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彼にとっての日常  作者: 天桜犀 海陽
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何気ない日常

日本のとある町のとある一軒家にある2階の窓から一人の少年が外を眺めていた。

彼は何かをすることもなく、只々外を眺め続けていた。


彼の名前は佐藤 直樹。どこにでもいる男子高校生だ。

彼は黒髪黒目、普通の顔という、ザ・平凡という容姿だった。


彼がひたすら外を眺めているのは、彼が街並みや日常風景を写真に収めるのが大好きで、何気ないことでも大切にしている、集めているちょっと変わった収集癖を持っている人間であるからだった。


彼は窓から離れ、近くの机の上に置いてある誕生日プレゼントで買ってもらったカメラを手に取り、窓からの風景を写真に収めた。


「今日も素敵な“普通”の一日だ。なんて素敵な景色なんだろう…。」


そう言ってまた、彼は外を眺め始める。


カーテンが風に揺れる。

そのカーテンが彼の姿を隠し、ひらりと元の位置に戻った時、彼はすでに人間の姿ではなく、頭は額縁、体はスーツに白手袋をつけたものになっていた。

しかし、それも一瞬で、またカーテンが翻った後には元の姿に戻っていた。


「直樹、ご飯できたわよー!降りてきなさい!」

「はーい。」


彼は、何事もなかったかのように階段を降り夕食を食べに向かった。



佐藤 直樹の朝は早い。

朝6時に起き、顔を洗い朝食を食べ、制服を着て学校に出かける。

学校が始まるのは8時半だが、彼は早起きして街の中を見るのが好きなのだ。

そして、好きな“普通の日常“の風景を写真に収めるのが日課となっている。


また、その辺に落ちている石などでも、彼が素敵だと思うものは、拾い、持ち帰り大切に保管される。

これも日常の一部だと言って。


学校についてからは、普通の高校生として過ごす。

高校1年生の彼は、勉強もそこそこで、運動も中の上程度だ。

身長も真ん中で、突出したものは特にない。

友人関係も良く、いじめられているわけでもない。

ただの普通の高校生だ。


学校の授業が終われば、部活に所属していない彼は、そのまま帰宅する。

街中をまた見て回るために、部活には入っていないのだ。


彼にとってのこの街並みは、自分にとっての宝物なのだ。


彼の体が波打つ。

まるでカーテンが風に翻っているときのように。

波が収まるころには、彼は頭は額縁、体はスーツで手は白手袋をしている姿となった。


これが彼のもう一つの日常。

気が付いたらこの姿になれるようになった彼は、この姿のことを活用するようになった。


人外頭の姿になると、普通の人間の姿でいた時の世界と次元が変わった、世界がずれたように、周りの人から見えなくなる。

そして、周りの人たちには触れなくなるのだ。

まるで自分が幽霊みたいになったように。


そのことを活用して、彼はこの日常風景を撮影する。

もちろん姿が変わったときに、持ち物もすべて持ってない状態になるため、撮るのはカメラではなく、自分の手でだ。

両手の人差し指と親指で四角を作り、収めたいものを収め、ピントが合ったと思うと、カシャと音がして、手の中にその風景が納められるのだ。

その手の形を解除してしまうと、その風景も消えてしまうが、人間の姿の時になぜか持っているカメラの画像に追加されているという不思議な現象が起こる。

彼は、そのことを深く追求せず、不思議だけど便利な能力だと思い、気にしないことにしている。


人外頭の姿では、生き物には触れられないが、無機物には触れることができる。

彼が気に入り手にしたものは、手で包み込み、その手を開くと拾ったものが瓶に詰められている状態になる。

これも、手の形を解除すると便はその場から消え去るが、彼の家にある収集コレクションの棚に瓶詰が増えているのだ。


また、不思議な能力はそれだけではない。

人外頭の姿になると、運動能力が物凄く向上されるのだ。

少しジャンプするだけで、まるでテレビに出てくるヒーローのように簡単に屋根の上に上ることができる。

移動速度も、少し足に力を入れて走るだけでアニメに出てくる忍者のように速く走れるのだ。


それらを駆使して彼は、自分の町の端から端まで見て回り、写真を収めたり、ものをひろったりする。


そうやって街を一周した後、彼は元の姿にもどり、ようやく家に帰りつく。


そして、窓の外を母に呼ばれるまで眺め、夕飯を食べるのが彼の日常だ。


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