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秋の訪れ

 暑い夏の季節から紅葉が綺麗に生い茂る秋へと変わった。

 森も緑から赤く変わりその森の中を俺は1人歩いていた。


 今回は採取の仕事、この森にて採れるダイキノコを3つ採取するというのが今日の仕事だった。

 ダイキノコがどのような物かはわからないがどうやらかなり味の良く値の張る食材らしい。


 そして今回はそのダイキノコを納品数以上集めたら、納品数から溢れた分まで持って帰っていいとかなり太っ腹な仕事である。


 今日は1人だ、アミはというと今頃孤児院の子供達に誘われて一緒に楽しく遊んでいるはずだろう。

 アミの分までダイキノコを採り今日はキノコパーティとでも洒落込もうか!


 森の奥へと進んでいく、木々が段々と多くなっていく。

 そしてついに求めていたダイキノコが姿を現せたのだ。


「でけぇ…………」


 ダイキノコのその巨大さを見て驚愕する。

 なんとこのキノコ、目測だが3m……いやそれ以上かも知れないほどの大きさなのだ。

 太さもかなりしっかりしている、これ3つも持ち帰れるかな……?


 少し不安になりながらも目の前にあるダイキノコの採取に取り掛かろうとしたその時だった。


「〜〜〜」


 ダイキノコから何か呻き声が聞こえてきた。

 いったいなんなのかと思ったら……なんと目の前のダイキノコがゆっくりと動き始めた。


 上下に揺れながら右方向へと回転していく。  

 そして……


 俺の知っているキノコにはまず無い顔がダイキノコにはあったのだ。

 ダイキノコの顔におどろいていると、ダイキノコの側面と下面から手足のような物が生えてきたのだ。


 そうダイキノコはただのキノコでは無い、魔獣の一種なのだ。

 この依頼は採取ではなく、採取兼討伐の仕事だったのだ。


「嘘だろ……!」


 ダイキノコが驚く俺に向かい右の手を振り下ろして攻撃してきた。


 その攻撃を躱して少しばかりダイキノコから距離を離す。

 ダイキノコの俺へ向けた手は空振り地面へと振り下ろされて小さいクレーターが出来上がる。


 いきなりキノコが動いて殴りの威力もそこそこあるのには驚いたが、しかき動きが遅い。

 

「──風魔法ストーム!!」 


 風の魔法をダイキノコへと放つ。

 風の刃がダイキノコを襲い。


「グオオオオオオ!!」


 風の刃がダイキノコに直撃しダイキノコからはデカい呻き声が聞こえ体のバランスを崩してその場に尻餅をつくかのような体制になる。


 魔法1発であのダメージ、どうやら耐久性もそこまで無いようだ。

 ならば後は押し切るのみ!


「──ストーム!ストーム!!」


 風魔法2連発を放ちそのままダイキノコへと直撃し、辺り一帯に砂埃が舞った。

 砂埃が晴れ、後に残っているのは魔法により倒されたダイキノコの体だけであった。


 とりあえず1つ目!

 この調子でどんどん行こう!

 と息巻いた時だった……


 馬鹿でかい地鳴りが起きる。


 なんだ?まさかクラーケンの時と同じような物か?と次の瞬間まで思っていた……


 しかし実際は……


 ドドドドドド!!!


 仲間をやられた怒りか無数のダイキノコが俺目掛けて走っていたのだ。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 あまりの迫力に恐怖を感じてその場から逃げ出した。

 しかしダイキノコ達は俺を追って来た。


「─ストーム!ストーム!ストーム!!」

 

 逃げながらも魔法をダイキノコ達に向けて放ち続ける。

 ダイキノコ達との追いかけっこは数時間も続いた。


「はぁ、はぁ、はぁ……」


 赤い夕焼けを背に俺は都市バゼレへと帰還する。

 背中にはなんとか逃げ切りながら倒した4つのダイキノコを背負っていた。


 後はこれを納品して残ったのをもらって今日はキノコパーティにでもしようか、アミは喜んでくれるだろうか?


 疲労で足をふらつかせながら龍吾郎はギルドへと向かいダイキノコ3つの納品し、報酬を受け取って残ったダイキノコを持ちながら帰路へと着く。


 ダイキノコ1つでも50キロくらいの重量があり、風魔法やら肉体強化魔法を使っていても4つ運ぶのにはかなり苦労した。


 そんなことを考えていると家が近くなって来た、日も落ち始め辺りは少しずつ暗くなっていってる。

 アミはもう帰って来ているであろうか?


「アミの父さん!!」


 家を目前として背後から声をかけられた。

 この声……確か孤児院にいるアミと仲の良い少年、名前はリアンと言ったか。

 

「ん?どうし…………た?」


 俺はリアンの呼びかけに応えるように後ろを振り返る、しかしそこで俺が見たのは……

 リアンと他の子供達に支えられていて気絶している状態のアミだった。

 頬は赤く腫れているのがわかった。


「なに……が?」


 言葉を詰まらせながら俺は子供達に聞く。

 アミをこんな目に遭わされた、という怒りはある。

 しかしアミをこんな目に遭わせたのは彼らではない、彼らからはそういった暴力的な雰囲気を感じなかったからだ。

 なら誰が……?


「その事については私達から話しましょう」


 そうして子供達の後ろの方から孤児院の寮母さんが出てくる。


「アミさんにこんな事をしたのは……バゼレの領主バレディレッタ・ラークです」


 そして俺は寮母さんからことの顛末を知らされる事になった。

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