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初任務【4】

 私に向けられた攻撃から助けてくれたその人は、私の事を「娘」と呼んでくれた。


 出来る事ならこのままこの人と離れずいたかった。


 でもこの人は私たちにここから離れるようにと言った。


 でもわかっていた。


 私がこのままいると、この人の邪魔になるってことくらい。

 

 それでも、私はこの人の側を離れたくなかった。


「でも……」


 しかし現実はそんなには甘くはない。


「いいから!早く!!」


 聞いたことのない声と剣幕で彼は私たちに大声で警告される。

 私はその気迫で動けなくなってしまっていた。


 そんな時だった。


「行くぞ」


 彼の依頼人である少年ライトが私の手を掴んで引っ張る。

 そうだ、今はこんなところで止まっている場合じゃない。


 今私に出来る事をしよう。


 私はライトに引っ張られながらも走った。

 その時走るのに必死で髪が乱れていたことに私は気がついていなかった。


「おい母さん!父さん!」


 とある家の扉を叩きながらライトは必死に呼びかけた。

 どうやらここは彼の家のようだ。


 扉が開き、男の子と女の人が家の中から出てくる。

 2人揃って怯え切った表情をしていた。


「か、帰ってきたかライト……なんなんだこの音は?魔獣は?村は無事なんだろうな!?」


 恐怖しながらも父親の方がライトに状況を聞く。


「それが魔獣出現は魔人の仕業で……今冒険者の人が戦ってくれているんだ!!」


 ライトは両親にそう知らせる。


「魔人だって!?……ってきみ、その目!」


 ライトの両親は私の方を見て驚いた表情を浮かべる。

 だって今は赤い目を隠していた髪が乱れて見えてしまっているからだった。


 私はそのことに気がついてすぐに髪を直したが時すでに遅し。


「こいつが!今回の元凶か!!」


 男の人の怒号が私に向けられて放たれる。

 それを聞いたライトは自分の父親に向かって弁明しようとしてが。


「離れてなさい!この悪魔め!息子に取り入ろうったってそうわいかない!!」


 母親の方も私に対して敵意をむき出しにしてきた。

 あの村の人達と同じ感情を小さな体の私に向かって突き刺される。


「いいからあっちに……」


 ライトの父親がで振り上げて、私に向かって振り下ろそうとした時。


「違うよ!父さん!!母さん!!」


 ライトが声をあげて私と父親の間に割って入ってきた。


「この子は今日来た冒険者の連れだよ!今回の件とは関係ないよ!!」


 ライトの剣幕に少し引き気味になる両親。


「それよりも早く他の家の人を避難させるように行かないと、いつあっちの戦いの余波が来るかわからない!」


 ライトの言葉に少し疑いながらも両親達は顔を見合わせた。


「……わかった、お父さんとお母さんはあっちの家の人たちを避難させてくる。お前達は反対の家の人たちを避難させなさい。」


 ライトの父親がそう言って私たちは二手に分かれて村の人たちを避難させた。

 パニックになる人もいたが、ゆっくりとなだめて龍吾郎さんの戦ってる反対にある村の入り口へと村民を避難させた。


「これで全員か?」


 ライトの父親が人数の確認をする。


「……おい、タカスさん達が来てないぞ!」


 タカスさんという人達がいない事に気がついた村民の1人が声を上げる。


「マジかよ……あの人達の家確か、今物凄い衝撃音がしてる方だろ……」


 村民の誰がそう言ってそこにいた人達はザワつき始める。


 その時だった。


「おーい!」


 向こうの方から男性と女性そして少し大きな子供の3人がこちらへと向かってきた。


「よかった!あの人達がタカスさん達だ!」


 タカスさん達が無事だったと知り、喜びの声をあげる村の人々、しかし。


 そのタカスさん一家の後ろから龍吾郎さん達の戦闘の余波なのか大岩が飛んでくる。


「危ない!!」


 1人が大声で叫んで周りもそれに反応する。

 しかし、岩が大きすぎてタカスさん達は逃げ切れなさそうだった。


 このままだとあの三人は大岩に潰される……私はこのまま見過ごすしかないのか?


 足が前へと動く。


 無謀かもしれない、それでも……あの人だって今頑張っているんだ。娘の私が頑張らないでどうするんだ。


 走りだす。周りの声も聞こえないほど必死になりながら大岩に潰されそうになっているあの一家を守るため。


 大岩が到着するまでにはなんとか間に合った……それでも私に何が出来ようか。


 なんとかこの人たちを助けたい。私にとっては他人だけど、そんな事なんて関係なかった。


 お願い……私にこの人たちをを守るだけのなにかを……。


 私は大岩に手をのばす。それでも岩の勢いは止まらない。


 それでも……私は諦めたくない……!


 そう思った瞬間だった。


 手から大きな水球が出て、飛んできた大岩を包み込み勢いを殺し、地面に大岩と共におちていったのだ。


 今のは……魔法?


 恩人でもある龍吾郎から始めてもらった物……水の魔法、それが再びアミのことを守ったのだ。


「あ、ありがとう!!」

 

 大岩から守った家族が私にむかってそう言った。


「すげーぞ嬢ちゃん!!」


「たいしたもんだ!!」


 そして私のことを見ていた他の村人の方達が称賛の言葉を投げかけてくれる。


 そして……さっき私を罵倒していたライトの両親が私の前にやってきた。


「さっきはすまんかった……」


「ひどい事を言ってしまったね……」


 ライトの両親はそう言いながら深く、頭をさげる。


「い、いえそんな……私は特に何も……」


 今まで受けた事ない対応に焦ってしまう。


 それでも村の人達は私に感謝と称賛の言葉をくれてはじめてもらった言葉につい、照れてしまった。


 こうして、村人全員の避難が完了する。

 怪我人は多いが、死者は奇跡なことにいなかったという。

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