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冒険者が破壊する薄明の世界  作者: Yuhきりしま
~いずれ拳王となる狂戦士のソロ冒険者は酔っ払い勇者に絡まれて旅に出る~
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王都オフィキナリス


 オーク討伐の依頼を終えたフリードは大金を手に入れた。普段の依頼を三ヶ月続けても手に入らない報酬は、ギルドの想定以上にゴブリンが存在した事も加味され上乗せされている。


 貯金はあるからとメアリは言って全額をフリードに渡した。


 そして、メアリはフリードを連れ回す。


 まずは銭湯に叩き込み汗を流しなさいと命令してフリードは素直に従った。


 戦闘後の銭湯はフリードにとっても疲れを癒やすには最高の時間だった。メアリは待ち時間の間にフリードのボロボロで壊れた靴を片手にエデンを回った。


 影を自由自在に操るスキル影法師は移動も可能で実際のメアリは行きつけの防具屋へ瞬時に移動してはサイズを見ながら良さそうな物を見繕っていた。フリードが銭湯から出るとそのまま腕を引っ張ってボサボサの髪や生えっぱなしの髭を処理して、そこそこな色男を作り上げる。


「靴はそれが丈夫そうで良くて……あとは、防具。それは二人で見て決めましょうかねぇー。お店の目処はつけてるからさぁ、行くわよ?」


 あの頃と変わらない世話焼きなメアリに引っ張られてフリード達は買い物を済ませた。


 メアリはフリードの戦い方を改めて確認し、ガチガチな防具を推したがフリードは動きやすさ重視で金属では無く肌さわりも良い革製に決めた。会計に使った全てのお金をオーク討伐の報酬金では無くメアリが出している。


「よし、こんなもんかな。フリードもきちっとしたら、かっこいいよ」

「そりゃどーも」

「今日みたいに装備がボロボロで負けかける事があったら怒るからね?」

「負けてない」


 百歩譲ってスキルを使う魔力は残っていなかったが負けてないと言い張り、メアリは絶対にアレは負けてると暫く言い合っていた。


 そんな時間も過ぎてメアリが本題をフリードに伝える。


「ちょっと、遠くに王都オフィキナリスって国があるんだけど。そこに魔物が現れないって話を聞いたこと無い?」

「話だけならな」


 オフィキナリス――そこの冒険者は王都エデンと違い、魔物が現れなくて主に商人の護衛や農作業のお手伝い。その他、炭鉱などに力を入れている国を小耳に挟んだことがある。


「そこで考えたんですよぉ。私の美貌とこのスキルがあれば王族のお姫様に仕えたりして、のんびり生活して行こうかなって」


 メアリは影法師を使いお姫様の隣で深くお辞儀する自分を表現した。


「この国は十分強くなったし、あの孤児院も人が増えないからねぇ。もういいかなって」


 メアリとフリードが幼馴染の理由――それは小さい頃にエデンから少し離れた村が魔物に蹂躙される事件が起きる。エデンの冒険者が気づいて駆けつけた頃には崩壊しており奇跡的に生き残った数名が孤児院で青春を過ごした。


 その事件がキッカケで王都エデンは戦力の強化に重きをおいて十数年の月日が経った。その結果、孤児院に来る子も無くなり暫く経てばお役御免となる。


 メアリの話によると孤児院の運営は王都エデンが主に資金出しているが、メアリ個人からも援助して金銭面的には余裕を持っている。そこで、メアリはエデンを離れて次へ進もうとしていた。そのメアリをフリードが止める理由は一切無い。


「いいんじゃないか? メアリならどこへ行っても上手く行くさ」

「そぅ……そっかぁ」


 先程まで振り回し続けていたメアリの表情が少しだけ暗くなるのをフリードは見逃さなかった。


「その不安そうな顔は何だ、メアリが努力家で天賦の才さえ持ってる事を俺は知っている。俺と違ってあっという間にランクも上がっちまうくらいだ。小さい頃は背の高い俺が引っ張っていたが、パーティを組んでからはメアリにおんぶに抱っこだったな。俺も自分のペースでランクをあげて自分の人生を謳歌するさ。Aランクなんて超えてやるよ」


 急に自分の事を語って目標を宣言しているフリードがおかしくてメアリは笑いが溢れた。色々とあったがフリードは、何時までもメアリの味方だと再認識する。


「それに、今生の別れでも無いだろう。このエデンで成長した暁にはそっちにも顔を出してやろう」

「本当ですかー。オフィキナリスまで結構遠いんだから……ま、野宿慣れしてるし大丈夫か」


 フリードは遠出が必要な依頼を請けた時の思い出が瞬時に脳内を駆け巡った。あの時はパーティを組んでおり、男女絡むと寝床も複数用意する必要があり気を遣う。


「ま、私ならきっと上手くいくわ。オフィキナリスにフリードが遊びに来た時は案内くらい任せて頂戴なっ」


 楽しみにしているとフリードが伝えメアリは翌日エデンを発つ。暫く前にエデンへ訪れた商人が各国を回ってオフィキナリスへ立ち寄る情報を得てメアリが護衛という形で商人に同行する。


 一方、フリードはメアリと仲の良い受付嬢から声を掛けられた。メアリが太鼓判を押した事でDランク冒険者のフリードでも最大Bランクまで依頼を斡旋してくれる事となり、フリードは暫くCランクを上限として活動する事となる。


 金銭的にも余裕が生まれたフリードは装備にお金を掛ける事で、ボロボロの靴を履き潰す必要は無くなった。そして、メアリが出発して二年過ぎた頃にフリードはダンジョンを一人で攻略していた。


 ソロで活動し続けていたフリードは依頼によりエデンを空ける事も多く最新の情報を取り入れ損ねていた。ダンジョンには三日掛かってしまい、夜遅くにエデンへ戻り自宅で汗を流して眠った。翌日はのんびりと冒険者ギルドに立ち寄りご贔屓にしてくれている受付嬢がフリードを見つけると大急ぎで駆け寄る。


「フリードさん!」


 慌てた様子に異変を感じ取ったフリードは冷静に訪ねた。


「何かあったのか?」


 受付嬢の口から出た内容は数年前の事件が大きくなっただけ……あの頃は、王都エデンの近くにある小さな村が壊滅した。


 そして、今回は王都オフィキナリスが壊滅してしまった。



【読者へ作者からのお願い】


この小説を読んで


「面白い!、続きが楽しみ!」


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