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孤児院

 この世界に来てから数日が経って生活にも慣れてきた。

 夕方、俺はギルドから仕事の報酬をもらい帰宅していた。

 今日の仕事はかなり楽そうだったので、アミに留守番を頼んで1人で行ってきたのだ。


 家に帰る途中で今日の夕飯の買い物をしようといつも使っている、元の世界でいうところのスーパー的な店へ寄り道する。

 スーパーといっても規模は小さく、客もあんまりおらず売っている物も食べ物やちょっとした本や雑貨くらいしかない。

 まぁこの店は老夫婦が営んでるため、そういったところには目をつむっておかないと。


 今日の夕飯はどうしようか、そう思いながら店を見回る。

 迷いながら店中を歩いていると本のコーナーへとついてしまっていた。


 そういえばアミにこういった物を買ってあげた事がないことに気づく。

 アミの将来のことも考えるのだったら、まずは子供向けの本とかで文字ォ学ばせたほうがいいのかな、と考えて数冊買うことに決めた。


 子供向けの本を見ていると、なんか見覚えのある本が数冊あるのに気がついた。

 [梨太郎][黒雪姫][たいまつ売りの少女]

 まぁ俺の知ってる物語と似ているのなら、文字を学ばせやすいと考えて、これらを購入することを決める。

 あと人気の本と書かれてるこの本も一応買っておこう。


 俺は[ヨトとリュネン]を手に取って食材の買い物へと戻った。


 その後食材をそこそこ買い、会計へと向かう。

 今日はおばあさんの方がレジ担当らしい。

 しかしおばあさんは困った顔をしながら。


「いやぁ……困ったねぇ……」


 とこちらをチラチラ見ながら言ってくる。

 これはあれか?悩みを聞いてくれって事なのか?

 でもこういうところでなんか聞いておかないと、今後面倒な事になりそうだなぁ。


 そう思った俺は声をかける事にした。


「どうしたんだい?ばあさん。」


 そう聞くとおばあさんは(待ってました!)と言わんばかりに目を輝かせる。


「いや実はね、じいさんが腰をやってしまってね。今日孤児院に届けるはずの野菜を届けられなくなってしまったんだい。

いやぁ困ったねぇ〜」


 おばあさんはそう言って再びこっちをチラチラと見ている。

 まぁ孤児院に届けて欲しいという事なんだろう。聞いてしまった以上こういう事って引き受けなきゃいけないよな。

 そう思って。


「その野菜、俺が持っていこうか?」


 とおばあさんの頼みを了承する。


「本当かい!?いやぁありがたいねぇ〜一応孤児院の場所まで着いて行くから、ちょ〜っと待っててね」


 そう言っておばあさんは店をいったん閉めて野菜が詰まったカゴ3つを俺に渡して、そのまま2人で孤児院まで歩く。


 このカゴ結構重たく、横幅か大体俺の肩幅くらいあり、縦幅は俺の腕の前腕部くらいあり、その中いっぱいに野菜がしき詰まっているんだから結構持っててキツく感じだ。


「ありがとね、お礼に少し野菜をわけてあげるからね。」


 俺の隣を歩くおばあさんはそういう。


 しばらくして少し古びた建物へと着く。

 外装は少し剥がれており、コケがところどころに見えた。


「おおっ着いたよ、ここが孤児院だよ!」


 えっ!?ここが?

 あまり衛生的によろしくない場所が孤児院だというのか?

 俺はその事実に驚きながら、その孤児院を見ていた。


 しかし孤児院の前の広場で子供達の声が聞こえた。見た感じ、追いかけっこでもしている様子だった。

 どうやらこの孤児院の子供達のようだ。

 けれども知っている声も聞こえてきて……


 孤児院の子供達の中に白髪の女の子が見えた……なんかアミに似て……


 いや!あれはアミだ!!


「……あっ!」


 俺に気が付いたのか、アミは小さめに手を振った。

 俺はアミに近づいていった。


「アミ!どうしてここに?」


 疑問符を浮かべながら、アミにきく。


「ご、ごめんない……お留守番出来なくて……家から少し出たらみんなと会って、遊ぼうって誘われて……」


 アミは申し訳なさそうな顔を浮かべる。


「いや、謝らなくていいぞアミ……」


 俺がアミに話しかけてるその時だった。


「アミをイジメるな!おじさん!!」


 と子供の大声と共に背中を蹴られた感触がした。

 振り返るとそこにはアミと同じくらいの歳の男の子が立っていた。

 他の子供達もその男の子を中心に集まってくる。


「イジメてねぇよ!ってかおじさん言うな!!」


 俺の目の前にいる子供達にそういう。


「ち、違うのみんな!この人は私のお父さんで……」


 アミは俺の前に立って、子供達に俺への弁明をする。


「えっ〜お父さん!?でもアミとおじさん似てねぇよ!!」


 俺の事を蹴った男の子が不思議そうに言った。見た感じこの子が子供達のリーダー的ポジションなんだろう。


「うっせ!ってかおじさん言うな!」


「おやおや元気ですねみんな」


 子供達にそう言ってると後ろからおばあさんが来た。


「あっ!いつも野菜くれるおばちゃん!!」


 子供達は俺とは違いおばあさんに好意を持ちながら近寄る。


「この人は私の事を手伝ってくれるいい人だよ。みんなも仲良くしてあげてね」


「「はーい!」」


 子供達は一斉に声を上げた。


 そして俺はひとまずアミと離れて、孤児院の中へと入る。

 外装も酷かったが、内装もやばい。


 壁の穴は多く、床には虫がいるのを何度目撃したかわからないほどだった。


「いつもありがとうございます。」


 この孤児院の寮母さんはそう言って野菜を引き取ってくれた。

 髪型は少し白髪が混ざっている黒髪のお団子ヘアー、顔にはかなりのシワがあるのが見え結構なお年なのがわかる。


「やっぱり、大変なんですか?」


 野菜を渡しながら少し聞いてみた。


「そうですね……最近は王都からの支給も少なくなってきましてね……」


 少し暗い表情を浮かべる寮母、やっぱり色々と不安ごとがあるのだろうか?

 けれど寮母は顔を上げ。


「ですが、子供達の顔を見ると、そんな不安も消えるんですよ。あの子達のためなら私は頑張れます。」


 その高齢なのに対して、力強い決意のこもった表情を浮かべる。


 その表情に何か衝撃を受けながら、孤児院を出る。

 おばあさんはまだ何かするらしく残るそうで、俺にお礼として少しの野菜を渡した。


 外に出て、俺はアミに声をかける。


「アミ!俺はもう帰るけど、アミはどうする?」


 アミは迷っていたが、もう少し遊んでから帰ると言い、俺は先に帰った。


 その日は、夕日が沈む中1人寂しくもあの寮母さんの言ったことを思いながら帰った。

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