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アミ

 龍吾郎とアミという少女が互いを見ている。


「なんでこんなところに?下手してたら死んでたぞ。」


 先に口を開いたのは龍吾郎だった。

 見たところ7、8才くらいの少女がこんな魔獣の住んでいる場所に来るのが龍吾郎には不思議だった。


「えっと……その……」


 少女は何か言いづらいのか、体をもじもじとさせて答えようとはしなかった。


 仕方がないから他の質問をするか。この世界の住人とはいえ、こんな小さい子にこの世界の事を教えてくれといってもわからないだろう。


「お父さんやお母さんは?」


 まずはこの子の両親について聞く。

 この子が知らなくても親に聞けば何かわかるはずだとそう思っての質問だった。


「お父さんは……私が産まれる前に、お母さん……は……今朝……死ん……じゃって」


 だが俺の質問に少女は涙を流しながら、答えてくれた。

 両親がもうこの世にはいない、しかも母親については今日死んだばかりだそうだ。


 これは相当ひどい質問をしてしまったとこの時龍吾郎は後悔していた。


「す、すまん。」


「いえ、大丈夫です。」


 アミは涙を拭いて、笑って見せた。

 自分を助けてくれた恩人である俺を心配させたくない為に。


 この少女は強い、自分が辛い目にあっても他人の事を思いやれるやさしい心を持っているのだ。


 そんな時、アミの前髪で隠れている眼が一瞬だけ見えた。

 黒い左眼とは違い、ルビーのように美しい赤色の瞳がチラッと見えたのだ。

 オッドアイという物だろうか?


【その子、半魔人のようですね。】


 このアミの眼に疑問を持った瞬間、説明が脳内に語りかけてきた。


「半魔人??」


 説明が言った意味のわからない言葉に俺はついボソッとそう呟いた。


「ひ、ひぃ……ごめんない」


 その声が聞こえたのか、アミは体を震わせて俺に恐怖の眼で見てきた。

 いったい何がこの少女を怯えさせたのか?


【半魔人の説明を致します。半魔人とは、魔人と人の間に出来た子どものことです。

魔力は普通の人間に比べると多少高く、暴走しやすい為、魔人そして人から忌み嫌われる存在です。】


 魔人?また新しい単語が出てきた。

 それにしても、魔人や人から忌み嫌われるか。

 アミが俺の言葉で怯えたのにも納得が行った。


「あぁすまん、大丈夫だ。俺はお前に酷いことはしない。ただ俺はちょっとこの土地の事知らなくてな、なんか知ってたら教えて欲しいんだ。」


 ひとまず、俺が異世界人とかいうのは伏せておこう。

 それで尚且つ俺の目的をアミに教える。


「……この近くに私が生まれ育った村があります。でも……」


 アミはこの近くに村があると言った。

 村にならたしかにこの世界だとかに詳しい人間もいそうだ。


 ただ、アミの顔はどこか怖がっているように感じた。


「こ、こっちです……」


 アミは俺の腕を引っ張って歩き出した。

 俺もアミに引っ張られ歩き始める。


 10分程、森を歩いて森を抜けた。

 そこに見えたのは木の柵で囲われた寂れた村だった。


 俺とアミは出入り口であろう少し開けた木の柵まで来た。

 その出入り口には門番の男2人が立っていた。


 服装はアミよりはマシだが、少し古びた布を生地にしているようだ。


 その門番達はやってきた俺達を見て。


「てめぇ!ノコノコと帰ってきやがったな!」


「この半魔人が!生かして貰えただけでもありがたいと思わないのか!!」


 アミを睨んで罵倒を浴びせる2人。

 その罵倒に怯え俺の後ろへと隠れるアミ。

 流石の俺もこれには止めに入る。


「おい、待てよお前ら。まだ小さい子どもだぞ。」


 すると男達の鋭い目線はアミからこっちへと一瞬移り、少し動揺した後またアミを睨んだ。


「てめぇ恩を仇で返すつもりか!こんな魔人を連れてきやがって!!」


 ?魔人?誰の事だ?


「追い出された怨みで魔人連れて報復にでも来やがったのか!?」


 またアミに罵倒を浴びせる門番2人。

 ちょっとそれよりも疑問が浮かんだ。

 この場にいるのは門番とアミと俺、魔人なんてどこにもいやしない。


 いや待てよ……まさか。


「おいお前ら……魔人って誰の事だ?」


 この2人が言っている魔人の事について察した俺は少しイラついて、門番に確認をとる。


「て、てめぇに決まってんだろ!」


「その凶暴そうな顔立ち!それのどこが魔人じゃないっていうんだよ!!」


 やっぱりコイツら……俺の事を魔人だと思ってやがる。


 いや魔人がどんな奴らかは知らない。でもこの態度、明らかにいい感じには思えない。

 人の事を勝手に決めつけて、差別する。

 俺が大っ嫌いなタイプの奴等だ。


 だから俺はムカついて。


「俺は──魔人じゃねぇ!!」


──マジックオープン


 再び目の前に広がる文字列。

 その中から俺が選んだのは。


「──中級風魔法ストーム!」


 手を突き出して魔法を唱える。

 すると掌から竜巻が現れて、門番2人を巻き込んで村まで入っていった。


 正直やりすぎの火力ではあるが、まぁ仕方ない。

 それはそれとしてこの村で生まれ育ったアミの事が心配になった。


「す、すまん。ついイラついて、お前の育った村を……」


 申し訳なさそうに、アミに謝罪をする。

 すると次の瞬間、アミの発した言葉は……


「えっ、魔人じゃないんですか?」


 とどうやらさっきの俺の魔人じゃない発言についてだった。

 少し驚きはしたが、まぁこの子が大丈夫ならいいか。


「あぁ俺は普通の人間だ。それよりすまん、お前の生まれ育った村……」


 ちゃんと人間だという事を示して、話を元に戻した。

 その間も竜巻は村を襲っている、竜巻の解除方法がわからないからこれは仕方ない。


「確かに、村のみんなは優しかったです。

でも……お母さんが死んで、魔石が出てきてお母さんが魔人ってみんなが知った瞬間、私への態度は変わりました。」


「嫌な事を言われたり、石を投げつけられたり、そして村から追い出されて森に捨てられて……」


 アミの言葉を聞いて、この村の連中がこの子にしたことは大体はわかった。


 龍吾郎はかつての自分を思い出す。

 他人から疎まれ、蔑まれた日々。それでも組長やアイツが手を差し伸べてくれたから今まで俺は生きてこられた。

 

 まぁ死んだんだけどな。


 だからこの子には俺が手を差し伸べてあげるべきなんだ。


「なら……俺とこないか?」


「えっ?」


 突然の俺の提案にアミは驚いたように顔を上げた。


「俺も1人なんだ、だからこの先結構不安でよ。……2人ならまぁなんとかなるだろ。……どうだ?」


 少し照れながら言う。

 割と恥ずかしいセリフを言っているのだと実感はしていた。


「私が怖くないんですか?」

 

 少女は心配そうに言った。


「いや、お前の事なんてこれっっぽっちも怖くない。」


 そんな心配そうな顔を掻き消そうとして笑いながら答える。


 少女はその言葉を聞き、涙を流す。


「はい、はい!お願いします。」


 こうして後ろで村の家が吹き飛ばされる中、俺達は一緒に行く事になった。

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