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クーリッシュの独戦

 都市に入ってきていた魔人1人を片付けたクーリッシュはそのまま壁を越え、私達を置いて戦場へと向かった。

 どうして?私達は貴方の仲間なのに……

 確かにさっきまでの私達は貴方にとってお荷物かもしれない……それでも私達は貴方の仲間なのだから、そばにいさせて……


 そうして私達2人も戦場へと走っていったのだ。



 体がいつも以上に軽い。

 魔力量も普段より比べ物にならないくらい跳ね上がっている。

 まるで体だけが別人かのように戦場を駆ける、魔獣達を殲滅する。


「なんだ!てm……」


 魔獣達の奥にいた魔人と思しき敵が何か言っているのが聞こえたが構わずに首を切断する。


「──1匹目」


 戦場で狩った魔人を記憶する。

 確か情報だと魔人は10引き、さっきまで壁の上にいた魔人の魔力が消えていた。

 恐らくは誰か倒してくれたのだろう。


 そして俺は都市内で1匹、戦場でも1匹の計2匹を狩った。


 ふと都市内に置いて来た2人の事が頭の中に入った、彼女達には俺の勝手で悪いとは思うが戦いに参加してほしくはない。

 さっきだってもしかしたら2人とも死んでいたかもしれない、そう考えるのが恐ろしかった。

 彼女達も冒険者だ、そうは思っても俺の中には彼女達は守りたい人達だと……


 いや、戦闘の最中に考えることではない、俺は意識を再び戦場へと戻す。


 壁の上の魔人と合わせて残る魔人は7匹、そして更に魔王までもが敵だ。

 ユウトと名乗る者から得たこの力……感覚でわかる、この力には時間制限があると。


「──2匹目」


 だからこそ早く魔人を殲滅して魔王を倒さなくては!そう思いながら俺は魔人の頭を貫いた。


 それから……


「──3匹目」


 魔獣を倒しながら魔人を胴から真っ二つに斬る。


「──4匹目……」


 魔人の心臓を剣で貫く。


「──5匹目……6匹目、7匹……目っっ」


 1人、また1人と魔人を素早く殺していく。

 戦闘による魔力の消費が激しい……残るはまだ多く残っている魔獣と魔人1匹と魔王……この状態が続くときに殺さなければ。


 最後の魔人を眼で捉える。

 先程までの俺の戦いを見ていたのか、警戒しているのが見てわかる。

 だがそれでも俺は止まらない、今は止まってる時間が惜しい。


 そして真っ直ぐ最後の魔人へと斬りかかる。

 途中で魔獣達が壁になったがそんなものでは俺は止まらない、全て蹴散らして魔人の元へと辿り着く。


 剣を振りかざし魔人を斬り裂こうとするが、魔人もそんなに簡単にやられるわけにはいかないと俺の攻撃をガードして俺を弾き飛ばした。


「くっっっ!!」


 魔人に弾き飛ばされた俺はすぐに体勢を戻して再び攻撃へ向かおうとする。


 ──がしかし、


 俺の体から突如として力が抜けていった。


「なっ──」


 先程までの素早さは消え、魔力も体から抜け出るのが感じられた。


 そうだ、時間切れだ。

 ユウトからもらった力が消えたのだった。


 しかし体は止まらずに魔人へと進んでいく。


 俺の動きが遅くなった事に気が付いたのか、目の前の魔人は一瞬警戒するがすぐに攻撃を開始する。


 魔人は俺に向かって魔力弾を放つ、さっきまでの素早さに慣れていた俺は急にいつも通りの速さに戻った事に驚きを隠せずに直撃してしまい再び吹き飛ばされる。


「ぐっ……あっ……」


 魔力弾の威力は高く、俺へのダメージは大きかった。

 少しふらつきながらも体を起こして魔人と対峙する。


 不味い……いつもの調子に戻っただけならば魔人を倒す事は多分出来る。

 が、今の俺は魔人の攻撃によりダメージを受けてしまいいつもの調子での戦闘が難しくなっている。


 その状態の俺が目の前の魔人を倒せるか……恐らく厳しいだろう。

 なぜならこの魔人は俺が今まで見てきた中で一番強いと感じた魔人なのだから……


「どうやら、最強モードは終わったみたいだなぁぁ!!」


 魔人は叫びながら俺へ魔力弾を再び放った。

 避けるか……!いやここは戦場、俺が避けたら後ろにいる冒険者に攻撃が行ってしまう……


 俺がここでなんとかするしない……だがいけるか?この体で!?

 クソ……力を手に入れて、調子に乗ってた結果がこれか……2人が傷付くのが嫌だから1人で戦おうとしたが……俺はやっぱり……


 あの2人がいなきゃダメなんだな……


 向かってくる魔力弾にダメ元で抵抗しようと体を動かす、こうなったらヤケだ!


「うぉぉぉぉぉぉ!!!」


 しかし次の瞬間、目の前の魔力弾が弾けて消えた。


「な、何をした!?」


 俺がキョトンとしていると魔力弾を放った魔人がたった今起こった事に対して叫ぶ。


「何って……」


「そりゃぁ……」


 俺の背後から魔人の叫びに応えるかのように2人の声がした。

 その声は俺がよく聞き慣れている声で……


「「大切な仲間を守るためよ!!」」


 そして彼女達は俺の横を通り過ぎて俺の前に立つ。

 俺の仲間、マーヒィとファリアは魔人に向かってそう叫んだのだった。

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