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8 不運な一日の終わり

放課後の時間。

僕は今、霜崎彩芽しもさきあやめから強制スカウトされた心霊怪奇部という部活の部室に向かって下駄箱近くの廊下を歩いている。ふと、僕はあることに気づいた。

それは……。


流「場所聞かされてなかったぁー!」


今頃である。


さとみ「まあ仕方ないよー!」


流「………そうだな!」


僕は嬉しそうに言いながら。

よくよく考えればこれは好機だ。このまま忘れたフリをして下校すれば、言い訳ができる。それに……本人が了承しない限り入部届を他人が勝手に出すことはまずできない。

マジでラッキー!!


流「となればさっそく下駄箱へ…」


彩芽「おーい…影島くーん!」


流「と思ってた時期が私にもありました」


一瞬で希望が潰えた瞬間である。

気づけば彩芽さんは僕の真後ろに立っていた。なので、僕は死んだ魚のような目をしながらゆっくりと振り向いた。

特に意味はない。


彩芽「あわわ!どうしたんですか、そんな死んだ魚のような目をして!?」


すぐに拾われたなと思いながら顔の表情を普通に戻す。


彩芽「そうそう!影島の入部届の紙、代わりに出しといたよ!」


流「……へ?」


その思わぬ一言に、素っ頓狂な声が漏れる。


流「ちょっと待ってくださいよ!本人の了承がなければ他人が代わりに提出することはできないはず!」


彩芽「えっ……でもあなた言いましたよね?」


と言いながら小型のリモコンのような物を取り出す彩芽。そして、赤い色をしたボタンをすかさず押し、音が流れる。

それは……あの時の僕の声が録音されたものだった。


録音機の音

《わかったわかった!入ればいいんだろ入れば……!》


そこでカチッと押し込まれていた赤いボタンの位置が元に戻る。僕はそれを聞いた瞬間、思わず頭を抑えた。そういえばそうだった!完全に頭から抜けていた。チラッと彩芽の顔を指の間から覗くと……彩芽の顔にはもう言い逃れはできないぞと言った顔でこちらを満面な笑みで見つめてくる。だが、まだ僕には秘策がある。

それは………。


流「少し待ってもらおうか?」


彩芽「なっ何…?」


流「たしかに僕はその録音通り、了承した……だがしかし!!何に入るとまでは言っていないだろう〜?つまり……、今からでも取り消すことが可能というわけだよ!」


彩芽「それは無理だね。だってここの高校、一度入ったら取り消しは効かないもん」


流「なっ…なんだと………!」


膝をつき、四つん這いになって絶望する。


さとみ「大丈夫ー?」


そう言って僕の頭を優しく撫でる。嬉しいのだが、逆に恥ずかしくなってしまったため、顔が赤く火照ってしまう。


彩芽「ほら、ボサッとしてないで行くよー!」


そうして、半強制的に連れてかれ………やがて、その部室に到着する。


彩芽「はい!ここが私たちの部室、心霊怪奇部だよ!」


いたって普通の使われていない教室。この学校は広いため、いろんなジャンルの文化部が存在している。僕的には、この部活が本当に文化部なのか不思議に思っている。


彩芽「因みに…。君以外にももう一人妖力測定器の反応が高かった人物が居てね…。きっと気が合うと思うよ?」


そうして、彩芽はスライド式の扉を開けて、中へと入室する。僕も続いてその部屋に入ると……。


幸兎「やあ、ひょっこりはん!」


そこには見知った顔がひょっこりと机から頭を出していた。いつのネタだよと心の中でツッコミをしながらソイツを見る。


真紀「おろ?影島くんじゃないか…」


幸兎「…てっ、流じゃねえか?まさかお前か……二人目って言うのは……?」


流「んっ?てことはお前も………」


幸兎(やっぱり……!)


流(僕らは……!)


流と幸兎(似たもの同士だ!)


