最終決戦
俺と魔王の拳がそれぞれ顔面にヒット、それが俺と魔王との戦いの開幕だった。
「ぐぅっ!」
「ぬぅぅ!!」
衝撃でふらつきながらもその一撃で互いに確信する、お互いこの空間では魔法が使えない事、そして互いの素手での実力は互角だという事を。
互いに拮抗しているからこそ、俺はこの男には負けるわけにはいかない。
あの子……アミが幸せに過ごせるように!!
「お前にあの子を……渡すかぁぁ!!」
すぐに体制を立て直し魔王の腹部を殴りつける。
「ぐっ……調子に乗るなぁぁ!!」
魔王は腹部を殴られながらも拳を込め俺の脇腹を強打した。
「ごはっ!!」
「我が孫……アミと言ったか、あの子が我の孫として生まれてきたのなら次世代の魔王として育てるのが我の義務であろう!!」
「そんな勝手なもんに娘を巻き込むな──!!!」
相手の言葉に反論を繰り返しながらも男達は拳を振い続ける。
共に互角……故に決着をつけるのはより強い意志を持つ方である!!
「あの子は……もうたくさん辛い思いをしてきた!母親が死んで……それから村の奴等から酷い事をされて来た!!
だからこそ!あの子にはそんなクソみたいな世界よりも友達と楽しく幸せに過ごしてほしいんだっ!!」
「そんな辛い思いをしない世界を創ればよいだろ!!友?そんなもの魔王には必要ない!!」
互いに自分の意見を譲らずに殴り合いは続く。
殴り殴られ、殴られては殴る。
真っ白な空間に2人が殴り合って流れる赤い血が飛び散り残る。
この白かった空間の様子を見ればこの2人がどれほど殴り合っていたかなんて一目でわかる。
互いに譲らない戦い、だがその戦いにも終わりはくるものだ。
魔王の拳が龍吾郎の顔面目掛けて飛んでくる。
「あの娘は我が孫……故に!次期魔王に相応しい!!」
向かってくる拳を龍吾郎はギリギリで躱した。
「あの子は魔王なんかじゃねぇ……可愛くて友達が困っていたら助けてそしてまだ幼い普通の優しい女の子なんだっ!」
魔王の拳を躱した龍吾郎はそのままの勢いで魔王の顔面に拳を直撃させ魔王が後ろへ倒れるように吹っ飛んだ。
「ぐなっ!?」
魔王は情けない声を出しながら大の字になって床?に倒れ込んでいた。
「俺の勝ちだ」
倒れてる魔王に近づいた俺は魔王を見ながら静かに勝ちを宣言する。
「あぁ、そのようだな……我の負けだ」
魔王はあっさりと自分の負けを認めた。
そして魔王は床に倒れている体制からあぐらをかくように座るように体制を変えた。
「…………教えてくれないか?お前と……あの子の事を、我が娘アーミレッタの事を……」
座っている魔王が俺に尋ねた。
彼の姿を見てもう敵意は無くなっていると感じた俺は彼の頼み通り語る事にした……
俺とアミの事を
「そうか……」
俺とアミの事を一通り静かに聞き終わって魔王が口を開いた。
「つまり貴様はアーミレッタの旦那ではない、という事だな」
「いや気にするところそっちかよ!?」
「さて……なら我はもう行くとしよう」
俺のツッコミを無視し、魔王は立ち上がった。
「行くって……どこにだよ?」
「決まっておるだろ?我は負けたのだ、ならば大人しく死の世界へと向かおう」
魔王は俺に背を向けて歩き出す。
そうかこれから俺も魔王もとりあえずは同じところへと行く事になるのか……
まぁ魔王が復活しないのであれば俺も安心して逝けるというものだ。
「じゃあ俺も行くか……」
俺も魔王と共に行こうとした……が
「何を言っておる、貴様はとりあえず後ろにいる者と話すがいい。ではな……」
魔王は俺の方を振り返りそう言ってはまた歩いて姿が見えなくなった。
後ろ……?俺は魔王の言葉を聞いて後ろを振り返った。
「あぁ……」
後ろを振り返ってみるとそこには青白い光が浮いていた、それを見た瞬間その光の正体に気付いた。
「説明……か」
そこにいたのはこの世界に来てから俺を支え続けてくれた"説明"だった。




