孤児院にて
もうすぐ夕日が沈むであろう時にバレディレッタ一行がは孤児院へとやってきていたのだ。
なんで?と理解出来ない子供達が睨みつけ、ナイヒィールはバレディレッタの前に立っていた。
「気が変わってね、今からこの孤児院を取り壊します」
孤児院建て壊しの件は4日後のはずだった……それなのに、今いきなりこの孤児院を壊すと言うのだ。
「お待ちを!今壊されたら……子供達はいったいどこで過ごせと言うのですか!!」
ナイヒィールはいきなり子供達の住む場所を奪うバレディレッタの行為に怒り彼らの前へと出て怒鳴る。
「別にいいじゃないですか、そんなガキども死んでも問題はないでしょう。」
呆れた、とでも言うかのようにため息混じりでバレディレッタは言い切った。
「さぁさっさとそこを退いてください。邪魔するんだったら武力行使してでも退かしますよ?」
バレディレッタの横にいる男達が剣を鞘から少し出し刀身をチラつかせた。
それを見てナイヒィールは怯み後ろへ足を下がらせる。
「始めなさい」
後ろへ下がったのを見るや否やバレディレッタ達は孤児院の取り壊しにかかろうとしていた。
「やめろ!」
しかしそんな彼らの前に立ちはだかったのは彼らより2回りも小さい少年少女達だった。
「退きなさい、さもなくば無理にでも退かせますよ?」
バレディレッタは再び横にいる男達を前へ出して子供達に対して警告する。
それに対して子供達は……
「退くか……!ここは俺たちの家だ!お前らなんかに好きにさせるか!!」
子供達の先頭に立つリアンはバレディレッタ達に対して強く言う。
しかし……
「グフッ……!」
リアンの腹部に強烈な蹴りが入れられる。
蹴ったのはバレディレッタの隣にいる男、蹴られたことによりリアンは少し後ろへ飛ばされて腹部を抑えてうずくまってしまう。
その様子を見ていた他の子供達は恐怖でその場で立ち尽くしてしまい動かなくなってしまう。
そんな子供達を見たバレディレッタは鼻で笑う。
「もう二度と我々に抵抗出来ないよう1人くらい見せしめにしてもいいですよね?」
バレディレッタはそう言いながら刀を抜き、リアンへと近づいた。
その場にいる者はこれからバレディレッタ何何をするのかを察する。
しかしみんながみんな、恐怖で足がすくんでリアンを助けに行けない……
そんな時、1人の少女がリアンの前に立った。
「おや、貴方は昨日の……」
昨日から孤児院で泊めてもらっていたアミがそこにはいた。
バレディレッタの前にはアミが手を大きく広げリアンを庇うようにして立っていた。
「なんでこんな酷いことするの……?」
アミの体や声は震えていて、怯えているのがわかっていた。
昨日バレディレッタに暴行されアミの中にはいまだに恐怖が残っていた、けれど友達が酷い目に遭っているのに自分だけ関係ないなんて顔は彼女には出来なかったのだ。
「退きなさい」
そんなアミに対して一言冷たく警告するバレディレッタ、しかしアミはガンとして動く様子はなかった。
「そうですか……ならこうです」
バレディレッタは抜いていた刀を振り上げてアミに剣先を向けた。
そしてバレディレッタの刀がアミに向かって振り下ろされた時……
「もうやめてよ!!」
アミが叫んだ、無我夢中になりバレディレッタ達のしている行いに怒りを感じて。
その瞬間だった、突如としてアミの周りに魔力が放出された。
その事にアミは気付いていなかった。
ナイヒィールやリアンなどといった孤児院の人達は魔力が発せられた事による影響どころか魔力が発せられた事自体気が付かなかった。
しかしバレディレッタやその周りの男達はアミの魔力に浴びた。
その瞬間だった彼らには得体の知れない悪寒が走った。
ある者は気絶し、ある者は腰が抜けその場に倒れ込んだ。
バレディレッタも刀を振り下ろす事が出来ず後ろへとよろめく。
「な、なんだ貴様……!」
体のバランスを取り戻しバレディレッタはアミに対して恐怖と嫌悪の眼差しを向けた。
何が起こったのか自分ではわからないアミはいきなり向けられたその視線に戸惑いを隠せないでいた。
バレディレッタはゆっくりと足を前に進ませアミの前まで進み再び刀を振り上げた。
「貴様のような……貴様のような……貴様のような危険な奴は生かしてはおけぬ!!死ね!」
バレディレッタはそう叫びアミに向かって再び刀が振り下ろした。
アミはバレディレッタの叫びで萎縮してしまい動けず刀が自分に振り下ろされるのをただ見ていることしか出来なかった……
「おい」
バレディレッタの刀が謎の声がしたと同時に弾かれアミは助かった。
「お前子供に対してそれはダメだろ」
アミは自分を助けてくれた人物を見た。
その人物はバレディレッタに対して冷静に諭した。
「なっ……貴様は!!」
バレディレッタが現れた人物を見て驚く、アミもその人物を知っていた。
「君に怪我があったら龍吾郎さんに向ける顔がないからな。」
その人はアミに優しく話してバレディレッタを見た。
「そうだ!俺はクーリッシュだ!!」
そうアミを助けてくれた男……それはクーリッシュだったのだ。
「冒険者の……なぜ貴様がここに!!」
現れたクーリッシュに対してバレディレッタはそう問いただした。
「昨日この孤児院の事をたまたま聞いてな、嫌な予感がしたから手助けに来た……訳だが……」
クーリッシュは唐突にバレディレッタの後ろの方を向いた。
「どうやらその必要はないらしい」
クーリッシュはバレディレッタの後ろを見て笑いながらそういった。
疑問に思っていたバレディレッタだが後ろから魔力が発せられ殺意を感じ後ろを振り向いた。
アミもバレディレッタの後ろにいる存在に気付いて希望に顔を輝かせた。
そこにいたのは昨日の夕方王都に旅立ったはずの龍吾郎と友達のリリーだった。




