初任務【6】
魔人エスカールを倒した俺は村の入り口にまでむかっていた。
村の入り口に多くの村人がいるのが見えた。
その中にアミもいて、俺がきたのに気がついたのかこっちに振り向いて子供みたいに無邪気に走ってきた。
「戻ってきたぞ」
走ってくるアミにそう言った。
アミは走ってそのまま俺の胸元に抱きついてきた。
「生きてて……よかった……」
俺の胸元に顔を埋めながらアミは話した。
顔は見えないが、アミからはすすり泣くような声が聞こえてきた。
俺はなにも喋らずにアミの頭に手を乗せ、そのまま撫でた。
「あなたが……魔人を?」
村人の1人の男が俺に聞いてくる。
「あぁ、そうだ。」
俺は村人のといかけに答える。
「な、なんと……あなたにはなんて感謝の言葉を申し上げたらいいか……」
驚きながらも喜んでいる声で俺に感謝の気持ちを現してくれた。
「いやこれも仕事ですから」
格好をつけるように村人に話す。
まぁ実際仕事がなかったので、大変ではあったが助かった。
「そ、そうですか!……ですが魔人を倒してくれた報酬を払えるだけの資金力が私たちの村には……魔獣討伐ならなんとか……」
村人は喜んでくれたが、それと同時に俺に対しての報酬についての心配をした。
たしかに報酬は必要だ、それを目的に俺は今回の仕事を引き受けたのだから。
報酬が少ないというのは残念な話になるが、俺にはとっておきの金策がある。
「それならこの魔石、持って帰っていいか?その分、報酬は安くてもいい」
そうこの村を襲っていた魔獣に加えて、魔人エスカールだった大粒の魔石を俺は手に入れていた。
魔石はギルドだとかで換金してもらえるため魔石をもらうだけでかなりの儲けになるのだ。
「えぇ、構いません!そちらの魔石は全てあなたが貰っていってください!!」
村人は快く了承してくれた。
許可が降りたのなら遠慮する必要はなく、俺は魔石を持って帰ることにした。
「それじゃあ、俺たちはこれで……」
仕事も終えたところで都市バゼレへと帰ろうとする。
「えっ!?もう帰ってしまうんですか?今日はもう遅いですし、こちらの村で休まれてはいかがですか?」
村人は今日は休んでいけと勧めてきた。
たしかに昼間にバゼレを出てかなりの速度でこの村まで移動して魔獣と魔人を倒したんだ、今日は流石に疲れた。
「じゃあお言葉に甘えて今日はこちらの村で休ませてもらいます。アミもいいな……って」
アミにこの村で休むか聞こうとしたが、アミは既に俺に抱きついたまま目を閉じて眠りへと落ちていた。
今日は疲れたんだろうな。
「よく頑張ったな」
静かにアミの頭を撫でて、俺とアミはこの村に一泊させてもらった。
そしてその翌日、俺たちは都市へと帰るために村の出入り口へと来ていた。
そこには村の人たちの大半が俺たちを見送るという目的で来ていた。
「本当にありがとうございました!」
「おかげでこの村は救われた!」
村人はから聞こえてくる賞賛の言葉の数々、あまり褒め慣れていない俺は少し恥ずかしくなり顔を赤くしながら村から出た。
「おーい!!」
後ろから子供の声が聞こえてきた。
俺たちは振り返って声をかけてくれた子供を見た。
その声の主は今回の仕事を依頼してこの村まで案内してくれたライトだった。
「ありがとうな!!またこの村に遊びにこいよ!!」
少し離れた距離の俺たちにまで聞こえるようちライトは声をあげる。
俺とアミはその声に手を振って答えて、そのまま村を離れた。
そして都市バゼレに到着したのは夕方くらいになっていた。
とりあえず持っている魔石を換金したいため家に帰る前に2人でギルドへと立ち寄った。
ギルドに入るといくつかの視線を感じた。
とりあえず視線には気にせず、受付まで行き魔石を換金してくれるように頼みにいく。
「あっ!お仕事おつかれ様でした!!魔獣は……大丈夫でしたか?」
受付の女の人は俺のことを心配する様に言う。
「大丈夫だ。それより魔石を買い取ってくれ。」
そう言いながら俺は持っていた袋を受付の女の人に渡した。
「す、凄い数…………ってこれ魔人の魔石じゃないですか!!!!」
袋の中に入ってる魔石を確認している最中に受付の人は大きな魔石を見つけギルドチユに聞こえるような大声で叫んだ。
その声にギルド内にいた冒険者達が反応しギルド全体がざわつき始める。
「おい聞いたか?魔人の魔石だってよ」
「嘘だろ?アイツ魔人を倒したってことなのか??」
などといった発言がギルド中を駆け巡る。
「す、凄い!もしかして魔人討伐なされたんですか!?」
受付の人も少しテンションが上がっていく。
「ま、まぁな話せば長くなるんだが……」
照れながらも受付の質問に答える。
質問に答えた瞬間、俺の両手が受付の人の手に包み込まれる。
「凄いことですよ!?魔人を討伐できる冒険者は数少ないです!このギルドでは後1人しか魔人を倒せる人がいないくらいなんですから!!」
さっきの割と冷静な感じの人とは違い、受付の人は相当興奮していた。
「あ、あの……」
アミが心配そうに受付の人に声をかけた。
「あぁ君はよく龍吾郎さんと一緒にいる子だね。親子なんですか?」
アミと話しながらこの子との関係について受付の人は俺に聞いてきた。
「ま、まぁそうだな今はこの子の親って感じだ」
あまりにもグイグイくるので少し引きながらも答える。
「へー……ん?その眼……もしかして君半魔人?」
受付の言葉に俺は驚きを隠せないでいる。
おそらくアミの前髪の間から瞳が見えたのだろう。
まずいと一瞬で思った。
アミは半魔人であるために迫害を受けてきた、それを隠していたのにこんなところでバレたら……
「珍しいね、あっ私の自己紹介がまだだったね。私はエノンよろしくね」
俺の心配とは裏腹に受付のエノンからきたのは迫害ではなく歓迎の言葉だった。
「……怖くないのか?半魔人はみんな嫌ってるって……」
俺はつい、エノンに聞いた。
「怖く……ですか?まぁ半魔人は魔人を寄せ付けるってデマはよく聞きますけど、本当はそんな事ないですからね
都市から離れたところではまだ信じられてるそうですけど」
えっ……デマ?
エノンからきた言葉に困惑する。
つまりアミのいた村ではデマを信じてアミに酷いことをしていたと?
その瞬間俺の脳内では2つの感情があった。
1つはアミに酷いことをしていたあの村の連中に対する怒り。
そしてもう1つはここが半魔人である、アミにちゃんと接してくれる世界だと知り安心する気持ちだ。
その後ちゃんと魔石を換金してもらい今日の成果は金貨47枚ほどになった。
大変だったが、それだけ色々と得るものがあった任務だった!




