"説明"
白く……俺達の血でところどころ赤黒くなっている空間に浮かぶ白い光。
それを見た瞬間俺はそれが説明だと気付いた。
「説明……か」
光を見て俺は安堵する。
流石に魔王と2人であの世に行くのは少しばかり気が引ける。
でも説明が……"彼女"が一緒なら俺は前向きな気持ちであの世へと赴ける。
「じゃあ、行こう……」
【それでは"説明"の機能2つの説明をさせていただきます】
俺の言葉を遮るように説明は言葉を発した。
「おい何言って……」
【まず1つは転生者である貴方のサポート……これにより貴方に様々な魔法を使用させてきました】
俺に喋らせる時間を与えないうちに説明は話を続ける。
【そして2つ目は……転生者、悪希龍吾郎の生命が途絶えた時、私の存在と引き換えに貴方の生命を復活させる機能です】
「お前……何を言って……」
俺の混乱をよそに説明の話は止まらなずに続く。
【それではただ今より2つ目の機能を使い悪希龍吾郎を蘇生致します】
待て、こいつは何を言っているんだ?
説明の存在の代わりに俺を復活させる!?だとしたら説明は……消えるって事か?
そんなのはダメだ!だって彼女は!?
「待てよ……」
【それではさようならですね、元気で龍吾……】
「待てよっ!!夕美!!」
今度は俺が話を遮るように説明の……彼女の名を叫んだ。
【……いったいいつから、気付いていたの?」
いつもの説明の機械のような声から聞き覚えのある明るく優しい声へと変わった。
「割と最初の方から……そうなんじゃねぇかなって」
俺は最初の方から説明の正体に心当たりがあった……けれどそんなことは無いと、死んだ彼女とこんな形で再開するだなんて思ってもいなくて……俺は説明の正体について考えるのをやめていた。
「そう……だったんですね。今まで隠しててごめんなさい。
あの日……私が死んだ日、私はまだ龍吾郎さんと一緒にいたいって……そう心から思ったの。
そしたら神様からの贈り物かしら?この世界に来た貴方の手伝いをさせてもらえる事になったの」
彼女は楽しそうに俺に笑いかけるように話す。
話している最中、光の玉が次第に形を変えて、俺の見覚えのある……夕美の姿になっていった。
「俺は……俺は……」
改めて見る彼女の姿に言葉を失う。
今まで極道者だと彼女に明かしてなかった事あの日、俺との約束のせいで死なせてしまった罪悪感が喉の奥で詰まっていた。
「貴方の言いたい事はわかるよ。確かに貴方は私に隠し事をしてたし、あの日私は死んじゃったけど……」
「私は貴方を恨んでいません」
彼女は明るく満面の幸せの表情をして許しをただ彼女を見ていることしか出来ない俺にむけてきた。
その彼女の顔を見た時、俺の中で何かが溢れ出してきた。
「ごめん……ごめん夕美……ずっと、ずっと謝りたかった!嘘もついてきた!あの時、俺が誘ったばかりに君が死んでしまった!!
俺は本当にどうしようもない奴だ……」
その場で膝をついて泣き崩れる。
彼女は俺に許しを与えただからこその涙、その涙の中には罪悪感もあったが、それとは別の想いもあった。
「それでも!俺は今でも君と一緒にいたいと思ってしまっている!!
だから……だから俺は!!」
"君と一緒にあの世へ行く"そう言葉を発しようとした時、彼女は察した様な顔をして口を開いた。
「ダメだよ」
「貴方にはまだやるべき事が残っているでしょ?」
彼女は俺に告げる。
やるべき事……俺にいったい何が出来るって言うんだ……
「あの子……アミのそばにいてあげて」
「アミ……」
夕美から出されたアミの名に俺は反応する。
確かに夕美は説明として俺と共にいた……だからアミの事を知っている。
「私ね……貴方からあの子を見ててあの子の事を娘のように思ってたの、貴方もそれは同じでしょ?」
あぁそうだ、俺はもう既にあの子の事を自分の子供だと思ってるしあの子が幸せになってほしいとも思ってる……だけど俺なんかが……
「俺なんかがあの子と一緒にいていいのかって顔だね」
夕美はそんな俺の思ってる事を見透かしたように話す。
「大丈夫だよ、貴方はちゃんとあの子の父親しているよ。
だから……あの子のそばにいてあげてね」
夕美がそう言った瞬間に俺の彼女との距離が離れていく。
「ま、待ってくれ!夕美!!」
俺は彼女の事を掴もうと手を伸ばす。
けれどその手は彼女へは届かずに段々と彼女が見えなくなっていった。
これは恐らく……さっき夕美が言っていた説明の2つ目の機能、俺の蘇生だ。
けれどそんな事をしたら夕美が……
「あの子を幸せにしてあげて
それが……私から貴方へのお願いだから」
見えなくなりながらも夕美の声が聞こえる。
そして……
「愛してる、龍吾郎さん」
その言葉を最後に俺の意識は遠くなり、最終的には俺の意識が飛んだ。
「…………ん!……さん!」
声が聞こえる。
少女の鳴き声と共に何かを呼んでいる声が。
「お父さんっ!!」
その声で俺の意識は戻り目を開けた。
そこにいたのは目から涙を流し倒れている俺に抱きついているアミだった。
そのアミの姿を見た俺は
まだこの子と一緒にいてもいいのかと
心の中で安心したのだ。




