天災の化け物
パーティメンバー内で意識を揃えなければ崩壊してしまうパターンはありきたりで、過去にフリードもそういう流れで解散している。
結局、レオンが無理やり二人をパーティに引き入れたので目指すところが一致していない。
フリードは後ろでガヤガヤしている声を聞いて深く肩を落としてレオンに告げた。
「レオン。お前が無理やりパーティに入れると言ってアカリとベリアルを引っ張ってきたんだ。どうにかしろ」
「あ、あの。私は外の世界を……冒険したいって思ってたのでフリードさんが居るならいいですよ?」
一人はすでに了承している為、残りは魔族のベリアルだけとなった。危険な旅になると思われるが、実際に目で見たアカリの力は強力で心配する必要が無いとフリードは考える。むしろ、居てくれた方が魔物に対して安全に対処できるだろう。
「どうせ一人じゃ暇だろ? 俺様と来いよ」
酒を揺らしながらレオンがベリアルを口説きに掛かった。
「今は一人だけどよぉ。ボスが見つかるなら話は変わるがお前らは魔界に行くんだろ? また戻る事になるじゃねーか」
よく考えると魔族のベリアルはこの世界に遠出してきている。口ぶりから察するに向こうでは探し尽くした後なら戻る意味がない。フリードも少しだけ考えてみたがベリアルを引き止める言葉は思いつかなかった。
そんな中、酔っぱらいのレオンは気を使うことも無く思ったことをぶち撒ける。
「てめぇのボスもどうせ魔族だろ。だったらこの世界に来る必要が無いよなぁ? 魔力の濃度が違ってこっちだと力が発揮出来ないとか言ってたじゃねーか」
魔族は強力な力を持っているけれど、使う為に大量の魔力を消費するらしい。体内の魔力が溜まるまで時間の掛かる世界だからこそ、魔族が姿を現すのはとても珍しい。ベリアルも行方不明のボスとやらが居なくならなければ魔界から出る事は無いだろう。
レオンの話を聞いてベリアルは納得した様子で『それもそうか』と呟いて考え事をしているようにフリードは横目で見えた。
暫く黙っていたベリアルがレオンに呟く。
「帰ったら街も崩壊してたしアイツの事だから人間のところにでも行ってるかと思ったんだけどなぁ……」
気になるワードがベリアルの口から出てきた。帰ったら街が崩壊している……どの規模か分からない。フリードの故郷と同じ規模なら小さな村だし王都オフィキナリスと同等なら一つの国が壊れている。魔界の街という規模が分からないフリードはベリアルに言った。
「ベリアル。詳しくその話を教えてくれないか?」
酔っ払いの魔族は頭を掻きながら情報を乱雑に並べた。その一つ一つを並び替えてフリードなりに情報をまとめる。
「ベリアルが遊びに出掛けて家に戻ってきたら街を含めて崩壊しており誰も居なかったと……そして、何処かで生きてるであろうと旅に出てボスを探し回って途方に暮れている。そんな中で我々に出会い襲われてしまった。自衛の為に戦うも俺の勘違いもあり今に至るって感じか?」
とろんとした顔でベリアルは何度か頷いた。
「はっはーん。読めたぜ。ベリアル! てめーのボスは既に死んでておまえの故郷を壊した奴が多分、オフィキナリスを潰した奴と一緒だ。な? おまえもオフィキナリスを潰した奴を追いかければボスの敵も打てるって訳よ」
がははと線を無理やり繋げたレオンがバンバンとベリアルの背中を叩いた。
「ボスが簡単に死ぬかぁ? 正直に言うと死ぬ姿を想像できねぇなぁ。んぁー、どうしたもんやら」
生活する空間を壊されて慕うボスが死んだかもしれないという話なのに、ベリアルの調子は軽い。デリカシーの無いレオンの言い方も頭を悩ませる物だが、ベリアルもあまり気にしていない様に見えてフリードは違和感を覚える。
「魔族ってのはそういうものなのか?」
「ん?」
ベリアルはきょとんとしてフリードの言いたい事が伝わっていない。何度か瞬きするも答えに到達出来なかったみたいだ。
