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8・晩餐会の裏側とその後 ②

「それで結局、王宮のお茶会でお嬢様は見つからなかったのに、欠席者はいないということだったのね?」


 漸くディナーを終えた──というか、食べ尽くしたと言うべきか──三人は、クラリスの部屋に場所を移してお茶を飲みながら、クラリスとベルビアンナが王宮のお茶会での出来事を、ライラに詳しく話しているところだ。


「そうなの。欠席者については第三王子殿下と、帰ってからすぐにお父様にも確認したから間違いないわ」

「という事はぁ、やっぱりぃ、あれしかないんじゃないかし」「ヴェールゥーー」


 クラリスの琥珀色の瞳が三角に釣り上がる。


「ち、ちがう、違うぅ、そうじゃなくって! 私も思いなおしたのぉ!」

「何を?」

「お嬢様は〜、やっぱりこの国じゃなくてぇ、他の国の王侯貴族に生まれ変わってしまった、ってことよぉ。クラリスが言ったんじゃなぁ〜い」


 んもぉ、クラリスはす〜ぐ怒るんだからぁ。

ベルビアンナは、プクッと頬を膨らませる。


「私たち三人だけがこのルシファード王国に生まれ変わって、お嬢様一人だけが他の国に? そんなのあり得ないわ。私たちは同じ場所で同じ時に、みんな一緒に飲み込まれたのよ? 一人だけ違う国に生まれ変わるなんて……」

「何よぉ〜、クラリスが言い出しっぺのくせにぃ! 公爵、侯爵、伯爵家、なおかつ王家にもいないんだからぁ、あり得ない話ではないでしょう? だから、クラリスもあの時そう言ったんでしょうよぉ〜」


 確かに、あり得ない話ではないからそう思った。だけど……でも。


「どこの国かも分からずに捜し出すなんて……。この世界には、どれだけの国があるかも詳しくは分からないのに。それに加えて他国の王族ならまだしも、貴族なんていったら天文学的な数になるわ。そんなの、一体どうやって捜せばいいっていうのよ」


 ベルビアンナもそれは分かっているのか、先ほどまでの勢いはなくなって、しょんぼりと俯いてしまう。

それを横目で見ながら、暫く黙って考えていたライラが口を開いた。


「他国の可能性は勿論なんだけど……これもあり得るんじゃないかしら?」

「これって、どれよ?」

「……。怒らないでよ?」

「失礼ね、私がいつも怒っているみたいじゃない! いいから早く言いなさいよ!」


(ウフフ〜、クラリスったら、もう怒ってるわぁ〜)


 立ち直るのが早いベルビアンナとは違い、ライラはハァと小さくため息を吐き、ほらね? と思いつつ、話さない事には先に進まないので諦めて腹を括る。


「他国を調べるのは……ここ、ルシファードの子爵家と男爵家を調べたあとでもいいのではないかしら?」

「はあぁぁぁ!? 何ですって! お嬢様は下級貴族に生まれ変わったとでも言いたいわけ? それこそあり得ないわ!!」


 ハァァ、こうなるわよね。クラリスは、お嬢様至上主義だから。ちなみに私は下級貴族なんだけど、それはいいのね? 別にいいけど。


「あくまでも、可能性の一つとし」「可能性としても、あり得ないわ!!」


 …………。面倒くさっっ!! 本当に話が進まないじゃないの。

追い出したいけど、ここはクラリスの家だし──何でもかんでもあり得ないって言うなら、こっちも適当に誤魔化してやるわ!


「落ち着いて最後まで聞いてくれる? お嬢様は、元々は公爵家だったかも知れない。だけど訳あって」「どんな訳よ!!」


 プッチーーン


(あらぁ? フフフ、なにか切れたわ〜、怖い、こわぁ〜い)


「だから! お嬢様は生まれた瞬間からとんでもなく可愛かったから、政敵の公爵家に命を狙われたのよ! うちの娘が王太子妃になるのに、こいつは邪魔だってね! それで、公爵夫妻はお嬢様の命を守るために、泣く泣く田舎の男爵家に養子に出したのよ!」


「「…………」」


 ハァ、さすがにこんなんじゃ誤魔化せないわよね……。もう、一人で捜そうかしら?


「…………わ」

「えっ?」

「あり得るわ! ものすごくあり得るわ! それよそれ、さすがはあきね!」


(あらぁ? それはあり得るんだあ〜。クラリスって本当におもしろ〜い)

(嘘でしょ? えっ、こんなの信じるの? 結構、荒唐無稽なんだけど……。それと、今はライラよ。別にいいけど)


「子爵家は、あきに任せたほうが早いかしら? 男爵家は、はると私で手分けしましょう。年齢で絞り込めるのはいいけど、顔を見ないと分からないから、それなりに時間は掛かるかもね……。でも、一歩前進したわ。頑張って見つけ出しましょうね!」



 漸く(無理矢理)糸口を見つけたが、お嬢様達は重大なミスを犯している事に気づかない。

 たまたま? 前世と同じく、クラリスとベルビアンナは同じ歳で、ライラは一つ下だった為、お嬢様は二つ年上の十二歳だと思い込んでいるのだ。


 もう見つかったも同然! とばかりに思い出話に花を咲かせる、固定観念に取り憑かれた三人は──これより先、たっぷりあと二年は再会が叶わないことなど知る由もない。












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