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冒険者が破壊する薄明の世界  作者: Yuhきりしま
~いずれ拳王となる狂戦士のソロ冒険者は酔っ払い勇者に絡まれて旅に出る~
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ドワーフ工房の職人気質


 ミゼリは改めてダンジョン報酬の特徴を語った。王都エデンと同じ様にジェネラルでも強力な武器の方が価値が高いと説明する。


 鍛冶屋のドランが作る武器も優秀だがダンジョン報酬で手に入る武器との違い。それは特殊な効果の有無があげられる、炎を纏う剣や電撃を纏う槍から遠距離の相手を切り裂く刃等の力を持つ武器を魔武器と呼ぶ。


 武器だけでは無く、今まで見つかった防具としてジャンプ能力が向上する靴や遠隔地と通信する魔道具までと幅が広い。


 ドワーフ工房からジェネラル城という遠隔地で王と話をしたドランは魔道具を利用していた。


 その魔道具に関しては人間しか使う事が出来ない。魔族を含めドワーフのような亜人が持つ魔力は相性が悪く魔道具が上手く起動しなかった。その問題を解決する一歩として魔物から手に入る魔核という存在だ。


 魔核に含まれる魔力を抽出することで魔道具を動かす事が可能となっている。エネルギー効率が悪い様子だが、魔道具の動作を確認するくらいなら呪い師のミゼリがその場に居れば可能となっている。


 そんな魔道具と違い今回は素材に能力が付与されていた。


「なげー話はいいからよぉ。結局この金属は何ができるんだ?」


 素材に魔力を通した結果……起きた現象について追求するレオンへミゼリは丁寧に答える。


「はい。この金属は力の向きを返す特徴があります。だから……こーやって押すと」


 ミゼリは人差し指を金属の上に押し付けようとした。すると、指が金属に接する直前で止まり、力を入れると指が金属から離れた。


「触れないならゴミじゃねーか」

「小僧に凄さが分かるわけねぇ。いいか、魔力を込めれば壊れない金属ってことだぞ? どっかの小僧が剣をボロボロにして泣きながらドラン様直してくださいーって言ってきたっけ?」


 ドランはにやにやとレオンをじーっと見てきた。


「はっはーん。読めたぜ。つまりこの金属で剣を作れば最強の剣が出来るって訳だな? さっさとつくれや」

「本当に作っていいのかぁー?」


 勿体ぶるドランにイライラした声色でレオンは言った。


「あぁーん? 金か? やはり金をせびるのかクソガキ」


 やれやれ分かってないなぁと言った様子でドランはミゼリへ目配りした。全てを察したミゼリは頷くとレオンの前に立つ。


「ちょっと失礼しますー」


 そう言ったミゼリは拳を握り腰を低く構えて――レオンの腹目掛けてパンチをお見舞いした。細くか弱い少女の拳はレオンのお腹に当たるとミゼリは痛そうな素振りを見せた。


「お嬢ちゃん程度の拳なんざ避けるまでもねぇ。むしろそっちが痛そうだなぁ」

「はい! そうなんです!」


 ミゼリの言葉の真意を察することが出来ないレオンとフリードを見てドランが言った。


「物がぶつかるとお互いが押し合う。ミゼリが力を込めて小僧を殴った拳はミゼリにも返ってきているんだ。チビすけがさっき使ったハンマーをよく見てみろ」


 突然フリードに話題が振られ地面に落ちていたハンマーを手にした。全力を込めた一撃でボロボロになったハンマーを確認する。金属を殴りつけるフリードの力と金属が返す力の二つを受けたハンマーが大きなダメージを負っている。


「そのハンマーはコランダムって金属で出来ている。小僧共にわかりやすく表現すると……Bランクの鉱石だ。冒険者もランクがあるだろ? コランダムはBランク冒険者みたいなもん。それが壊れている」


 フリードに鉱石の知識は無い。けれど、自分のランクよりも格上な鉱石だと認識した。


「小僧の使う剣は物同士がぶつかり合い鋭い刃で対象を斬る。んじゃ、対象にぶつからない金属で剣を作ったら相手が斬れるか?」


 つまり、この金属で剣を作ったら壊れない剣の形をした棒が生まれる。そこまでの説明でフリードは気付いた。


「この金属は武器よりも防具に向いているんじゃないか? 魔力がある限り壊れない。敵から強力な攻撃を受けても当たらないってことだろう?」

「俺様の武器には使えねぇってことか……」


 武器にならないダンジョン報酬に落胆するレオンを放置してドランがフリードに話しかけた。


「小僧よりチビすけの方が理解がいいな。でも、金属が少ない。作れても身体の一部程度だな。ま、超レアな素材に違いねぇ。まだ小さな盾の方が使い道ありそうだ」


 魔力さえ込めれば壊れず、相手の攻撃を跳ね返す盾……言葉にすると強力な武具にフリードは感じた。


 もしもこの金属で作り上げた盾で強力な一撃……それこそベリアルの一撃を返していれば話が変わったかもしれない。


「んじゃそれはいいわ。とりあえず丈夫な剣を作ってくれよドラン」


 完全に興味をなくしたレオンは本来の目的である武器の調達に考えがシフトしていた。


「チビすけに運んで貰った状態の良いドゥロライトがあるけど、めんどいからヤダ。それよりチビすけは武器を使わんのか? お礼に譲ってもいいぞ」

「め、めんど? くそガキを俺様がどれだけ待ったと思ってんだぁ?」


 地団駄を踏むレオンを無視してフリードは素直に答えた。


「武器は使っていない。俺のスキルは肉体の強化だから拳で戦っている。そもそも、武器を使う訓練を積んでいない。慣れない武器より使い慣れた拳の方がいいと考えている」


 メアリとパーティを組んでいた時代……あの頃から武器を使わないスタイルで活動している。まぁ、武器を使いこなせなかったという過去もあるが、己の肉体で戦うメリットとしては良い比較対象が目の前に居る。


 剣を失ったレオンは剣聖の力が使えない。それに対して、フリードは何も無くても戦うことが出来る。


 スキルの差でレオンは仕方ないけれど、元が武器に依存してないフリードが持っている物としてはグローブくらいだった。


 殴る拳を保護する役目と掴んだ時に滑らないようにしている。


「小僧と違って金にならんチビすけだな。さっそくこの金属をいじるぞミゼリ」

「おっと、待ちな」


 レオンが呼び止めた。


「そのダンジョン報酬をてめぇにくれた記憶はねぇな。俺様の剣が出来ないならそいつはギルドに売って金にするまでよぉ」

「ギルドに売っても対して金にならんだろ! くれ!」

「やーっだね。ま、ドランよぉ。おまえさんが俺様の剣を作ってくれるってんなら譲ってもいいけどなぁ!」


 ダンジョン報酬を人質にした交渉が始まった。


 傍から見てこの二人はとても仲がいい。レオンが鍛冶屋をこだわる理由も容易に想像できる、ドランは単純に腕がいいんだろうとフリードは思った。王族であるフリードは金銭面でも豊かのはずだ。そのフリードがドランに拘るからには良い物を作るんだろう。


 数十分の言い争いを終えてとうとう進展する。


 ドランが折れた。この間でフリードが分かった事として、ドランは興味を持つとひたすら追求する性格をしているみたいだ。新しい金属を加工する為に仕方なくフリードの剣を作る。お金が欲しかったら良い値を告げればレオンが払うだろうけれど、その点に注視していない。


 金よりも自分が楽しく物を作ることが優先だった。その間もミゼリは金属をじーっといろいろな角度で見ている。


「よし、フリード帰るぞ」


 話がついた勇者パーティは城に戻った。

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