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孤児院の危機

 時は遡り昼過ぎ。

 アミはいつもと同じように孤児院の子供達と元気に遊んでいた。


 しかしそんな時孤児院にとある男が護衛をつけながらやってきた、その男はこのパゼレの領主でもあるバレディレッタ・ラークである。

 

「なにかご用ですか?」


 寮母さんが孤児院の玄関でバレディレッタを迎えて尋ねる。

 今まで一切孤児院へ顔を出さなかったその領主に対して寮母は不信感を覚えていた。


「まずは中に入らせてもらおう、ここの汚らしいガキどもと同じ場所にはいたくないのでね」


 バレディレッタは嘲笑うかの如く孤児院の子供達を侮辱する。

 それを聞いた彼の護衛は何がおかしいのか笑っていたのだ。


 相手が相手、この孤児院の為に寮母は子供達を侮辱した事に対する怒りをなんとか抑えながらもバレディレッタ一行を孤児院の奥の応接室へと案内した。


「それでは単刀直入にいいますよナイヒィール・ヴェネツェさん、5日後この孤児院の取り壊しが決まりました」


 席に着くなりバレディレッタは孤児院の取り壊しの決定を告げた。


「なっっ……何故です!?それにいくらなんでも急すぎます!!」


 あまりの理不尽さにナイヒィール寮母がバレディレッタに抗議する。


「私共も誠に残念ですが……新たな国王様よりいただいたご命令ですので」


──


「ちょっと待った!新たな国王が孤児院を潰せって言ってきたのか!?」


 ナイヒィールの回想に割り込みながら強く尋ねた。

 俺の知っている今の国王であるガーラ、ビィアル、リリーがいきなりそんなことをするようには思えなかったのだ。

 

「……すまん、邪魔した。続きを言ってくれ」


 しかし今そんなことを言っても意味がないと冷静になり、ナイヒィールに続きを言ってくれるように頼んだ。


「わかりました」


──


「そんな……」


 その言葉に戸惑いを隠せないナイヒィールにバレディレッタはさらに追い打ちをかけた。


「つまりこれを無視するは、国王様の意思を無視するということ……わかりますね?」


 バレディレッタは柔らかい口調で話す、しかしその話の内容は国王を盾にこちらを脅しているのと変わらない内容だった。


 ナイヒィールがその話に怖気付いている時、突然応接室の扉が開いた。


「リリー達がそんな事するわけない!!」


 扉を開けて部屋に入ってきたのは、部屋の外で孤児院の子供達と話を聞いていたアミだった。


「おや?誰ですかあなたは」


 見下すようにバレディレッタはアミを見る。


「私はリリーの……国王の友達!」


 バレディレッタの鋭い視線に怖気付きながらもそれでも前へ足を踏み出して胸を張ってアミは言った。


「ほう、そうですか……」


 バレディレッタは立ち上がりアミへと近づいた。

 段々と近づいてくるバレディレッタにアミは恐怖を覚えるがそれでも引き下がろうとはしなかった。

 そんなアミにバレディレッタは笑顔を見せた。


 次の瞬間にはバレディレッタの右手がアミの頬を叩き、叩かれた衝撃でアミは地面から足が離れて飛ばされて床に倒れる。


「アミ!!」


 その場にいたリアンがすぐに倒れたアミの元へと駆け寄る、その時にはもうすでにアミは気絶していたのだ。


「まったく、あなたのような薄汚いガキが国王様の友達など片腹痛い!」


 倒れたアミを見下しながらバレディレッタは怒るように叫んだ。


「それでは今日のところは帰らせてもらいます、5日後……わかっていますよね?」


 ナイヒィールに念を押すように言い、バレディレッタ達は孤児院を去っていったのだ。


──


「以上が今日起こった出来事です」


 俺はナイヒィールさんからその話を聞き怒りと共に疑問を感じた。

 それはアミと同じような疑問、リリーやビィアルやガーラがそのような蛮行を行うとは到底信じられなかった。


 だとしたら……もしかして。

 確かめないといけない、今の国王である3人に会い、本当に孤児院を解体するなんて指示を出したのかを。


 しかしそうなると問題は時間である。

 バレディレッタが指定したのは5日……その間に王都へ行き、リリー達から話を聞き帰ってくるなんてそうそう出来ない。


 けれど俺の魔法スピード等を使えばなんとか間に合う。


 間に合うのだが……俺には懸念点があった。

 それはアミである。


 この方法なら期限には間に合う、しかし間に合わせるとなるとかなりの速度になり衝撃も激しい事になるだろう。

 俺自身は守れるだろうが、アミを連れて行くとしてその衝撃からアミのことを守ることが出来ない。


 かといってここに置いて行くのは不安になってしまうのだ、今日はアミをここに残してしまったせいでこんな事になってしまった。

 だからまたアミを置いて行く事は俺には……


「お父……さん」


 弱気になっているとアミか目を覚まして俺を呼んだ。


「「アミ!!」」


 俺やその場にいた子供達がアミが目を覚ました事に気がついてすぐにアミに呼びかける。


「行って……」


 アミは俺の顔を見るなりいきなり小さい声でそう言った。


「ど、どこへ……?」


 アミの言葉の意味を理解はしているが、アミを心配させまいと理解出来ない風を装い俺は聞く。


「考えてる事わかるよ、……私この孤児院が好きなのだから……お願い、私は大丈夫だから」


 アミはまっすぐに俺の目を見つめてくる。

 まだバレディレッタにぶたれた痛みが引いていないだろうに、それでもアミは友達の為にアミなりに戦おうとしているのだ。


 それを踏みいじるわけにはいかない。


「わかった、だけど無茶はするなよ」


 俺はアミの提案を受けた。


「それじゃあ、少しの間アミの事を任せます」


 ナイヒィールさんに向かってアミを任せるという事を告げる。


「えぇ、わかりました」


 ナイヒィールさんはその事を快く了承してくれた。

 そんな時、リアンが俺の前へと姿を出した。


「俺もアミの事を守るよ」


 彼はアミのように真っ直ぐ俺を見たアミを守る事を俺に誓った。

 まったく子供ってのはこんなにも純粋で真っ直ぐなのかと俺は少し参ってしまった。


「あぁ頼む、それじゃ行ってくる!!──スピード」


 俺はリアンにそう言うと、魔法を使い王都へと走って行った。

 早くこの事をガーラ達に伝えて状況の確認をとらねば、そう思いもうじき夜になるのにも関わらず王都へと向かったのだ。


 その事に夢中になっていた俺は隠れて俺たちの話を聞いていた人に気づけなかった。



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