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冒険者が破壊する薄明の世界  作者: Yuhきりしま
~いずれ拳王となる狂戦士のソロ冒険者は酔っ払い勇者に絡まれて旅に出る~
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小娘の願い


 盗賊が武器を手に取りゲルマンの入り口で最終防衛ラインを築いている間にアカリはエルフの里を駆け回っていた。


 長老と共に中に入り込んだ魔物を退治して皆を助けている。幸いにもまだゴブリン程度が数匹しか入っておらず、道具を使った人間でも対処できる。体格も小さいのでアカリはシャベルを手にブンブンとゴブリンへ振り回した。


 ガコンとぶつかったゴブリンは体制を崩しアカリから距離を取る。


「はやく逃げて」


 覗き見エルフ三人組がゴブリンから逃げている最中だった。


「ありがとう」

「早く奥の神殿に行こ」

「アカリも逃げよ?」


 長老もエルフの戦士に指示をだして門の方へ向かわせている最中だった。


「私は逃げ遅れた人が居ないか探すから」


 そう三人に伝えて長老と共に行動する。


「アカリも行きなさい」

「でも……」


 長老はアカリを避難させたいが、オークが現れた。ゲルマンの職人が作った家に足を踏み入れ窓ガラスは割れて扉をぶち壊している。作物は踏み荒らされ獲物を探すオークに長老が指示を出した。


「拘束する。その間に頼んだ」


 エルフの里で最強の長老が魔力を込めると植物が地面から溢れ出てオークの足首へ絡みついた。ゆっくりと下半身から上半身へ拘束を強めていく間にエルフの戦士が二人で仕掛けた。


 植物と親和性の高いエルフは決して強くない。殆どが植物を急成長させる力を持っておらず、武器の生成もままならない。


 ゲルマン製の槍を手にエルフがオークへ突き刺した。もう一人は剣を振るってオークに斬りつける。


 しかし、身を守る毛皮は丈夫で刃が通らない。弾かれたエルフ達は何度も武器を振るうも成果は得られず長老の拘束が解けた。


 オークは腕を振りエルフに当てるだけで体を浮かし壁に激突する。


 圧倒的なパワーを誇るオークにエルフだけじゃ、対処しきれない。


「長老下がってくれ」


 一人のエルフが叫ぶと皆の前にでて全力の魔力を込めた。鋭い根っこのような槍が螺旋状に急成長して太い槍となり、オークの腹部目掛けてまっすぐと突き刺された。


 血を吐き蠢いた後にオークは活動を止める。


「早く逃げるんだ」


 オークを倒したのは長老の次に魔力のあるエルフだった。エルフの里を覆い隠す森を作ることが出来ずに長老には成れなかったエルフもオークを倒す事で魔力が尽きる。


 アカリはオークに飛ばされたエルフへ駆け寄ると肩を貸して奥へ避難させた。その時に魔力を込めてエルフの傷を治しながら神殿へ向かった。


 エルフの神殿は高台になっており里を見渡せる。オークが暴れてまた一軒潰れた。あの家はシェリーさんの家でアカリもデザートを良くご馳走になった。次はサボり癖のあるシュランさんの家が襲われた。お酒を飲んで水やりをサボるが気さくに話しかける里の人気者だ。


「里が……壊される」


 アカリの呟きに長老が同じ様に里を見渡す。


「魔物に我らエルフが襲われるか……迷いの森が何故……消えてしまったんだ」


 戦闘能力が高くないエルフは為す術がない。


「長老。このままゲルマンも里も消えちゃうのかな?」

「センターワールドに援軍を頼んでいるはず。それが間に合えば……」


 最速で移動したとしても往復で二時間は掛かる。それまでこの里が形を残ってる保証もない。フリードさんが魔物と戦っているも門から魔物が溢れ出てきている。


「私……行くね」


 そう呟いてアカリはフリードの元へ駆け出した。長老の静止も振り切り駆けるアカリを避難したエルフ達が後ろ姿を見送った。


 矢が止まった理由をアカリは考えながらフリードの元へ走る。先程まで家を壊していた魔物が頭部に矢を受けて意識を失っていた……誰かが里の魔物を射抜いている。


 安全に里を駆けるアカリは額に汗を浮かばせながら呼吸を乱してフリードを見つけた。


 積み上がった魔物は数も数え切れない程に至りフリードは返り血を浴びて悲惨な状態だった。アカリが今まで見たどの冒険者よりも鬼気迫る背中を見て声にならない。


 アカリは初めてミノタウロスという魔物を見た。動きも素早く繰り出される攻撃も早くて何度もフリードに当たりそうになっていた。その攻撃を紙一重で躱して相手を殴り、体制が崩れたら体重を乗せた強力な一撃で相手が動かなくなる。


 アカリの目でもフリードは信じられない強さを誇っていた。


 しかし、相手は門から溢れて埒が明かない。オークやゴブリンも姿を出していたがミノタウロスに近づこうとはしなかった。それどころか、アカリを見つけた魔物がフリードを無視して距離を詰めてくる。


「……ッ」


 迫りくる魔物に対してアカリは目を丸くした。大きな瞳を見開いてその場を動けない。自分よりも、フリードよりも大きいオークが段々と近づく様子をただ、じっと見ていた。


「皆は避難したのか?」


 アカリに気付いたフリードが迫りくるオークを追い、後ろから蹴り飛ばしてアカリに駆け寄っていた。飛ばされたオークはゴブリンを巻き込んでゴロゴロと転がり、ミノタウロスの足元で止まるとグシャ……ミノタウロスは自らの足でオークを踏みつけた。


「は、はい。エルフの神殿に避難してます。里に紛れた魔物も矢で倒されてました」

「そうか。あとは、門をどうにか出来ればいいんだが……」


 アカリの前で深く息を整えてフリードは魔物に対して構えた。狙いは門を壊す事に絞った様子で道中の魔物を蹴散らしながら門へまっすぐと進む。ゴブリンの胸ぐらを掴むとオークへ投げつけ、オークに飛びかかると顔面に蹴りを入れて前に進む。アラクネの糸を避けてミノタウロスを無視して門へ近づく。


 左腕をこれでもかと伸ばして門を狙い殴り壊そうとしたが、ミノタウロスは手短に居たゴブリンを掴んでフリードに投げつけた。腹部に直撃したフリードの勢いが弱まると死角からミノタウロスが拳を放った。


 直撃したフリードは背中から倒れて当たった脇腹を抑えていた。その隙きを逃さないと言わんばかりにミノタウロスがフリードを囲い込む。数は三体で起き上がろうとしたフリードに襲いかかった。


 アカリは孤軍奮闘するその光景をを見ているだけだった。たまたま通りかかり盗賊から救って貰い、急に現れたダンジョンから溢れ出る魔物を抑えてくれている。オークに苦戦するエルフでは、あのミノタウロスには太刀打ち出来なかった。今、皆が生きてるのはフリードが命を張って頑張っているから……果敢に挑む姿があるから。


 その英雄も魔物に押されている。このままじゃ、皆もフリードも死んでしまう。


「死ぬなら……私だけでいいかな」


 アカリはそっと呟き生まれて初めて『()()()』を口に出した。


「あの魔物達を殺せる力を」

「皆を守れる力を」

「私に貸してください」


 ホントウニイイノ?


 アカリは初めてその声を聞いた。そして、力強く頷く。


 ワカッタ。


 その声はアカリがこの世に生まれ落ちて一緒に生きた妖精の声。呪われた()()()()()だった。


【読者へ作者からのお願い】


この小説を読んで


「面白い!、続きが楽しみ!」


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