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冒険者が破壊する薄明の世界  作者: Yuhきりしま
~いずれ拳王となる狂戦士のソロ冒険者は酔っ払い勇者に絡まれて旅に出る~
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超重量級の荷物運び任務


 ワイバーンの襲撃から生還したジェネラルをフリードは歩いていた。城ではアカリがエリザ・グローリー……レオンの妻に連行され姿を消していた。寝る場所の案内とか色々と理由を付けて引っ張っていく姿を見送り、ベリアルは魔力の消費で疲れたのかゴロゴロとお菓子を食べていた。


 パーティを放置して消えたレオンが何処に行ったのかも分からず途方に暮れた結果。


 フリードはジェネラルの街並みを眺めることにした。


 エデンと比較すると道を行き交う人々の数が圧倒的に大きい。露天や商店もちらほら見えて笑顔で過ごしている国民が視界に映った。


 フリードが疑問に思うのはワイバーンが襲ってきた理由だ。もしもベリアルが働かなければ被害は甚大だったはず。身近に起きた危機を考えると国が滅びるきっかけなんて些細な事かもしれない。オフィキナリスを襲った魔物が集団だとしたら敵討ちの終着点が分からない。国を滅ぼした魔物を倒せばいいのか。それともこの世界から魔物を消し去れば敵討ちと言えるのか定義が曖昧になってしまった。


 事実、今のフリードではワイバーン千体を倒せないだろうと踏んでいる。ベリアルの様に空を飛ぶ相手と戦える術を身に着けなくては戦いについて行けない。


 フリード自身の自己評価はとても低かった。大群との戦いは慣れてきたが、現状を顧みるに魔族と戦うのは厳しい。そして、広範囲に焼き尽くすアカリのような力もなく、レオンよりも器用じゃない。


 メアリと別れて自分なりに力をつけてきた。エルフの里ではミノタウロスにも引けを取らない活躍が出来ていたと思う。成長を実感した事で見えてきた世界……フリードは成長の限界に不安を抱いた。


 結局フリード自身がどう思おうとも降りかかる火の粉を力で払い、目の前に迫る敵を倒すしかないのは理解している。


 出来る事をやるだけであり、出来る事しか出来ない。


「ん、暇そうだな」


 街並みを堪能しながら思考して歩いているだけのフリードが声を掛けられる。その声が聞こえたのは場所を確認するためにフリードは下を向いた。


 にかっと笑う子供がフリードを指さして言う。


「暇ならこれを引っ張れ」

「……ずいぶんと大荷物だな」


 子供が指さしたのは大人でも引くのを躊躇うほど、荷物が乗った荷台だった。馬が引く物では無く、人が棒を押して動かす荷台……ぱっとフリードが中身を確認しただけで、鉱石などの重い物が見える。


「まだまだ買うぞー」


 そう言って子供がとことことフリードと荷台を置いて前を歩いて行った。


 不用心にも程がある。フリードが放置していたらこの荷物もその場で佇み、あの子供が困るだろう。


「流石……あいつの国か」


 まるでレオンのような子供だった。致し方なく予定も無かったフリードは溜息を吐きながら荷台を掴む。


「おっ」


 予想外の重さにフリードは驚きを隠せなかった。右手で握った棒はあまりにも重くてびくともしない。荷台の後ろを見ると誰も居ない道が続いており、突然この荷台が現れたように放置されている。つまり、あの子供がコレを引いて来たと脳が理解する。


 小さいからと言って侮れない。冒険者なら見た目と反して強力なスキルを持っている事もしばしばとある。あの小さい子供――レオンの息子ガイアと同じくらいの子がとても力持ちだという事実。


「このままじゃ、見失うな」


 行く先を見ると子供は脇目も振らず歩いていた。本腰を入れるフリードは両腕に力を入れ体重をのせて荷台を動かした。


 ぐっと力を入れて車輪が動き出すと後は楽に動いた。その楽に動くというのもフリードが全力をださず両手に力を入れっぱなしという状態だけれども。


 フリードは置いていかれないようにバランスを保ちながら子供の後を追った。ジェネラルの土地感が無いフリードはどんどん進んでいく子供にやっと追いつくと何処に居るのかも分からなくなってしまった。


「お、来たか。やるなチビすけ」

「子供にチビすけと言われる経験が出来るとはな……それにしても重すぎるだろう」


 スキル『狂戦士』を使うまでも無い重さとは言え、あまりにも重い。この重さをレオンが引くと想像したら散歩で終わるだろうとフリードは口角を自然とあげた。


「お、おぉ。チビすけ。ジェネラルにいつ来たんだ?」

「さっき来たばっかりだ。急にワイバーンが襲ってくるから驚いたものさ。よくあることなのか?」

「んなわけねーよ。珍しすぎてダルかった。街がめちゃくちゃになったら買い物一つ出来ねぇからなぁ」


 ベリアルがワイバーンを落とさなければジェネラルは混乱していただろう。そうなれば買い物一つままならない。フリードが周りを見ると外出している人が沢山いる。城外とは言え、肉眼で確認できる騒動にも関わらず不安を抱いて家に籠るというフリード目線だと自然な動きが見れない。


 もしもエデンでワイバーンの群れが襲いかかってきたら暫く警戒して外出を控える動きになるだろう。


 そうなってもおかしくない。否――そうなるべきだと思うがこの国は違う。その原因を考えたフリードは一つ、心当たりがあった。


「レオンってどんな奴なんだ?」


 ワイバーンと戦っている時に国中へレオンが言葉を掛けていた。


 『勇者パーティのベリアルが外の魔物をぶっ殺すんで気にすんな。このレオン・ジュピターが居る限り魔物になんか滅ぼされねぇからよぉ!』というレオンの言葉が大きな力を持っている可能性が脳裏をよぎる。


「あの坊やはむっかしから口だけが達者な奴よ。王族とは言え、そこまで強い家系じゃない。だから、反動でやること言うことデタラメだ。今はもう無いオフィキナリスって国でも色々とやらかしてある意味有名な馬鹿野郎だ」


 悪い意味とも取れる有名人。そのフリードがいるからこの国は安心感を得ているのかもしれないとフリードは思った。それにこんな小さい子供でさえレオンを知っている。


「ま、あんな坊やがいるからこの国は活気があるってもんだ。お、チビすけはここで待ってな」


 そう言って子供が古い建物に、とてとて駆けていった。


 暫くの待機時間……荷物の内容は鉱石だから、あの子供はこういう石を集めている物珍しい子だろうとフリードはあたりをつけた。


 小さい子供ならばコレクション欲があってもおかしくない。ただ、この重さはありえない。親御さんと合流する可能性を考え始めた頃にフリードは声を掛けられた。


「チビすけ帰るぞ」

「そうか。ところでその小さな石の塊は何だ?」


 こぶし大の大きさでキラキラとしている石が大量に入った袋を持っていた。


「これはワイバーンの魔核だ。そういえば名前はなんて言うんだ?」


 魔物が体内に石を持っているのはフリードも知っていた。普段の討伐では素材として使わない部分だからこそ、大量に持っている意味が分からないまま子供に対して名前を教える。


「冒険者をやっているただのフリードだ」

「結構気に入ったぞフリード。ドワーフの『ドラン』だ」


 子供の様な無邪気な笑顔でドランは魔核を荷台に乗せた。


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