王都編【8】
王城の一室、国王が玉座に座るこの部屋で俺たちは国王からとんでもない事を聞かされた。
国王の外観は口の周りに白い髭を生やしたまるで老人のような見た目だ。
老人と言っても体つきはガッカリとしている。
それよりあの見た目でリリー達の親!?
「王位継承はなんとしてでも遂行せよ、中止は許されぬ。」
国王であるバノファは自分の子供であるガーラが王位継承による影響で危険な目に遭ったのにも関わらず、王位継承を続ける意思を見せた。
「ですが……!王!!ガーラ様にも危険が迫っておりました!!ビィアル様やリリー様にも危害が及ぶかもしれませぬ!!」
王の近くにいた家臣の1人が王に直接異議を申し立てた。
「ならば危害が及ばぬようにお主らが尽力すればいいではないか。とにかく、明日の王位継承は必ず成功させねばならない。」
王は家臣の忠告を無視し、王位継承を続けようと考えていた。
確かに俺たちが完全な警備で王女達を守れればそれに越した事はないのだが。
この王はどうしてそこまで自分の子供が危険に晒されたとしても王位継承をしようとするのか?
そう俺が考えている瞬間、鐘の音が聞こえた。
鐘の音は大きく、この部屋にいる者全てに聞こえていた。
そしてその時だった……
突如としてこの部屋のガラスが割れる音が聞こえ、先程見た青い矢がビィアルに向かって飛んできているのが見えた。
俺は咄嗟にビィアルを守ろうと動いたが、俺がビィアルの元に着く前にはビィアルの執事であるユザが素手で青い矢を受け止めたのだ。
「大丈夫ですか?ビィアルお嬢様」
余裕そうな表情を見せながらユザかビィアルの安否を聞いた。
安否を聞いている最中にも青い矢は俺の時と同様に消えた。
「え、ええ……」
突然のことで状況が理解出来ていない状態でビィアルは答える。
「何をしている!賊をひっ捕らえよ!!」
この場にいた者も状況を理解するのに時間がかかったが、部屋にいる兵士の1人がそう大声で指示を出し、数名の兵士が部屋から出て行った。
部屋に残っている人達も王女が狙われたという事実に動揺が隠せなく、部屋中がざわつき出す。
「王!やはり王位継承は中止になさった方がいいかと!!」
部屋にいる人が声を上げる。
「ならぬ、この王位継承はこの国にとっても重大な儀式である。これを中止しては決してならぬ。」
しかし国王はその声を否定する。
流石にこの国にの王って事で遠慮していた俺だが、ここまで来ると何かこの王に言ってやりたくなった。
「アンタ、自分の娘がどうなってもいいって言うのか?」
王の前へと出る。
周りが俺のことを見ている、そりゃそうだよくわからない男が王の意見に反対したのだから。
「ほう、おぬしは?」
王は俺を認識して尋ねる。
「俺は悪希 龍吾郎。アンタの娘のリリー様の護衛だよ。」
俺は王の目を真っ直ぐ見ながら名乗った。
「そうか、なら護衛を頼むぞ。下がって良い。」
しかし王はそれだけしか言わなかった。
「おい!俺はそんな話をしに来た訳じゃねぇ!アンタもし明日の王位継承で娘に何かあったら……」
「その時はおぬしがリリーを護れば良いではないか。
話はここまでじゃ、おぬしが下がらぬのならワシが下がろう。」
そう話したのちに王は立ち上がり俺の横を通って部屋から出ようとした。
そして王が俺の横を通る瞬間……
「娘を……護ってくれ!!」
王が小さく俺に話す。
その後何もなかったかのように王は部屋から出て行った。




