明日な!」

「うん。また明日!」




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