と何故かわからないが、この瞬間だけ僕らの心と思いは一つになった。だが、この時だけである。


彩芽「ありゃ、君たちもしや顔見知り…?」


と僕らのことを交互に見ながら疑問符を浮かべる彼女に、簡単に説明をした。


彩芽「……へー。今日たまたま屋上近くの階段で出会って、仲良くなったんだー!こんな偶然もあるんだねー…」


さとみ「あれー?屋上じゃなかったっけ?なんで場所のこと嘘ついたの?」


と何もわかっていないさとみが、不思議そうに僕の耳元で囁く。僕はそれに、小声で返答する。


流「ここではな、屋上は立ち入り禁止なんだよ。だから、あそこに入ってたなんて知られれば、とってもめんどくさいことになるんだ。だから、誤魔化すために濁したんだよ」


と言うとさとみは理解したのか、それ以上は口を挟まなかった。僕は、さとみが退屈そうにこの部室を歩き回る姿を横目に彩芽の方へと視線を戻す。


彩芽「まあ、知り合いならばお互い自己紹介をする手間が省けたな。それじゃあ、今度は改めて私の自己紹介させてもらおう」


彩芽「私の名前は霜崎彩芽しもさきあやめ。この部活の部長にして二年生だ!」


と言った彼女の言葉に、僕らは驚き次の瞬間こう叫んだ。


流「せっ……先輩ー!?」


幸兎「先輩だったんすか!?」


僕らより身長が低かったが故に同級生かな、と思っていたがまさかの僕らより一個上である。


彩芽「今失礼なこと思ったでしょ?私の身長が小さいとか、胸が小並感だとか?」


流「いや、そこまでは思ってないけど」


幸兎「身長が低いとは思いました」


普通に地雷を踏んだなこの男。


彩芽「私は小さくな〜いー!ただ周りがでかいだけだから〜!」


彩芽は半泣きでそう言い訳を並べる。

幸兎は、少し申し訳なさそうに頭を下げて謝罪をする。本当にいるんだな……鈍感系主人公って奴……。


誰かの声「いやお前がしゅじ……」


今変な声が聞こえた気がするが、途中で掠れたためになんて言おうとしたのか全く聞き取れなかった。まあ、気にする必要はないなと思った僕は、さっきの言葉を記憶から抹消するのだった。


□□□


下校中。

今日は本当にいろんなことがあって疲れてしまった。もちろん、隣で嘆く新しい友達も疲れた表情をしている。


幸兎「はぁ…。散々な目にあったぜ……」


流「お前すごい豪運持ってんのに、不幸が来るんだな?」


幸兎「いくらラッキーボーイでも、不幸はいつか訪れるもんなんだよ。まあ…、こうちまちま不幸が訪れてくれた方が、逆に安心感があるんだけどな…はっはははは!」


とさっきまでの疲れた顔を吹き飛ばすくらいの明るい声で笑い出す。本当にコイツはポジティブ思考なんだな……、と思っていると…。


幸兎「んじゃ!俺こっちだからー、また明日なー!」


真紀「じゃあねーさとみちゃーん!」


さとみ「またねー真紀ちゃーん!」


そうして別れ、僕とさとみは帰路を辿る。


さとみ「いやぁ〜〜真紀ちゃんとのお話し楽しかったー!」


と、本当に嬉しそうに僕に語るさとみ。


さとみ「ねえ、今度真紀ちゃんのいる高尾家に行ってみなーい?私すごく行ってみたーい!」


流「行きたきゃ勝手に行けよ」


と、僕は鬱陶しそうにそう言葉を吐いたが、彼女はお構いなしに話を続ける。

正直なところ、話しかけられるのは嫌いじゃないし、彼女との会話はだいぶ慣れたため別に彼女のことが嫌いというわけではない。だが、これが僕らのいつも通りの日常会話なのだ。彼女がボケれば、僕がツッコミと言った漫才のようなことを繰り返す毎日。だがそれが……、とても楽しいと気づいてしまう今日この頃なのであった。

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