服を買いに行こう!
都市バゼレにきて、誘拐犯を捕らえた日の翌日俺にはやるべき事があった。
それはアミの服を買ってあげる事だ。
アミの格好はとても酷く、服の所々に穴が空いて汚れまみれの服と呼べるか怪しい格好だった。
だから今日はそんなアミの為に新しくて綺麗な服を買ってあげようと思う。
ついでに俺の服も買えたらと思っている、正直元の世界からスーツ姿ってのもおかしいからな。
そうして俺とアミは昨日手に入れた我が家(ボロボロの小屋)から出て、服屋を探して街を歩いた。
やっぱり俺達は目立つのか道行く先々で色んな人からの視線を浴びた。
しばらく石レンガが敷き詰められた街の大通りを歩いているとそれらしい店を見つけた。
店前のショーウィンドウには明るい色の服が何着か飾られていた。
「だ、大丈夫ですか龍吾郎さん……この店凄く高そう……」
ショーウィンドウの服を見たアミは心配するように聞く。
「大丈夫だ。金なら持ってる。」
アミを落ち着かせるように言う。
実際、昨日の誘拐犯確保の報酬として金貨10枚をもらったから多分金には困らないだろう。
明日からちゃんとギルドで仕事もするし。
そして俺達はその店へと入っていった。
「あらー!いらっしゃいませ。」
店に入ると、明るいオレンジ色の髪の女性店員があいさつをしてくれた。
「あーこの子の服を見繕ってもらいたいんだ出来るか?」
俺は服の事には結構疎いので、ここは店員である彼女に任せた方が良い。
「あら?結構可愛い子じゃない。私、こういう可愛い子見ると仕事魂に火がついちゃう!」
なんだか凄くウキウキな様子で店員はアミに近づいた。
その時、彼女がアミの顔を見ようとしたのかアミの右眼を隠してる前髪に手をかけてめくってしまいアミの赤い眼が出てしまった。
「あら、この子半魔人?」
俺はその言葉に動揺する。
アミがいた村ではアミを半魔人という理由で迫害していたからだ。
「だ、ダメか……?」
俺は焦りながら店員に尋ねた。
しかし、その店員は。
「いえいえ!こんな可愛い子ですもの、そんなどうでもいい事気にしません!!さっ奥で体を測らせてもらいますね」
どうでもいい事、店員から出た言葉に驚いている間に店員はアミを連れて店の奥へと行った。
結構深刻な問題だと思っていたのだが、そういう訳ではないのか?
アミ達が奥に行ってる間、混乱した頭を落ち着かせていた。
「お待たせいたしましたお父さん、ちゃんと可愛く出来ましたよ!」
そうこうしてる間に店員とアミが店の奥から出てきた。
「そうか、どうだっ……た。……ってえ!?」
そこにはさっきまでボロ布を被っていた少女とは別人かに思えるほどの美少女が立っていた。
上は白を基調とした清楚な感じで、ひらひらとしたスカートの部分は紺色を基調としていていいところのお嬢様みたいだった。
「とても……似合ってるぜ。」
あまりにも綺麗になったアミを見て少し照れながらも褒めた。
「あ、ありがとうございます……」
アミも褒められて嬉しいのか、頬を赤く染めながら俺に感謝の言葉を言ってくれた。
よく見るとアミには化粧も施されており、目も肌も口元もさっきのとは格段に変わっていた。
「可愛い子を見るとついここまでしてしまって〜
あっ、一応気になるみたいでしたので片目は隠れるようにしておきました。」
化粧を施したであろう店員は照れながら自慢するかの如く話してきた。
ちゃんと赤い右眼は隠れるように髪を整えてくれていた。
「ありがとうな。それともう何着かこの子の服が欲しいんだが……」
「はい!おまかせください!!」
もう少し服が欲しいと頼もうとした時にはすでに店員はアミの為の服を手に持っており、それからしばらくの時間はアミのファッションショーとなっていた。
時間も過ぎ、結局俺は相当数のアミの服を買っていた。
金額はなんと!金貨5枚という大出費だ。
そんな金額の買い物をした為、今日は俺の服も買う予定だったがそれを断念した。
「お買い上げ、ありがとうございました!」
やり切ったような表情をする店員に店の出入り口付近まで見送られている。
「また用があったらくる。」
流れで結構買わされたとはいえ、ここの服のセンスは高い、また来たいと思える程だった。
「はい、ありがとうございます。娘さんを大切にしてあげてくださいね。」
店員からアミの事を娘と言われて、なんだか少しむず痒くなる。
「俺達……親子に見えるか?」
この店員に俺達がどう見えてるか聞いた。
血の繋がらない赤の他人だけれど、それでも他の人からは俺達の事がどう見えてるのかは気になっていた。
「はい!とっても仲のいい親子に見えます!」
嘘の無いような綺麗な笑顔で店員は答えた。
そうか、少なくともこの店員からはそう見えてるのか。
そして俺とアミはその店から出て並んで歩いた。
少し歩いているとアミの手が俺の手に触れたのを感じた。
「?どうした?」
アミに目線動かしてアミに尋ねる。
「あの……手を繋いでもいいですか?」
アミは俺と手を繋ぎたいと言う。
この子はきっと、親の事が恋しいんだ。
だから俺の事を親だと思って接してくれているのだろうか?
いや、例えそうだとしても……
「あぁ、いいぞ。」
そう言って俺はアミの小さな手をやさしく握った。
なんだか少し心が温かくなる。
2人して少し笑いながら俺とアミはその店から家に帰って行ったのだ。