初任務【3】
異世界人龍吾郎と魔人エスカールが対峙する。
「おいアミ小僧、早く下がれ。」
龍吾郎は後ろで立ち尽くしている2人に声をかける。
コイツの目的はアミだ、ならこの場から引き剥がすのが正解だろう。
それに……下手したらこの戦いの巻き添えを喰らいかねない。
「俺はコイツを村から遠ざける。そのうちに村の奴らを遠くに避難させろ。」
この魔人からは重圧が溢れ出していた。
正直、2人を守りながら戦うのは今の俺には出来ない。
「でも……」
不安そうな目で見つめてくるアミ。
心配してくれているのはわかる。でも、今はそれどころではない。
「いいから!はやく!!」
早く行くようにと叫ぶ。
アミはその声を聞いて、体が止まってしまう。
しかし……。
「行くぞ」
俺の意思を理解したライトがアミの腕を掴み俺から離れていく。
「逃がすと思っているんですか?」
そう言って動き出そうとするエスカール。
アミを追いかけようとしている、それだけは阻止する。
だが、俺にはまともな戦闘能力は無い。
出来ることはせいぜい魔法を撃ちまくる事だけだ。
なら、コイツに頼ってみる。
「──説明。」
【はい、なんでしょうか?】
俺の呼びかけに脳内で答える存在。
コイツには異世界に来た時から俺の知らない知識を教えてもらっている。
だから、俺が説明に聞くことは。
─説明、お前戦闘のバックアップとれるか?
俺は説明に戦闘でのサポートを要請した。
【ええ、可能です。】
俺の要請に即答する説明。
─なら、頼んでいいか。
俺は説明に戦闘サポートを頼んだ。
【わかりました。では今はこの魔法をお使いください。──マジックオープン!】
突如として脳内に魔法一覧が映し出され、一つの魔法が目の前に出される。
今は細かいところは気にせず、俺はその魔法を使う。
「補助風魔法フロート!」
そう魔法を唱えた瞬間、体が浮き体全体に魔力の防御層みたいなのが貼られたのを感じた。
しかしそんな体の変化を実感する間も無く、エスカールは俺から10メートル以上も離れていたのにも関わらず、一瞬で俺の目の前に現れた。
咄嗟に後ろに飛ぶ。
【この魔法を!!】
説明が目の前に魔法が表示する。
「中級炎魔法フレアバーン!!」
後ろへと飛びながらエスカール目掛けて巨大な炎の塊が放たれる。
幸い、この近くには人の気配はしなかった。
そして炎の塊がエスカールを包み込んだ。
「やったか!」
勝ちを確信する俺。
【いえ、まだです!!】
即座に否定する説明。
そして炎の塊の中から無傷のエスカールが現れる。
「なっ……!!無傷だと!?」
魔法がエスカールに効いていない事に俺は驚きを隠せないでいた。
【ダメです、火力が足りません!!】
説明は即座に無傷の理由を看破する。
─もっと威力の高い魔法は!?
俺はさっきのよりも更に強い魔法を要求する。
【あります……が、放つのに時間がかかります !今この状況じゃ……】
説明が言っている魔法が使うのにどれくらい時間がかかるのはわからないが、エスカールの速さをみるに本当に使っている隙はなさそうだ。
「さーて、こちらからもいきますよ。」
炎の中から出てきたエスカールは余裕そうに言いながら、再び俺の目の前まで迫る。
そして、拳による連続突きが俺に浴びせられる。
両手と魔力で前身を固めてエスカールの攻撃を防いでいるのだが、それも長くは続かないだろう。
このままだと……やられる。
俺がやられたら、アミや他の奴らに危険が及ぶ……
もう嫌なんだ、大切な人がいなくなるのは……
思い浮かべるはもう存在しない彼女。
もうあんな悲しい思いはしたくない。
俺は大切な人を守る為ならどんな外道な事だってしてやる。
そしてアミの顔を思い浮かべる。
その時だった、とある作戦が浮かんだのは。
─説明……今から挙げるものを魔法で出せるか教えろ……
エスカールの拳を受けながら俺は説明に聞く。
【わかりました……ですが何をするつもりですか……?】
─これからやるのはもちろん!
反撃だ!!




