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冒険者が破壊する薄明の世界  作者: Yuhきりしま
~いずれ拳王となる狂戦士のソロ冒険者は酔っ払い勇者に絡まれて旅に出る~
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頼れるリーダー


 フリードが戦いを開始した直後、お店で休むレオンは水を一口飲んで下品にゲップを溢した。


「うぇー、辛いな。魔物が現れたっぽいし、お前らの武器は一旦返しとくわ」


 そう言って大皿が下げられたテーブルに盗賊の武器をレオンがばらまいた。一応、加勢に行く気はあるが激しく動くと全部出ちまいそうでレオンは極力動きたくなかった。


「魔物が来たぞー」


 とうとうゲルマンにも魔物が姿を現した。移動の早いフェンリルが真っ直ぐ来たのかゲルマンの衛兵が盾を構えて威嚇していた。


「よぉヴァン。この後はお前らをセンターワールドに突き出しておさらばするつもりだったんだけどよぉ」

「兄貴!? そんな殺生な……俺達の仲じゃねぇですかぃ」

「一緒に戦った仲ってのもあるから俺も心苦しい。しかも、この街に魔物が現れたからお前らも戦え」


 レオンが奪った武器を返した理由が分かりヴァンは身が震えた。動きの素早いフェンリルはDランクの冒険者が四人で倒せるレベルである。そのフェンリルと戦えと兄貴が言っている。


 Fランク冒険者だったヴァンは身を震わせながらレオンに尋ねる。


「あれと戦えってことですかい?」


 先程の衛兵が偶然にも重装備で身を守っておりフェンリルが足首に噛みついてぶんぶんと振り回していた。金属の装備があるお陰でダメージは少なそうだが身動きが取れず苦戦している。


「おいおい、こんなに美味しい飯の世話になった街を見捨てるのか? 大丈夫だ安心しろ。噛みつかれて腕を失っても生きてりゃお前の勝ちだ」

「ひぃ、冗談やめてくださいよ兄貴」


怯える盗賊達を見ながらレオンはスキルを使う。


 左手に現れたのは真っ白い弓だった。王都ジェネラルの鍛冶師ドランが作った丈夫だけが取り柄の武器を手に弦を弾く。


 ピンと音を奏でると右手には矢が握られていた。


 フェンリルの脳天目掛けて射ると振り回されていた衛兵が開放される。


「さぁ、元冒険者の意地でも張ってこの街を守りやがれ」


 レオンは店から出て物見櫓を発見するとお腹を抑えながら歩いていった。







 オークの腕から鈍い音が漏れて醜い顔面を歪ませながらうめき声を上げた。フリードの拳から放たれた一撃は既にオークの防御力を遥かに超えて防ぐことさえ出来ない。


 痛みに悶えるオークの顔面に拳を練り込ませて醜い顔を無惨にも歪めた。


 フリードが死屍累々を作り上げているが、ダンジョンからは未だに魔物が溢れ出る。顔面が牛で筋骨隆々の魔物――ミノタウロスや頑丈な甲殻を持つ八本足の魔物――アラクネまで姿を現した。


 今まで戦った経験の無い魔物へ対してフリードに恐怖心は無く。冷静に相手を観察している。ミノタウロスのサイズはオークより小さく武器は持っていない。一歩ずつ進行するミノタウロスの邪魔になっていたオークがミノタウロスに弾かれた。


 圧倒的なパワーを持つミノタウロスがフリードに突っ込んだ。今までフリードがオークに対してやっていたように、爆発的な瞬発力でフリードとの距離を詰めた。一歩動きが遅れたフリードだが、ミノタウロスの振り回した拳に身を屈める事で躱せた。


 しゃがんだ状態で後ろ回し蹴りをミノタウロスの腹に当てて距離を取る。フリードの攻撃は確かに当たったが相手は数メートル後ろに下がるだけで留まった。


 オークよりも背が低いとはいえ、人間の中で大柄なフリードよりは大きく見える。そして、その耐久力とパワーが桁違いに高い。肉体の大きさがそのまま力に繋がると思ったがフリード自身もオークより小柄だが圧倒的な力を持っている事に気づく。


「お前もスキルとか持っているのか?」


 フリードはミノタウロスに話しかけた。今まで魔物に対して話しかけた事は無かったが、ミノタウロスの風貌は頭部が牛なだけで大柄な異種族と言われても違和感は無い。他のエルフやドワーフのように意思疎通が取れる可能性を考えたが、ミノタウロスはうごぉぉぉと鳴くだけでフリードに意思は伝わらなかった。


