王都編【6】
「やっぱり、わたくしなんかが次期国王だなんて出来ません……」
虚空の森を進む馬車、その馬車に乗っている女性が隣に座っている護衛の男に不安事を打ち明ける。
「大丈夫ですよ、お嬢様ならきっと上手く出来ます!」
黒い髪の青年は隣に座る女性をお嬢様と呼び元気付ける。
「でも……」
不安そうな表情をしながら女性が馬車の窓から外を見た時、普段ならありえない物が見えたのだ。
そこで見えたのは紅き鋭い瞳を持った犬のような獣が複数体いたのだ。
「えっ……魔獣……?」
普段ならありえない光景に驚いた表情をし、窓の外にいる獣の総称を口に出す。
「何ですって!?」
その言葉を聞いた青年はすぐに窓の外を見て状況を確認する。
「なんで……こんなところに魔獣が……?お嬢様はこの中で隠れていてください!!」
青年は戸惑いを見せたが、自分の使命を全うするべく、馬車の扉を開ける。
「待って!あなたはどうするつもりなの!」
扉を開けた青年に女性は戸惑いを隠せなていない。
「大丈夫です、待っててください。」
そして彼は馬車から外へと飛び出して行ったのだ。
──グルルッッ
──グルルッッ
外に出た青年は周りに魔獣のうめき声が響く、どうやら自分たちは魔獣に囲まれているのだと青年は気付く。
せめてお嬢様だけでも逃げさせないと……
青年の脳裏に過ぎる思考、だが魔獣達が青年の都合など知ったことではない。
青年に向かって多くの魔獣が襲いかかる。
青年は馬車に残っている女性を守るため、腰に携えていた剣を抜き、魔獣に応戦しようとする。
この数の魔獣を1人でなんとかするといった技量は彼には持ち合わせてはいない。
彼にはその事実がわかっていた。
それでも彼は逃げたりはしない、なぜなら彼が守っている女性はこの国の未来を担う人、第1王女ガーラ様なのだから。
あの日自分を貧しいスラムから救ってくれた彼女の命を自分の命に換えても守る。
そう決心して、こっちに到達しようしている魔獣と交戦しようとした時だった。
「──中級水魔法ウォーターランス!!」
どこからかわからないがその声が聞こえた瞬間、水の槍が魔獣達を貫いた。
「間に合ったか!魔獣のいないところを切り抜けた甲斐があった!!」
いきなりの事で戸惑っている青年をよそに王都の兵士達が到着する。
その中に兵士とは違う、黒い服を着ている人相の悪い男が混ざっているのも見えた。
「お前ら!5人1組で固まって魔獣達に対応しろ!!負傷した奴は引いて他の4人でカバーし合え!」
その黒服の男は兵士達を従えて襲いかかる魔獣を倒していく。
「ガーラ姫の護衛か?俺は龍吾郎、リリー姫の護衛だ。とりあえず俺たちが魔獣を倒している隙に馬車を進めろ。」
兵士達を従えていた男は俺に近づいて身分を明かし、俺に指示を出す。
この状況で彼のことを疑う暇は無く、俺は怯えて動かないでいる馬車の運転手に進む様に伝える。
馬車は動き出し、兵士達も魔獣達を退けていっている。
行ける!このままなら……!!
と思った時、魔獣達が森の奥へと引いて行ったのだ。
どういう事だ?魔獣達が獲物を前に引くなんてそんな理性は備えていないはず……
引いてく魔獣達を見て疑問に思っていると。
「そこの人!気を付けて!!」
ガーラ様が馬車から出てきて、黒服の男に忠告した。
その瞬間森の奥から青い光が見えて、黒服の男……龍吾郎の頭部に青い矢が直撃したのが見えたのだった。




