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冒険者が破壊する薄明の世界  作者: Yuhきりしま
~いずれ拳王となる狂戦士のソロ冒険者は酔っ払い勇者に絡まれて旅に出る~
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目的のすり合わせ

 フリード達の馬車はルミカの芳醇な香りに包まれていた。


 ゲルマンを足早に去り勇者パーティが目指すはレオンの故郷――王都ジェネラル。


 その道中で酒を酌み交わすリーダーと新人が居た。フリード自身……違和感があるけれど、リーダーの意向に従うつもりだった。


「初めて飲んだ……うめえな」

「おうおう、あのゲルマンで作られたルミカ酒は格別だ。フリードも飲むか?」


 いつものレオンが手綱を握るフリードの酒を進める顔は真っ赤で焦点も合ってない。泥酔するリーダーを見ながらフリードはため息を吐いた。


「まったく……後で頂くとしよう」


 荷台で盃を交わす酔っぱらいとは違い、御者席に座るフリードの隣にはアカリがちょこんと座っていた。


「気に入ってもらえて嬉しいです。フリードさんも後で……ゆっくりした時でいいので是非」

「あぁ、あのバカ共が全て飲む前に確保していてくれ」


 馬車を操るフリードと生産者のアカリ。そして、後ろの消費者二人に別れてジェネラルに向かう。


 そもそもフリードは新人である魔族のベリアルに関してレオンの意見を尋ねたいと考えている。


 後ろをちらっと覗くと馬鹿笑いしながら二人で楽しんでいる姿が見れた。


「ベリアル」


 水を差すことになる可能性は無視してフリードが魔族を呼んだ。


「んあー、なんだ?」

「改めて謝罪しよう。あまりにも急に現れたので全力で殴ってしまった。申し訳ない」


身を乗り出してベリアルはフリードに肩を組んで酒臭い口を開く。


「なんだお前、気にしてんのかぁ? 魔族なら不意打ちも珍しくねぇよ。それに今はこんな旨い酒が飲めるしな」


 馴れ馴れしいベリアルにフリードは肩を落とした。


「本人が気にしていないなら俺も気にしないことにしよう。レオン! お前がこの二人をパーティに入れると言ったから俺は別に構わない。でも、俺達の目的を共有する必要があるだろう」


 無理やり二人を加入させたレオンが仕事を要求しない訳が無い。ニコニコな表情で酔っ払いを見守るアカリも、酔いが回ってうざ絡みしてくるベリアルに仕事をさせるはずだ。


「おうおう、俺達の目的は王都オフィキナリスをぶっ潰した奴らを探し出してぶっ潰すことだ。それでよぉ~」


 泥酔寸前に見えていたレオンの声色に力が籠る。


「俺様の見立てじゃ魔族が関係してると読んでいる」


 その言葉をきっかけにシーンと静まり返る馬車できょろきょろとベリアルが周りを見た。


「魔族って……一人いかいねーな。ははっ」


 人間二人にエルフが一人……そして、魔族であるベリアルは何も気にせずフリードから腕を外してレオンを見た。


「ちなみに心当たりは無いぜ」


 ルミカ酒を飲んでベリアルは話を続けた。


「そもそも、人間と話すのも今回が初めてだ。こんな世界に魔族が足を踏み入れる理由が無いからな。ま、こんな旨い酒があるならもっと早く遊びに来るべきだったけどよぉー」


 フリードも魔族を見たのは初めてだから、どんな種族なのか分かっていない。そこで、色々と物知りなレオンに尋ねる。


「魔族が怪しいってのはレオンの予想でしかない。それに俺は魔族がなんなのか分からん。説明を求めよう」


 王都エデンは他の国と比べたら都会と言えない。だから、情報をフリードは持っていなかった。そもそも、フリードは情報収集に疎く

オフィキナリスについて調べるのも一苦労している。そんなフリードに対して丁寧にレオンが魔族を教えた。


 その内容でフリードが思っていたよりも魔族は敵視されていると知った。


 魔族一人を倒すのに必要な冒険者はAランクで二十人居ればいい戦いが出来るらしい。冒険者パーティは四人一組が多く、一人の魔族を討伐するのに五組も必要と話を聞くと魔族の強さにフリードは驚きを隠せなかった。


 その脅威がオフィキナリスを潰したとなれば想像も容易い。一部の強い冒険者では太刀打ち出来ない……オフィキナリスは元々、魔物が現れない地域で強力な冒険者が少ない。


 そう……Sランクのメアリ一人だけじゃどうにもならない。


「魔族が強いって認識を持ってくれてるのはよぉー、素直になんっていうか。嬉しい気もするんだけど、魔族がこの世界で暴れる理由がわかんねーな。だって、魔力が全然無いじゃんかよ?」


 ベリアルの言葉でオフィキナリスを襲う動機が無いと伝えたい意図を理解出来た。でも、この世界は魔力が無い意味が分からない。


「魔力はあるだろう。俺達はスキルを使うのに魔力を消費する。そして、空になった魔力を回復する手段は世界にあふれる魔力を体内に取り込んでいると言われている。呼吸をしたり食べ物を食べる事で体内に魔力が溜まるはずだが?」


 人間も魔族も同じ様に魔力を使ってスキルを使うとフリードは認識している。それなら、この世界で休めば魔力が回復するはずだ。


「あぁ、無いってのは完全にゼロって訳じゃねーな。んぁ……あれだな。濃度が違う。ここで一晩休んでも魔力が完全に回復する気はしない。魔界――アスタの魔力濃度と比べたら無いも同然だよこの世界」


 フリードはレオンと目が合った。すると、何か理解したような表情になりレオンが陽気に説明を始める。


「よぉフリード。牢獄国家センターワールドがその名の通り世界の中心付近にあるんだ。んで、お前の居たエデンはかなり東側にある小さな国よ。んで、ジェネラルは正反対の西にあってだな。ま、そういう位置関係なのは分かったな?」


 黙って話を聞いていたアカリもレオンの話を聞いて口を開いた。


「商人さんって基本的に西から東に向かいますよね? 特にルーフェンからが多い気がします」


 ゆびをパチンと鳴らしてレオンはキザっぽくアカリを指さした。


「そう、技術の国ルーフェンでは生活に必要な物や道具を作っている。ちょっとオシャレな椅子があればルーフェンで作ってると思ってくれて良い。ま、都会から田舎に向かって物が流れてるってことよ。フリード、お前は田舎出身で俺様は都会出身なわけさ」


 フリードはレオンの言葉でミナトが食器や宝石を積んでいた事を思い出した。とても親切な商人だったと記憶しているが、フリードが欲しいと思える物は無かった。


「それで、ジェネラルの遥か西に魔界と言われる場所が存在する。その大陸は一応この世界と地続きなんだが、強力な魔物が現れて冒険者が逃げ帰ってくる場所として知られている。そんな場所で稀に魔族が姿を現す事があるんだ。基本は全滅した冒険者が見つかるんだけどな!」


 がははと不謹慎に笑うレオンはそうとう酔っている。


「それで俺様に前衛のフリードで、超広範囲に強いアカリと魔界に詳しい魔族がパーティって訳よ。完璧だろ?」


 理想のメンバーを揃えたと言わんばかりに腕を組みながら頷くレオンにベリアルが割り込む。


「そもそもボスを探してこの世界を飛び回っていただけで、敵討ちなんかに興味はねーよ?」


 泥酔男の口があんぐり大開になった。


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