「顔が牛なだけで俺の言葉は理解することが出来るのか?」


 フリードの問に返答は無く、ミノタウロスは相変わらず距離を詰めて拳をフリードに当てようとした。相手の攻撃に集中してフリードは避けつつも状況を観察する。


 先程までフリードを取り囲むように襲いかかってきていたオークが離れていく。


 ミノタウロスが上位種と言わんばかりに近づく事をやめてゲルマンやエルフの里に向かっていた。目の前にある建物を壊す輩まで視界に映る。住民の避難は済んでいるのか、アカリ達は安全なところに居るのか全く分からない。


 拳に力を入れてミノタウロスの腹目掛けて正拳突きをするも、相手は後ろに勢いよく下がって避けた。オークとは違い相手の攻撃を受ける真似はしない。フリードも極力ダメージは負いたくなかった。相手の数が分からずいつまで戦うか分からない。そんな状況でダメージを貰っては死期が早まってしまう。


 しかし、早くミノタウロスを倒さなければオーク共が街を破壊する。


 焦るフリードは決着を早めようと無理やりミノタウロスへ攻撃を当てる事にした。打つ拳を下がって避けるなら下がれないようにすれば良い。


 今日一番の魔力を足に込めてミノタウロスに近づき左腕を掴んだ。フリードの顔から笑みが溢れ、もう逃げられないぞと力いっぱい顔面目掛けて拳を振り下ろすも空振った。


 気がつくとフリードは地面に叩きつけられていた。何が起きたか理解すると正体はアラクネだった。


 ミノタウロスと同時期に出現した八本足の魔物はフリードに粘着性のある糸を着けて地面に叩き落とした。そして、糸を手繰りフリードを引っ張り込む。


 糸の先はアラクネの足と繋がっており、その足は槍のように尖っていた。


 体制を立て直したフリードが腰に付着した糸を握り締め思いっきり千切った。自ら槍に刺さる事を回避する。


 アラクネが参戦する事でフリードの焦りが増した。時間が掛かれば街が崩壊する……生まれ育った村やオフィキナリスのように。


 引き寄せる事に失敗したアラクネが八本の足を器用に動かして虫のようにフリードへ近づく、それに合わせてミノタウロスも距離を詰めた。槍兵の鋭い一撃と大差ない一撃を躱すも、相手は槍を八本持っている。躱した先から次々と突き立てる槍を避けるもミノタウロスが後ろからフリードを蹴った。


 腕に魔力を込めて鋭い蹴りを防ぎダメージを最小限に抑えるが地面をガラガラと転がり起き上がるとアラクネが飛び掛かった。


 同時に繰り出される八本の槍に対しフリードは魔力を込めて地面に腕を突き刺した。そのまま上に勢いよくぶん投げてアラクネに地面のちゃぶ台を返した。


 そのまま後ろから襲いかかろうとしていたミノタウロスへ正拳突きを当てた。


 勢いよく向かってきていたミノタウロスが避けれる訳も無く地面をバウンドしながら弾き飛ばされる。フリードは振り返りアラクネを見ると地面に槍を止められ体制が崩れていた。両手に込めた魔力をアラクネ目掛けて振り下ろす、一撃、二撃と連続で放つラッシュにアラクネは足を器用に動かし防ぐも、バコベコ重低音が鳴り響く。


 硬い甲殻がボロボロとなり槍は折れ、防げなくなったアラクネは重い一撃を胴体に食らって動かなくなった。


「はぁ……はぁ……クソッ」


 街に向かったオークを対処しなくてはと考えてフリードが振り返るとミノタウロスが起き上がった。


 シュンッ


 風切音をフリードの耳が捉えると白羽の矢がミノタウロスの頭部に突き刺さった。


 シュンッシュンッシュンッシュンッ


 ダメ押しかと更に四本の矢が頭部に次々と突き刺さる。


 新手の敵か焦ったフリードが周りを見渡すとゲルマンにある一番高い物見櫓で手を振る人物を見つけた。


 その後に、エルフの里へ目掛けて矢が放たれる。


「全く……あの男は憎たらしいくらい頼りになるな」


 勇者パーティのリーダーレオンが次々と街に入って暴れる魔物に対して矢を放っていた。


 門からまたミノタウロスが姿を出した。一体、二体と姿を確認したフリードは深い溜息を吐く。


 元々はメアリとパーティを組んで役割はタンクだった。相手の進行を防ぎ相手の攻撃を捌いて味方を守る。そんな役割をフリードは向いていると自身でも思っていた。


 あれから少しは成長した。二年前ならオーク一匹にも苦戦していた自分がAランクの難易度を誇るミノタウロスとBランクのアラクネに対して戦える。魔力も増えたのか切れる素振りは感じられない。


 だったら……そろそろいいんじゃないか?


 タンクだけでは無く、アタッカーとしても役割を担っても。あの頃に憧れたメアリのように……全ての敵を倒して味方の負担を減らしてみよう。


 門を破壊する事を最終目標にフリードはミノタウロスへ単身突っ込んで行った。



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