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冒険者が破壊する薄明の世界  作者: Yuhきりしま
~いずれ拳王となる狂戦士のソロ冒険者は酔っ払い勇者に絡まれて旅に出る~
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吟遊詩人の卵


 三十半ばの筋骨隆々な男――キャンベル率いるセンターワールドの冒険者がゲルマンに到着した。


 突然の緊急信号に総勢三十名の冒険者が目にしたのは破壊の後だった。ゲルマンの玄関口は魔物により壊されているが近くの森は見渡す限り焼け野原となっている。


 エルフの里が開放されておりキャンベルは状況を把握する為に時間を要する。


 緊急のはずだが周りの者から安堵の空気を感じ取り、キャンベルがエルフの長老に話しかけた。


「状況を把握したい」


 長老は周りのエルフに儀式の準備を整える指示を出した。エルフの里を守っていた惑わせる森を展開する必要がある。何故、森が消えたのか原因は不明のままだが時間があればエルフの力で里を隠せる。


 状況も何も長老自身も把握しきれて居ない。何から話そうかと長老が顎に手を当て物思いにふけると大柄な男がのしのしと足音を立てて近づいてきた。


「そちらの大柄な方に聞くと分かりやすいでしょう」


 不本意ながら長老に指をさされてキャンベルの視線を集めた男――盗賊の頭であるヴァン・クーは陽気に近づく。


「このヴァン様に用事かぁ? 何でもいいぜぇ」


 キャンベルは怪しい男を前に眉間にシワを寄せて疑いの目でヴァンを見ながら尋ねた。


「ここで起きた事を教えて欲しい。緊急信号があったんだが――街の者達は落ち着いている」


 パニックになる民の誘導を想定していたキャンベル達からすると不思議でならない。その言葉を聞いてヴァンは意気揚々と口を開いた。


「あぁ、それは大兄貴――勇者レオンの活躍だぜぇ」


 鼻息荒くヴァンはキャンベルにレオンの話を振った。


「その……レオンとかいう人物が解決したと?」

「ほほぉ、勇者レオンをご存知で無い……? 大兄貴……こういうことかぁ」


 ヴァンが意味深な事を呟いて話を続けた。まずは勇者レオンとの出会いを初めに口走る、その為には避けて通れない道筋として可愛いエルフを見かけてヴァン一行は売る為に攫ったと自白した。


 その瞬間、長老は持っていた棒でヴァンの頭をドガンと叩き。牢獄国家センターワールドのキャンベルとしては罪を自白され、自首とも取れる行動に戸惑いを隠せなかった。今すぐ捕まえて牢獄へ叩き込む必要が脳裏を過るもヴァンは話を続ける。


 そこからヴァンはレオンに戦いを挑むも一瞬でボコボコにされるも、次の強敵である大食いで肩を並べて共に同じ敵と戦った友……いや、戦友だと語り。魔物が暴れだした時の話に変わった。


 高台に登り敵を射るレオンがゲルマンの街を守りきったと豪語する。狙った獲物は逃さない百発百中の魔弓は矢の数だけ魔物を殺しエルフの里も纏めて守り通した。


 ヴァンの話が長くて中断するタイミングを失っていたキャンベルはヴァンの語りを無理やり遮り確認をした。


「この惨状は冒険者が暴れた訳でもなく、魔物が襲いかかってきたんだな? そして、そのレオンが魔物を倒してこの街を救ったと」


 ぷしゅーと鼻息荒く想いが伝わって満足したような表情でヴァンが頷いた。


「じゃぁ、その張本人であるレオンは何処に?」


 キャンベルも全てを鵜呑みにするつもりは無いけれど、ヴァンの語った事を信じることにした。何より、エルフの里でセンターワールドとやり取りを行っている長老も頷いているからだ。


 真実を語っている。だったら、その張本人であるレオンと話をする方が精度の高い情報を引き出せるとキャンベルは考えた。


「ちっちっ。甘いな……大兄貴はヴァン・クー様に全てを任せてこの地を去った。戦友、いや。親友であるこのヴァンに彼は頼んだ。勇者パーティを世に広めてくれと! 大兄貴は別れ際に言ったんだそれをアンタにも伝えよう」


 キャンベルはヴァンの言葉で思い出した事がある。


 しばらく前に一人の商人が牢獄国家センターワールドに立ち寄った。その商人が引き連れている冒険者が叫んだ言葉が小さな火種を生む。


 恥ずかしげもなく『俺様と一緒にオフィキナリスの敵を取る冒険者はいねーか?』と言い放った男の名前まではキャンベルも覚えていない。当時は確か王都オフィキナリスが魔物に襲われた話は届いていたが誰も相手にしなかった。


 相手に出来なかったというのが正しいか……とキャンベルは辿り着く。


 前代未聞の王都壊滅事件に対して全ての国が自分達を優先し他国に力を割く余裕は無かった。どの冒険者にも家族がありパーティの生活も掛かっている。それで、世迷い言にしか聞こえない男の言葉を聞く者は居なかった。


 それどころか、オフィキナリスに対する冒涜だと判断され牢獄国家センターワールドを追い出されたと聞いている。


 キャンベルは考えた。もし、その勇者パーティが居なかったら? エルフの里とゲルマンはどうなっていた? 焼き焦げた魔物は判断がつかないがオークに紛れてミノタウロスも数体確認できた。我々三十人でミノタウロスを相手にするとしても同時に精々三体がいいところだ。


 その勇者が居なければゲルマンはオフィキナリスと同じ様に……キャンベルがそんな事を考えていた時にヴァンが声高らかにレオンの言葉を言った。


『俺様がオフィキナリスの敵を取るまで指を咥えて待ってな』


 実績を伴う言葉にキャンベルは自然と笑みが溢れた。あの時は唯の目立ちたがり屋だと思ったが、今は応援さえしたくなる。せめて、後始末くらいは力を添えようと牢獄国家センターワールドから来た約三十人の冒険者は復興作業を手伝った。


【読者へ作者からのお願い】


この小説を読んで


「面白い!、続きが楽しみ!」


と一瞬でも思われたら、↓の★★★★★を押して応援してくださると大変、やる気に繋がります。


よろしくお願いします!

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