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冒険者が破壊する薄明の世界  作者: Yuhきりしま
~いずれ拳王となる狂戦士のソロ冒険者は酔っ払い勇者に絡まれて旅に出る~
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千体討伐任務


 身投げにも見える突然の飛翔はその場にいる者を釘付けにした。


 大きな燃え盛る翼を三度羽ばたかせ城から離れたベリアルはエルフの里で見せた様に爆発を起こした。その爆音と共に流星が如く黒い煙を尾にしてワイバーンの群れへ単身突っ込んでいった。


 フリードはソレを見守ることしか出来ず。レオンは一人でテンションが上がっていた。


「やる気になったかベリアル! 蹴散らせぇー!」


 その言葉を開始の合図かと思うほどのタイミングで何体かワイバーンが地に落ちるのが見えた。勢いよく突っ込んだベリアルが空中で轢き殺している。対するワイバーンは飛来した敵に対してジェネラルへ向かうのを止めてベリアルを囲む様に旋回を始めた。


 ワイバーンにとっても急に現れた敵の数はたったの一人……全方向からの咆哮と共にワイバーンは口から炎を吐きつけた。逃げ場なしの状況にも関わらずベリアルは小さな爆炎と共にジグザグに動いて近いワイバーンへ攻撃を仕掛ける。


 ワイバーンの群れは数の暴力と炎を扱う魔物だがベリアルの特性は火竜。炎への耐性もあれば爆発による推進力で高速に動ける。


 その翼は今までの人生で最高に調子のよいフリードを一撃で落とせるほどの力を秘めている。すれ違いざまに翼で叩きつけてバランスを崩したワイバーンにベリアルは炎で作り上げた鉤爪を振るった。


 翼を焼き切りワイバーンは地に落ちる。


 空では幾度となく爆音が鳴り響き、その度ワイバーンが墜落していく。魔物の鳴き声よりも大きな爆音はベリアルの意図したことか分からない。けれど、小さく怯えていたガイアの身体から震えは無くなっていた。


 ガイアはフリード達と同様に窓からベリアルの戦いを見守っていた。


 火花散らしワイバーンを幾度もなく撃墜するベリアルを腕組みしながら眺めている男――レオンは瞳を閉じて頷きながら呟く。


「これよこれ。うちの新人くんが一人であの数を相手にしている。愚王……これが勇者パーティのメンバーよぉ!」


 調子に乗り始めたレオンは口角をあげて続ける。


「王族共よぉ。てめぇらは俺様が旅に出ることを渋ってたよな~~。もし旅に出てメンバーを集めてなかったら今日滅んでんぞ? この国はよぉ」


 ストルス王の用意していた秘策も準備不足により機能していない現状では誰も言い返せなかった。


「まぁ、あいつが居なくても俺とこのフリードでどうにか出来たけどな! がはは」


 流石に千体の空を飛ぶ魔物に対してフリードは太刀打ち出来る自信は無い。買いかぶり過ぎだと思っているとストルス王がフリードに尋ねる。


「あの青年は見るからにSランクを超えておる。この男はどのランクなんだね?」


 痛いところを尋ねられた。嘘を言う意味も無いのでフリードは自分のランクを口に出す。


「俺はCランクの冒険者だ」


 爆音響く中で王の間はざわついた。Cランク冒険者は決して高いランクでは無く、並の冒険者と言っても過言では無い。普通に生活するくらい稼げるレベルではあるが、そもそも冒険者の生活レベルは高くなく、生きるだけならFランク時代のフリードでも十分だ。


「おいおい、そんなことを言ったら俺様も正式にはFランクだろ?」


 レオンは鼻で王族を笑った。冒険者ギルドの定めた規定によるランクはちゃんと機能しているとフリードは考えている。


「過大評価だレオン。俺はCランク冒険者で妥当だ」

「はぁ? おいおいフリード。俺様がFだぞ?」


 口論の間もベリアルは単騎で魔物を落としていた。初速こそ飛ぶ鳥を落とす勢いで魔物を撃墜していたけれど、数が減り空の自由度が上がったワイバーンはベリアルを完全に敵視し距離を取りながら戦うよう連携を取り始めていた。


 そのせいで距離を詰める為にベリアルは魔力の消費量が増していく。この世界で魔族は魔力の回復率が悪くて長時間は動けない。


 フリードはレオンの話を無視して孤軍奮闘のベリアルを心配することにした。ストルス王とレオンが言い合いを始めたがフリードは耳に入れない。


 エルフの里でベリアルと手を合わせた時をフリードは思い出す。確かあの時はフリードを一撃でふっ飛っとばしたベリアルの攻撃に対してレオンが全て撃ち落としベリアルの魔力が切れた。


 直前に上空を飛んでいたベリアルがどれ程の魔力を消費したのか分からない。半分のワイバーンを倒した今……ベリアルはあとどれくらい飛べるのか分からない。


「うっし、ベリアルの野郎が全部倒すから俺様はドランのとこ行くか。そういえば新しい魔道具で話してたよな愚王……貸してみ」


 そう言いながらワイバーンに興味をなくしたレオンがジェネラル中に声を響かせた。


『勇者パーティのベリアルが外の魔物をぶっ殺すんで気にすんな。このレオン・ジュピターが居る限り魔物になんか滅ぼされねぇからよぉ!』


 身勝手で自由にいつも通りのレオンはソレだけを国民に伝えてフリード達を放置して去っていった。


「まったく、自由すぎるリーダーだな」

「はい。私達も置いていっちゃいました」


 アカリと顔を見合わすフリードは溜息を吐いてベリアルを見守った。


 結局のところはフリードの杞憂に終わる。ワイバーンが距離を取り炎を吐いたところで、ベリアルは圧縮した炎の弾を飛ばしてワイバーンを丸焦げにしていく。機動力の差は凄まじくベリアルは千体のワイバーンを全て地面へ落とした。


 そして、唯一残ったベリアルは出た時と同じ様に窓から中に戻ってくる。


「レオンの声が空で聞こえたな。しかもアイツいねーんか」


 退屈そうに大欠伸したベリアルは一息付く為に椅子に座った。その隣に駆け寄るガイアは笑いながら話しかける。


「すごかった」

「んぁー、まぁ。アレぐらいならな」


 空を飛ぶ魔物に対して相性の良い冒険者はフリードが知る限り少ない。そして、圧倒的火力で魔物を倒す速度があれど千体と戦うのは簡単には出来ない。やはり、ベリアルもSランクをゆうに超える実力者だ。


 それは隣にいるアカリも同様である。もしも、ジェネラルがなければ超広範囲の熱線でワイバーンを滅ぼしていただろう。


 フリードはどうだ。エルフの里で沢山の魔物を倒したが千体と比べたら圧倒的に少ない。


 結局はCランクの冒険者だ。


 それでも、俺がやることは変わらない。俺に出来る範囲で力を使うだけ。


 難しい表情のフリードにアカリは気づいた。


「フリードさん。何事も無くて良かったですね!」

「あぁ、ベリアルのおかげだ。うちのリーダーには呆れる」

「あはは。でも、ある意味……信頼みたいな感じじゃないですか?」


 信頼があるから全てをベリアルに任せた。あの男は信じられないくらい人を信じる。メアリの言葉も簡単に信じてフリードを探しに国を出る始末。


「お疲れベリアル」

「おー、お前らを相手にするより楽だから気にすんな」


 ベリアルはガイアと楽しそうにお菓子を食べて休んでいた。


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この小説を読んで


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