昔の話
アミが孤児院で泊まっている日の夜、俺は1人布団の中で眠りにつこうとしていた。
ひさしぶりに1人の夜、最近はアミがいたせいか何故か寂しく感じてしまう。
そんな寂しい時に思い出してしまう愛していた彼女の事……
彼女と出逢ったのは俺が組に入って間もない頃とある花屋だった。
最初はただ組長に渡す花束を買いに行く程度で立ち寄った。
ただそこで出逢った彼女は店に飾られた花よりも綺麗な人でそこの店員として働いていた。
一目惚れだった。
黒の長く艶のあるストレートな髪、丸く綺麗な瞳、明るく優しい声。
それら全てが俺の心に響いた。
それからというものかなりの頻度でその花屋へ通い花束を買った。
通っていくうちにその人とも話せるようになっていき少しずつだが親しくなっていった。
「なんでよくこの店に通ってお花を買ってくれるんですか?」
ある日彼女が不思議そうに俺に聞いてきた。
貴方がいるから……なんてそんな事俺には言えなくて。
「最近、好きになってるんですよ……花が」
と少し誤魔化しながら返答した。
「そうなんですか!嬉しいです!!」
彼女は顔を輝かせて笑いかけてきてくれた。
「ならもっとお花についてお話がしたいです!」
彼女は嬉しそうに俺に話す。
俺は少し罪悪感が残りながらも彼女の笑顔を見つめていた。
そして俺は……
「あのっ……よければ今度食事にでも……」
勇気を振り絞り彼女を食事に誘った。
誘いを聞いた彼女はキョトンとした顔をした後少し戸惑うような表情をしながら。
「わ、私でよければ……」
俺の誘いを受けてくれたのだ。
そこから少しずつ、何度もプライベートで会うようになりそして遂にとあるレストランで
「俺と付き合ってくれないか?」
俺は遂に彼女告白した。
その時の彼女は少し驚きながらも目線を一回逸らす、そして再び目線を俺の方へ向けて。
「はい、お願いします」
俺の告白を了承してくれた。
それから毎日楽しかった。
組で過ごしながら彼女に会う日々が、組の連中は彼女との事を少しからかいながらも俺のことを応援してくれた。
そんな日々が一年も続き、俺はようやく彼女にプロポーズする事にする。
彼女とは俺が告白したレストランで現地集合としており俺は組長に呼ばれていた。
「お前、プロポーズするらしいな?」
さっそく組長は今日の事を聞いてくる。
「はい」
「それでお前、この組の事を話したのか?」
俺が返事をした後組長はまた質問をしてきた。
俺はその問いに返す事が出来なかった。
彼女にはまだ組の事を話してはいない。
怖かったのだ、この事を話して彼女に嫌われる事が、そんな臆病な気持ちでいたら組長が。
「とりあえず今日言ってやれ、なに大丈夫だろ。だってお前が惚れた女なんだからな」
組長は俺の事を励ますように言ってくれた。
この人の言葉には何故か勇気付けられるものがあった、だから俺は
「わかりました、なんとか頑張ってみます!」
と少し強気に組長に言ってみた。
「そうか、頑張れよ!」
そんな俺に組長は笑いかけてくれる、そうして俺と組長で笑い合ってた時だった。
「大変だ!アニキ!!」
組の若い男が慌てながらやってきた。
「なんだ、今いいところなんだ」
組長が若い者にそう説教をしようとした時だった。
「すみません!それより龍吾郎のアニキ!実は──」
俺はそいつの言葉を聞いて走り出す。
そして……若い者の言ってた場所にやってきて戦慄した……
道路には赤い血が流れていた、轢き逃げだった、轢かれていたのは……俺が指定したレストランに行こうとしていた彼女だった。
俺が来た時にはもう既に彼女の死亡が確認されていた。
犯人は既に警察に捕まっていた、犯人数年前から轢き逃げ、強盗、窃盗、暴行等の犯罪を繰り返していては警察から逃げていた凶悪犯。
名前は豪震柳動という男だった。
報復しようとも既に留置所にいる男には手が出せず奴がそこから出てきてから俺は奴に怒りをぶつけようとしていた……
だがしかし奴は脱獄した。
俺が異世界にくる半年以上も前の事だった。
俺は躍起になって柳動を探した、けれども見つからなかった。
まるでもうこの世界には存在しないかの如く、奴の足取りを掴む事が出来なかった。
俺はその後、彼女……夕美を殺した相手に復讐出来ない虚無感に苛まれ組を辞めてそれから…………
「──ろ!龍吾郎さん!!」
声が聞こえてくる。
「起きろ!龍吾郎さん!!」
大声で俺を呼ぶ声、俺は目を開けた。
どうやらいつの間にか寝てしまっていたようだ。
目を開けたら俺の家にクーリッシュがいた。
「……なんだ?」
少し眠そうにしながらもくに要件を聞く。
「魔王が……復活した!!」
クーリッシュは青ざめた顔でそう俺に伝えたのだ。




