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魔王と……

 パゼレ内部にて2人の男がいた。

 1人は天上天下唯我独尊を思わせるかのように立ち地面に倒れている男を見下していた。


 彼は魔王、都市内部にてとある魔力を感じた為に魔人達を置いて気配を消しながら1人で攻め込んできていたのだ。

 多くの冒険者は都市の外で魔獣や魔人との戦闘を繰り広げており都市内部にいる者は数少なかった。


 今地面に倒れている男、龍吾郎は自分の娘を見送った為に都市内部にて残っていた1人である。


「くっ……」


 龍吾郎は地面に這いつくばりながらもまだ抵抗の意思をその瞳に宿して立ちあがろうとする。

 

「まだ息があったか……まあいい」


 魔王は立ちあがろうとする龍吾郎を見ながら近づく。


「次こそは楽にしてやろう」


 魔王はそう言い手に魔力を溜める。

 その魔力量に大地が揺れる。これを喰らったらまずいと俺の直感が告げている。


 だから


「説明!頼む!!」


 俺は俺の中にいるもう1人にこの状況の打開策を尋ねる。


【了解しました、転移魔法リーシニングを推奨します。】


 その答えはすぐに出た。

 

「──転移魔法!リーシニング!!」


 俺は迷わずにその魔法を使う、俺が魔法を唱えたと同時に魔王は魔力を発射しており、そのまま俺がいた場所に直撃し大爆発を起こす。


 俺はというとそこから数100メートル程離れた場所に魔法の効果で移動していた。


 この時点で俺と魔王との力の差は歴然……それでも、ここで俺が退いたらアミや他の冒険者達に被害が行く……せめて援軍が来るまで、俺はここで持ち堪えるしかない。

 まったくめんどうで厄介な事になった。



 龍吾郎と魔王が戦闘を行っている一方アミ達は、孤児院の小さい子が近くで鳴り響く爆音に怯えその子達を寮母さんや年長のみんなと共に励ましながら都市から出る為の門まで来ていた。

 あと少しで門……というところでアミの足が止まり龍吾郎と別れた場所の方角に振り返った。


「おいアミ!早く来い!!」


 アミが止まったのを心配して孤児院の少年リアンがアミに声をかける。

 しかしアミはリアンの言葉に振り返らず真っ直ぐ龍吾郎と別れた場所を見ていた。


 まるで何かを察したかのように、それが自分の義理の父親の危険かはたまた……


「……行かなきゃ」


 アミは小声で言うとすぐに自分の向いていた方に向かって走り出す。


「おい、アミ!!」


 リアンは走っていくアミを止めようと叫ぶ、しかしアミに止まる様子は無かった……

 周りの大人達は他の子供を見るのに手一杯でアミが何処かへ走って行ったなんて気付いていない。

 

 どうすれば……

 アミが行ったのは戦いをしている危険な場所、そんなところに自分が行って無事で済む保証はない……

 それでも……俺はアミを……


「しょうがねぇ……」


 アミに叫んでから一瞬止まったリアンはアミを追いかけるように走った。

 胸に秘めた彼女への想いを抱きながら。

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