初任務【5】
村のちかくにある森、俺とエスカールはそこに戦いの場を移していた。
移していた、というよりエスカールの攻撃によって俺が森まで吹き飛ばされていたのだ。
「どうしたんですか?もう終わりですか??」
ボロボロな俺に対して煽りを入れるエスカール……クソッこっちは説明の準備が完了するまであんまり魔法が使えないんだよ!
今はさっき使ってたフロートでなんとか攻撃を凌ぎきっている状況だ。
「終わりならトドメをさしますよ!!」
エスカールがトドメをさしにこちらへと接近する……その時
【魔法、解析終わりました!これらの魔法をお使いください!】
ちょうどいいタイミングだ。
このままエスカールに魔法をぶつける!
【ですがこの2つの魔法は配分を少しでも間違えると失敗する可能性が……】
そんな事はわかっている、違う種類の魔法を別々に使うから配分を間違える……なら同時に魔法を使えばいい。
今まで俺は片手だけでも魔法を使えた、ならそれを右手と左手で同時に使えばいい。
「土魔法セメンツ……+中級水魔法ウォーターカッター!!」
両手を合わせて2種の魔法をエスカールに放つ。
「ぐぉぉぉ……!!」
エスカールは避けられずに魔法に直撃する。
砂利などを仕込んだ水は通常の数倍の威力になっており、エスカールにはさっきよりも相当のダメージが入れられているはず……だった。
「さっきのよりはよかったですよ。……ただ体中が泥まみれですよ、動きにくいったらありゃしない。」
エスカールは体中に灰色っぽい泥まみれで立っていた。
「やっと終わりですか?なら死ね……!」
泥をかぶった状態で再び俺に襲いかかってくるエスカール。
「──初級炎魔法ファイア!」
俺はむかってくるエスカールに火球をぶつけようとする。
「はっ!もう魔力切れですか!?こんな魔法避けるまでもない!!」
そう自信ありげに自らぶつかりに行くようにして火球に直撃して体全体を包みこまれた。
……計画通り
「さぁ!終わりです!!」
火球を通り過ぎたエスカールは足を強く踏み込んでさらに加速しようとした。
その瞬間だった!
「……な、なんだ!?体が……う、動かせねぇ!!??」
エスカールの動きが止まったのだ。
「……ふぅ、作戦通り。」
動きの止まったエスカールを見て安堵のため息をこぼした。
「なっ、私になにを!?」
エスカールはなにが起こったかわからないという表情をして焦っていた。
「お前が被ってる泥……それは実はコンクリートだ」
エスカールにむかい、被ってる物の正体を明かした。
「コ、コンクリート……?」
理解できていない雰囲気のエスカール、この世界にはコンクリートというものがないのだろうか?
「言ってしまえばお前の動きを止めるためのものだ。」
俺は準備していたのだ。
土魔法セメンツにはセメント、そして砂利といったコンクリートをつくるためには必要な物で構成されており、それを水と混ぜるようにして同時に放ってコンクリートを作ったのだ。
あとは雑だが炎魔法で焼き、固めれば拘束完了!というわけだ。
こういった事は初めてやったがうまくできる物だなと自分に自信が持てた。
「……だが!この程度で俺を倒せると思っているのか?」
拘束されていても余裕そうに振る舞うエスカール、たしかにコンクリートで固めただけではコイツは倒せない。
ならなぜコンクリートで固めたのか?……答えは単純、動きを封じたかったからだ。
「今動けないよな?」
天に手を掲げて俺は言った。
「な、なにを……?」
「──上級炎魔法、ブラストバーン」
そう唱えて、俺の頭上には巨大な炎の塊ができはじめていた。
この魔法は使うまでに時間がかかる魔法、そしてそのコンクリートはこの魔法を使う為の時間稼ぎだ。
大きく、さらに大きくなっていく火球。
「ま……まてっそれは……」
さっきの魔法のより威力が高い事を感じとったエスカールは動きを封じられながらも、恐怖で体震えているようだった。
「じゃあ……死んでこい」
容赦なくエスカールに叩きつけられる火球。
「や、やっやめろぉぉぉぉぉ!!」
エスカールの叫び声は巨大な火球の中へと消えていき、しばらくの時間が経った。
火球は自然に消滅して、後に残ったのは魔獣達のよりも大きく美しい魔石だった。




