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冒険者が破壊する薄明の世界  作者: Yuhきりしま
~いずれ拳王となる狂戦士のソロ冒険者は酔っ払い勇者に絡まれて旅に出る~
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勇者の訓練(魔族ベリアル)


 急な衝撃が腹部に当たったと思ったフリードは下からベリアルを見上げる。受けたダメージは軽く手加減した様子が伺える……ベリアルが言った『続き』は明らかにあの時を指している。


 渾身の一撃を防がれたフリードは魔力が尽きていた。それをベリアルは恐らく知らない。だからあの時に決着が付いているにも関わらず続きをしようと提案している。


「フリードさん!」


 強襲で動けずアカリは力を使った。


 葉の揺り籠――地面に倒れるフリードを守るように葉が展開する。もしも実践だったらベリアルがフリードを攻撃するまでに展開しなくてはならなかった。今のアカリに技術が足りず間に合わす事ができない。


 でも――これ以上の追撃を許さない為にフリードを守る。


「いや、アカリは手を出さないでくれ」


 フリードはアカリを止めて立ち上がり自身を守る力を止めさせた。


 そして、翼の生えたベリアルに向かって構えた。スキル『狂戦士』を惜しげなく使う……自分の限界を再認識する為にも良い機会だと判断しベリアルへと距離を詰めた。


 一方、ベリアルはフリードを高く評価している。油断したら負けると判断し最高速度でフリードに仕掛けた。背後から蹴りを入れて体制を崩したところに顔面目掛けて手の甲を当てた。反撃を貰わない為にすぐさま距離をベリアルはフリードから距離を取る。


 ベリアルはフリードが体術をメインに戦うスタイルだと知っている。脅威を前に命をかけて相手の土俵に立ったはずのベリアルは驚きを隠せなかった。


 フリードの振るう拳はあまりに遅く避けるのも容易い。カウンターで脇腹目掛けて放った拳はあっけなく当たり、最初と同じ様にフリードは地面を転がった。すぐさま起き上がったフリードに追撃を与える。


 頭頂部を目掛けて踵を落とし、地面から跳ねたフリードに掌を向ける。ベリアルが移動する時にも愛用している爆炎はフリードをぶっとばした。


 圧倒的な力の差――魔族と人間は魔力量も違えば燃費も違う。やられっぱなしのフリードに対してベリアルは堪忍袋の緒が切れる。


「てっめぇー。これ以上、手を抜くなら――ぶっ殺すぞ」

「過大評価も甚だしい。俺は至って真面目だ……狂戦士は魔物が居ないと力を発揮できない。これが今の全力だ! お前があの時にどう思ったかは知らない。でも、これが――」


 ベリアルはフリードを待たない。魔族の本質は強さが全てだった、少なくともベリアルの生きてきた世界は弱い魔族が死んでいく世界にほかならない。退屈そうに躊躇うことも無く自然体の動きでベリアルは掌をアカリに向けた。


 ワイバーンを撃ち落とす火力がフリードの脳裏を過った。第三者で蚊帳の外にいたアカリに急遽訪れた生命の危機、本人が驚く表情をフリードもよく見えた。ハっとしたアカリがフリードを向こうとすると。


 ベリアルから真っ赤な鱗が砕け散った。フリードの攻撃を防ぐ為に翼だけでは無く、身を守る鱗の鎧を一瞬で纏っていた。明らかに来るであろうと察していたタイミングで防ぎ、ぱらぱらと鱗が舞い散る。


 翼で倒れそうになる体制を保ちながらベリアルが言った。


「やればできんじゃん――」


 そう言って体制を保つのもダルくなったのかベリアルはそのまま地面にぱたりと倒れ込む。


 呼吸が乱れ放った拳の体制のままフリード自身も驚いた。急に身体が軽くなり届かなかった拳が相手を捉えていたを信じられない。


「んーあ……何に悩んでるかしらん。考えるつもりもないけどよ」


 地面に倒れたままベリアルはフリードに対して思ったことを伝えた。


「おまえは強い。ま、このベリアルが上だけどな」


 ベリアルは魔力が薄い世界にも関わらずワイバーンを千体落とした。自身の翼を顕現するだけでも魔力は消費される、機動力を得る為に行くども無く魔力を使い非常に消耗していた。


 弱体化していたとはいえ、フリードに与えた攻撃に手を抜いた覚えはない。何度も地面を舐めたフリードは自分でも気づいていなかった。攻撃を受けたのは理解している、それにしてもダメージは無かった。殆ど無傷と言っても過言では無い。


 大量の魔物を倒した調子の良い時と同じくらい肉体は頑丈で、フリード自身の理解が追いつかない。


「フリードさん……私を狙っているように見せてましたが多分、わざと外すつもりでしたよ」

「あーん。ちゃんと狙ってたっつーの。はぁ、人間ってバカバカしいなぁ。どうしてうちのボスはこんな種族が好きなのか理解できねぇー」


 魔力の尽きたベリアルは自分のボスを思い出すように空を仰いでいた。


「俺はもっと自分のスキルを理解しないとダメみたいだ。教えてくれてありがとう」


 手を伸ばしフリードはベリアルを起こそうとする。心底眠そうなベリアルは鼻で笑った。


「ふん、バカ野郎。おまえらと居ればボスに会えそうだから一緒にいるだけだからな。ボスが見つかってしまえばおさらばよ」


 力を振り絞り手を伸ばしたベリアルは限界がきてしまった様子で眠った。


 地面に向かって落ちる手をフリードはつかみ背中に背負ってアカリを見る。


「こいつを部屋に帰してくる」

「分かりました。ベリアルさんって実はいい人……いい魔族なのかもしれませんね」

「どうだかな」


 レオンの言葉は簡単に無視するベリアルは怯えるガイアを見てワイバーンを撃ち落とした。魔力がやっと回復しつつある状態で相当無理をしたに違いない。ジェネラルへ向かう途中も身体が鈍らないようにと空を飛ぶ事もあったが、本調子には程遠かったんだろう。


 メアリと別れてからは暫く体験していなかったが……魔力が尽きて身体がだるく重い状態は嫌というほど理解できる。魔族にとって魔力が薄いこの土地でベリアルが常にだるそうな理由を二人は察した。


【読者へ作者からのお願い】


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