王都編【5】
優しい声が聞こえた気がした。
「龍吾郎さん、龍吾郎さん」
懐かしくて聞いてるだけで癒されるようでなんだか涙が溢れてしまうような声。
「ほら次はあそこに行きましょう!」
ずっと聞いていたかったはずなのに、それは叶わなくて。
俺の元から離れて行ってしまったその声は……
「わたしはあなたに逢えて幸せでした。」
少しづつ弱っていく声、俺は見ているだけで……
「わたしはあなたの事が……」
その声は俺が唯一愛していた人。
失いたくなくて、失ってしまった……その人の名は……
「龍吾郎様!龍吾郎様!!大変ですぞ!!」
気がつけば俺は渋い声で呼ばれ、ベッドで寝ていた体を揺さぶられていた。
その時にすぐに気付いた。
─あぁ、さっきまでのは夢だったのか……
俺は異世界に来て、第3王女の護衛として雇われていて王城の空き部屋にアミと共に泊まらせてもらっているんだった。
それはそれとして、
俺はリリーの執事であるシツによって起こされていたのだ。
「……なんじゃ?カチコミか??」
眠がりながらも、俺を起こしているシツに用事を聞く。
「緊急事態が起こりました!今すぐ起きてください!!」
本当に切羽詰まったような声にただ事ではないとすぐに察した俺はベッドから出て、隣とベッドで寝ているアミを置いてそのままシツに着いて行った。
「それで何があった??」
部屋を出てしばらくし、少し広い空間に出た俺はシツに現状を聞いた。
「実は虚空の森にて魔獣の大群の発見報告が今朝あったんです。」
虚空の森と言うと、昨日第2王女であるビィアルが話してくれた魔獣の出ないという森だ。
そこに魔獣が出たっていう話らしい、これの何がまずいかというと。
「第1王女は無事なのか?」
今日第1王女であるガーラが虚空の森を通ってこちらに来るという事だ。
「まだわかりません、ですのであなたにはガーラ様が虚空の森を出るまでの間ガーラ様の警護隊を率いてもらいたいのです。」
警護隊!?
いきなりそんな役職振られてもと思ったが今は時間がない、こんな事で討論になっても仕方ない。
「わかった!アミを頼む。」
俺はその頼みを承諾した。
「ありがとうございます、それでは着いてきてください。」
そして俺たち2人は虚空の森へいく為の門まだ来ていた。
そこには20数名の兵士が揃って待っていた。
「着きました。それでは龍吾郎様、ガーラ様をよろしくお願いします」
シツは頭を下げて俺に頼む。
「わかった……よし!お前ら行くぞ!!」
集合している兵士達に対して声を張る。
兵士達は皆、俺の方を向いた。
数をちゃんと合わせると俺含めて25人、そこそこの数だ。
俺はその兵士達と虚空の森へ入る前にある事をしようとする。
「……少し待ってろ、魔獣の数を確認する。」
──マジックオープン
兵士達は動きを止めて俺の様子を伺う。
「──探査風魔法サーチブリーズ」
まず大切なのは地形の把握と敵の数、それを知るために魔法を使う。
魔法で確認してみて把握する虚空の森の広さ、森と言うには十分といった広さ。
そして魔獣の数だが……魔法で確認している最中、俺は驚きを隠せないでいた。
「10……100……いや、1000を超えてる!?」




