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王都編【16】

 ハーゲルンが魔人へと変貌する。

 俺の胴くらいはある赤黒い両手足、上半身の服が破けバキバキになった腹筋が姿を見せていた。

 人が魔人になるなんて、この世界に来てから日が浅い龍吾郎には理解の及ばないところである。

 

 けれどもハーゲルンが物凄いパワーアップを果たしたのはそのハーゲルンから溢れ出んばかりの魔力が物語っていた。


 直感的に感じ取った強さはこの前戦ったエスカールをゆうに超える程だった。

 瞬間龍吾郎に緊張が走る、先日苦戦した奴よりさらに強い奴が相手になる。

 一瞬の緊張を許さない空気……先に動いたのはハーゲルンだった。


 その巨大な体とは反して高速で龍吾郎への詰め寄り拳を振るうハーゲルン。


「──!!シールド!!!」


 龍吾郎もそれを即座に察知して魔法で防ごうとする。

 ハーゲルンの拳と龍吾郎の魔法の盾がぶつかり合い、バリバリッ!と音を立てひび割れてハーゲルンの拳によって盾は砕かれそのまま龍吾郎の体を捉えた。


 その衝撃により龍吾郎の体は吹き飛ぶ……が、ハーゲルンはすぐさま吹き飛ぶ龍吾郎の足を掴み勢いに任せて地面に何度も叩きつける。


「ッッ!!このっ──!!ファイア!!」


 龍吾郎はやられながらも魔法をハーゲルンへと繰り出した。

 しかしハーゲルンにはダメージか入っていない様子でハーゲルンは足から手を離して龍吾郎を吹き飛ばす。


 投げ飛ばされ家屋の壁にぶつかりなんとか止まることが出来た龍吾郎、しかしハーゲルンはまだ自分を狙ってこちらへと向かってくる。


 だがまだ時間はある。

 俺は魔力を溜めた……あの魔法を使うために。


 しばらくしてハーゲルンが俺の元へやってくる。

 大丈夫だ、ちょうど魔力を溜め切ったところだ!


「──上級炎魔法!ブラスト……バーン!!」


 エスカールに対してトドメを刺した最大の魔法、それをハーゲルンに向けて放つ。

 極大な炎の塊がハーゲルンを襲い全身に炎が回る。


 燃え盛るハーゲルン、これなら……

 龍吾郎は勝ちを確信していた。


「甘いっっ!!」


 しかしそんな希望もすぐに消えた。

 ハーゲルンはダメージこそは負ってはいたが倒れるには至っていなかった……


 龍吾郎は絶望した……今、自分が放てる最大の魔法をハーゲルンにぶつけた。 

 それでも勝てなかった……そんな相手に俺は……


 龍吾郎が諦めかけていたその時だった。


「──お父さーーん!!」


 遠くで確かにアミの声が聞こえたのだ。

 必死に何かを訴えかけている声、アミの身に何かが起きているのだ。

 

 そうだ……俺にはまだ守らないといけない人がいたんだ……

 目を覚ませ、ここで諦めたらあの子を救えない。

 だから俺は今ここでコイツを倒してアミを助けに行く!!


 迫ってきているハーゲルン、あの魔法単品では勝てなかった化け物……だったら。


「説明……頼めるか?」


【はい……ですが……】


 俺の頼みをすぐに察知した説明は心配そうな声色で語りかけてくる。


「大丈夫だ、頼む」


 俺はその心配を振り払う。


「何ごちゃごちゃ言ってるんだ!!」


 ハーゲルンは叫び、俺へと入ってくる。

 心を落ち着かせろ……ここで失敗は許されない、この一撃で決めろ!!


「──上級炎魔法ブラストバーン……」


 俺はまたさっきの魔法を展開する。


「はっ!それだけじゃ俺は倒せないぜ!!」


 意気揚々と飛び込んでくるハーゲルン、そして俺は……


「+上級風魔法ストームブースト!!」


 もう一つ、最大魔法を使用した。

 最大魔法の同時使用、魔力がほとんど取られ体への疲労も半端じゃない。


 それでも俺は……


「──最大爆炎魔法エクスプロージョン」


 炎と風、その2つの魔法を合わせた。

 奇跡的な組み合わせ、風により炎の勢いか莫大に上がる。


「…………なんだよ、その魔法!!」


 その光景を目の当たりにしたハーゲルンは初めて取り乱した。


「喰らえっっ!!」


 先程の炎の塊の何倍もある炎をハーゲルンへとぶつけた。


「がぁぁぁぁわぁぁぁぁぁ!!!」


 炎に包まれたハーゲルンは炎の中で絶叫をあげる。

 おそらくこれでハーゲルンは倒せる、だから俺のするべき事は!!


「──フロート!!」


 残り僅かな魔力を振り絞り速度上昇の魔法を発動させる。

 そして俺はアミの声がした王城へと走っていった。

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