混沌のエルフは世間知らず
レオンがベリアルを説得して正式にパーティとなることが決定した。そして、レオンの故郷であるジェネラルに向かい数日が過ぎている。食料はアカリが用意してくれた物で足りているので問題では無い。
酒が切れつつある。
この問題も後少しでジェネラルに到着するので問題無いだろう。フリードは交代制という話だったはずだが殆ど一人で馬車を動かしていた。魔力が回復して鈍らないようにとベリアルが偶に飛翔し、空に炎弾を打ち上げるくらいで二人はゴロゴロと荷台で過ごしている。
唯一、フリードの手伝いをしてくれるアカリは今まで手綱を握ったこともなく。目を離すと休憩なしで馬を走らせてしまうので結局はフリードが面倒を見ることになった。
「すぅ……すぅー」
変わらない景色は退屈を生んでしまった。魔物が出れば話は変わるんだろうけれど、道中は平和そのものでやることがない。そういう旅になっているのでアカリもフリードの膝で寝息を立てていた。
其処まで広くないスペースに膝を折り曲げて器用にフリードの膝を枕にしているアカリに対してフリードは無視して先を進める。
「お、随分懐かれてるじゃねーか」
「ふん。お前らの寝相が悪くて荷台で休めないんだろう」
やることも無いレオンが荷台から顔を出してフリード達を見ている。
「違いねぇな。もうちょいでジェネラルが見えてくる気がすんだけどよぉ。ぶっちゃけ気乗りしないんだわ」
フリードはアカリを起こさないようにゆっくりと後ろのレオンを一瞥した。目が合うと似合わず逸らされる。
「故郷だろう。帰りたくないって言うなら通り過ぎるか?」
「そうも言ってられん」
レオンはスキル『バトルマスター』で剣を取り出した。剣聖フラガを宿すらしい力だが、握る剣をよく見るとボロボロだった。
「俺様の剣がこんな調子でまずい。そこそこな剣だったはずだが、何処かの魔族に本気を出して耐えられなかったみたいだ。だから、行きつけの鍛冶屋に寄るつもりだ。ドランの奴に良い剣を貰わないとな」
旧友か何かを思い出しているレオンを見るとフリードは気乗りしないという言葉が嘘にしか聞こえない。
「楽しみにしているように見えるぞ。帰りたくない理由は何だ?」
「理由はそりゃ、至極単純よぉ! 王都ジェネラルからオフィキナリスは、フリードが想像しているよりは距離が近い。そんな近くで国が落ちてるのに最強の俺様が国を出て仲間探しなんて馬鹿げてると思わないか? 留守の間に襲われたら戦力の大幅ダウンさ」
フリードは実際にレオンが戦う姿を見たから断言出来る。こいつは口だけじゃなくて本当に強い冒険者だ。Sランク冒険者と並んでも遜色ない、いや。むしろ、遥か高みに居るようにさえ見える。フリードと違って明らかに強者だ。
そんな戦力が一時的に離れる危険性……今までの行動を見るにフリードはひとつ、気になる点が浮かんだ。
「レオンの性格なら仲間なんて集めずに一人で敵地に向かって行ったんじゃないか?」
ジェネラルから各地を回ってエデンまでの旅は思っていたよりも長くて大変だとフリードは考える。唯でさえ、真っ直ぐ向かっているだけのフリードが苦労しているからだ。
「初めはそうだな。俺様に賛同しない冒険者を無視して一人で向かったさ。そこで、オフィキナリスを見た。俺様ならまぁ、一人でどうにでも出来るだろうけどな。あの生意気なメイド……あぁ、メアリか。アイツの言葉を思い出したって訳よ。幼馴染のフリードがどうたらウザい自慢をしてきててな。唯一、前評判を信じて拾った男が使える奴で大満足だぜ」
過大評価も甚だしい。結局は魔族のベリアルに一発で戦闘不能にされただけの冒険者であるにも関わらずレオンの中では評価が高いようだ。
「それによぉ。おまけで何か強えエルフと魔族を捕まえきれたんだ。このメンツでやるぞ」
「勇者パーティに無理やり引き入れたお前の図太さには驚くばかりだ。ベリアルはまだしも、俺はアカリに関して反対だ。これから俺達は国を落とす敵と戦う。それにアカリを巻き込む理由は無いだろう。アカリの目的は外の世界を知る事なら、俺達と居る必要は無い」
いくら強い力を持っているとは言え、無理やり死地に連れて行く訳にはいかない。ベリアルに関しても魔界に詳しいだけでボスの敵と国落としの犯人が一致しないなら戦う理由が無い。
「そこの狸寝入りの嬢ちゃんも理解はしているさ。俺様達が何をしようとしているのかをな!」
レオンの言葉を聞いてフリードは膝に頭を乗せるアカリを見る。
特徴的な耳が赤い……顔を覗くと片目だけ開けており、目が合った。
「レ、レオンさんの声がデカくて起きただけですからね。決して寝た振りなんてしてませんからね!」
がばっと飛び起きて弁明を述べるアカリは顔も真っ赤になっていた。
「んなこたどうでもいい。俺様達はこれから強そうな奴と殺すか殺されるかの戦いをするはずだ。嫌なら心優しい俺様はおまえを置いていってもいい」
フリードはレオンから『引き返すなら今だぞ』と言葉の裏が読めた。ソレに対してアカリはハッキリと返事をする。
「私も行きます。私の力が絶対に必要になるはずですからね。まだあんまり使い方が分かって無いですが!」
それに……とアカリは続ける。
「私が居ないからフリードさん達が負けちゃったら、エルフの里もゲルマンまで襲われちゃうので、私が真っ先に悪い相手を懲らしめてやります」
ニコニコな笑顔にやる気まんまんな様子で両手を強く握るアカリは人一倍のやる気を見せた。
止める理由を失ったフリードは期待しているとアカリに声を掛ける頃に王都ジェネラルがやっと見え始めた。
【読者へ作者からのお願い】
この小説を読んで
「面白い!、続きが楽しみ!」
と一瞬でも思われたら、↓の★★★★★を押して応援してくださると大変、やる気に繋がります。
よろしくお願いします!