「だから、ボスが死んだかも知れないと言われて様子が変わらないから気になった。このバカも言い方が失礼極まりないが、何処か……他人事のように見える」
実際に魔物により崩壊に至ったオフィキナリスと幼馴染であるメアリを失ったレオンからすると、ベリアルが異質に見えて仕方ない。
「ま、他人っちゃ他人だしよぉー。死んだって事は負けたんだろ。魔族同士のぶつかり合いで負けたら死ぬしなぁ……ま、ボスに文句言いたい奴が居たのは事実さ。死んだなら死んだで好きに生きるさ。ま、邪竜ネメシスには会いにいくけどな!」
ざっくばらんとした奴というか、竹を割ったような性格と表現するのが適切かとフリードは思った。魔族という生き物は人間とは大きく違う生物だと実感する。
「おいベリアル。いま、邪竜ネメシスって言ったな? 実在するんだな?」
ごくんとレオンが唾を飲む音がフリードには聞こえた。
「おう、うちのボスはネメシスと友人関係って奴らしくてよく会いに行ってたぜ」
右手で握っていた命よりも大事そうにしている酒をレオンは手が滑ったかのように落とした……ところを左手でキャッチした。
「うぉ。あぶね」
「酔っぱらいの癖に反応だけはいいんだな」
フリードの言葉に自信満々な顔でレオンは笑った。
「おうよ。俺様だからな! んで、ベリアル。ネメシスは存在するんだな?」
フリードは聞き慣れない邪竜ネメシスにレオンが反応したようだ。
「そりゃ居るよ。何回かボコられた」
「はっはっは。ネメシスねぇ……田舎者のフリードに説明すると天災と言われる化け物がこの世に存在する。勿論、この瞬間まで俺様も信じて無かった夢のような話さ。何処の馬の骨かしらん吟遊詩人が紡ぐ話だと思ってたんだけどよぉ」
レオンは邪竜ネメシスに関しての知識をフリードに披露した。人が叶う相手とは言えない魔獣の類だと言った後に天災の説明をする。まず、邪竜ネメシスは竜という名前がついている通り空を飛ぶ翼を持ち空から襲い掛かる魔獣で普通の冒険者には対処出来ない。
現存するSランク冒険者でも敵わないと言い伝えられている天災の一つ。次に、魔獣ベヒモスの特徴をレオンが口に出した。陸を支配する魔獣でどの魔物よりも強く強靭な肉体で見た者を破壊する。最後の天災と言われる化け物は怪魚リヴァイアサン……この辺では珍しい大海に棲む化け物だが、唯一この天災だけは人間に対して被害が少ないとレオンが言った。
「そもそも、おかしい点を見つけた。ベヒモスに至っては誰が言い伝えて居るんだ? 見た者が破壊されるなら言い伝える人物も居ないだろう。かなり遠出しないと海が無いからリヴァイアサンは理解出来るが……」
「俺様が知るわけ無いだろう。でもよ。ベリアルが邪竜ネメシスは存在するって言ってんだぜ? だったら他のも居るだろ」
噂話に尾ひれが付いて回るのは良くある話だ。
だからこそ、フリードは話を半分程度にしか聞いていない。
「なぁレオン。もし、その実在する邪竜がオフィキナリスを壊した本人だとしよう。その邪竜と会いに言ったベリアルのボスも何かしらで被害を被って行方が分からない。そう仮定したらベリアルにも理由が見つかりそうじゃないか?」
ベヒモスがどの魔物よりも強い化け物なら邪竜ネメシスもそれと同等の可能性があるとフリードは考えた。それならオフィキナリスという王都が落ちるのも頷ける。
「つーことでよぉ。邪竜ネメシスとやらを目指していけばボスの場所も分かるんじゃないかベリアル?」
若干眠くてどうでも良くなったのか気分やのベリアルは言われるままに頷いた。
「それでいいや。ま、行く宛も無ければ邪竜の事を忘れてたしな。ボスがいない時に会ったら殺されそうだけど、そんときゃがんばるかぁ~」
不穏な言葉を吐いて魔族は眠りについた。
【読者へ作者からのお願い】
この小説を読んで
「面白い!、続きが楽しみ!」
と一瞬でも思われたら、↓の★★★★★を押して応援してくださると大変、やる気に繋がります。
よろしくお願いします!




