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王都編【12】

 ユザはガーラの首元目掛けてユザの武器である蛇腹剣を飛ばしていたのだ。

 アーサーがいち早く殺気に気付いていたから防げていたが、もし防げていなかったら今頃ガーラの命はなかった。このような事は攻撃は王女の護衛をする者として絶対にあってはならない行為である。


「お前、なんの真似だっ!」


 アーサーはユザの行為に激怒して怒鳴る。


「……ねえユザ、何してるの……?」


 ユザの後ろから人影が出てきた。

 出てきたのは怯えた顔をしたビィアル、この状況を整理出来てない為かアーサーとユザとガーラの顔に何度も視線を移した。


「何って……お嬢様、貴方を王にするんですよ」


 ユザはビィアルに対して紳士的な態度をとりながらそう説明をした。


「王って……それでなんでガーラ姉様に武器を向けているの!?」


 ビィアルは怯えながらユザに問いただす、しかしそのビィアルの言葉を聞いたユザは笑いながら……


「なぜってそんなの決まっているでしょう!

邪魔なんですよ、ガーラ様は!!」


 ユザはガーラに指を指してそう叫ぶ。

 今まで聞いたこともない声に怯えるビィアル。


「ガーラ様は自分の従者以外には気を許さない……それが妹の護衛の私ですらね。

だが、私は……我々は!どうしても国王の権力を手に入れたかった!!」


 ユザは堂々と両手を広げながら声高らかに語る。


「だからこそ貴方を利用させてもらうんですよ、ビィアル様。」


「えっ……?」


 今まで信じていたユザの言葉に動揺するビィアル。


「リリーはまだ若く、ガーラは聡明、ならば頭の悪く扱い易いビィアル様、そう貴方のような馬鹿を使うのが簡単だったんですよ。」


 ユザはビィアルに対しての本心を嘲笑うかのように打ち明けた。


 その言葉を聞いたビィアルは少し体が固まる、数秒体をこわばらせた後……


「そ、それじゃあ……昨日私を助けてくれた……のは?」


 声は震え、恐怖ォ浮かべている瞳でビィアルはユザに問いかける。


「そんなの、仕込みに決まってるじゃないか鐘が鳴るタイミングで仲間が矢を撃った。そんな事もわからないなんてやっぱり能無しですね。」


  昨日の襲撃事件のこと、ビィアルに対して放たれた矢をユザは受け止めて助けた。

 それすらもユザ達の計画の一端だった、そうユザは語ったのだ。


「お前っ……!!」


 ガーラと共にユザの話を聞いていたアーサーはユザに対して怒りの感情をあらわにする。


「おっと動かないでもらえるかな?

一応この女は次期国王として生かしておかなきゃなんだけど……まあそれ以外ならなんでもしていいんだよっっね!!」


 ユザは怯えているビィアルに近づいてビィアルの腹部をおもいっきり蹴飛ばした。


「ごふっ……」


 腹部を蹴り飛ばされたビィアルの体は少し浮き直ぐに地面と衝突した。

 ビィアルは蹴られた腹部を抑えながら蹲っていた。


「ビィアル!!」


 ガーラはビィアルがユザによって蹴られたのを見て、ビィアルを心配する様に叫ぶ。


 しかし、ユザはさらに蹲っているビィアルの腰を足で踏み付けた。


「ゴハッッ……!」


「てめぇユザ!その足を退けろ!!」


 ユザの行為に怒り、そのまま攻撃しようとするアーサー。


「おっと他人を気にしてていいんですか?」


 ユザが忠告した、そして次の瞬間には周りから数多の魔獣がいる事に気がついた。

 周りは暗く、そして今魔獣達も気配を消していたがため認識する事が出来なかった。


「さてと、君達2人にはこの魔獣達のエサになってもらうよ。」


 ユザはきっちりとアーサーとガーラの2人を殺すことを明確に話す。

 魔獣達もアーサーとガーラを囲むように迫ってくる。


 魔獣の数は20……いや30くらいだろうか。

 アーサー1人では無謀な数、それに今はガーラを守るという重大な使命もある。

 ガーラを庇うようにして魔獣達との距離を測る。


 そして一斉に魔獣達は2人に向かって襲いかかってきた。

 ガーラにくる魔獣に攻撃をするも、攻撃した隙に別の魔獣がアーサーに襲いかかり左腕を魔獣の爪で切り裂かれる。


 なんとかガーラには手を出させないようにするアーサー、しかし人1人守っている状態でこの状況が打開出来るはずもなく、アーサーは一つ、また一つと魔獣による傷が増えていく。


「アーサー!!」


 戦闘能力もないガーラはアーサーが傷ついていくことをただ見てることしか出来ない。

 ビィアルもまた、ユザに踏みつけられながらこの光景を見ることしか出来なかったのだ。

 

 アーサーの体中には魔獣による無数のきずか付けられていた、出血も多く立っているのがやっとの状態。

 

 しかし魔獣達は2人から突如として離れていった。

 なぜ……?そう思った3人だが理由は一瞬で理解出来た。


 他の魔獣とは比べ物にならない程の巨大な魔獣がアーサーの前に現れた。


 ──これは死んだ。


 アーサーの脳裏に死が過ぎる。

 そしてアーサーはガーラの方を振り返った。


「いままでありがとうございました。貴方と出会えて本当によかったです。」


 アーサーはガーラに笑いかける、それは死を悟った者の顔だった。


「さぁて、殺せ」


 無慈悲にユザは大型の魔獣に命令を下す。

 魔獣はその命令に従うようにアーサーとガーラへと近づいていった。


「お願いやめて!!!」


 ユザに踏まれながらもビィアルはユザに2人を魔獣に襲わせるのをやめさせるように訴えかける。


「うるさいですよ!今いいところなんですから!!!」


 ユザはビィアルの言葉を一蹴する。

 ただそこにはこれから人が目の前で死ぬというのに子供のようにはしゃいでいる男の姿しかなかった。


 そして巨獣が2人に近づく。


 ガーラも自分の行く末を悟り、アーサーに寄り添う。

 巨獣は大きく口を開けて2人を捕食しようと飛び込んだ。

 2人はこのままこの巨獣に食される……


 ──はずだった。


 アーサーの横を何かが駆け抜けた。


 次の瞬間にはアーサーとガーラを襲おうとした巨獣のど真ん中に一筋の線が通り、巨獣はその線を境目にして真っ二つに切断された。


 そしてアーサーの目線の先にはこの巨獣を真っ二つにしたであろう男が立っていた。


「キャンセル料くらいの仕事をしようと思って来たけど、思ったより大変なことになってるな。」


 男はそう呟く。


「な、何者だっ!?」


 予想外の展開にユザは焦った様子で男に問いかける。


「俺か?……いや俺たちは!!」


 男がユザの問いに応えようとした時、2人の女性が空から降ってきた。


「俺たちは都市バゼレから来た冒険者!

そっちの2人はマーヒィとファリア

そして俺の名は……クーリッシュだ!!」


 男は堂々と名乗りを上げた。

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