4 違和感
いつから、なのだろうか。
僕は今、ある疑問を感じていた。
それは……。
さとみ「お兄ちゃん!」
そう、この妖女である。
僕はいつから、コイツの存在を認めていたのだろうか?気づけば、コイツがいることになんの不信感も湧かなくなっていた。
おかしいな、昨日まではずっと存在を否定していた筈なんだけどな……。どうしてこんなことになった。とそんなことを考えていると。
さとみ「あっ!お兄ちゃん、雨降ってきたよー!」
流「えっ?嘘っ!」
さとみ「ほんとだよ?!」
そう言われて窓から外を見てみると、さっきまでとは打って変わった空模様をしていた。たしかに、晴れている割には外に干してる人が少ないなとは思ったが、まさか雨が降るからだったとは。
流「やばいやばい!早く洗濯物を取り込まないと〜!」
そうして僕は、急いで外に干した洗濯物を中に入れた。結果は、びしょびしょだった。
ある程度濡れた物と、もろに濡れた物があった。
さとみ「あーあ、また洗わなくちゃいけなくなったね!」
と無邪気な笑みを浮かべながら少女は言った。悪魔かなこの子?少しくらい思いやってくれないのかな?と、内心泣きながらそうツッコミをする。
流「洗う……か。………めんどくさっ」
とめんどくさそうに呟く。
僕を知らない人のために説明すると、僕は所謂めんどくさがり屋なのだ。やりたい事があればそれをやるし、やりたくない事があれば後回しにするようなそんな人間だ。なので、こういうめんどくさいことが起きると、だいたい僕は横着をして済ましている。
流「仕方ない、部屋干しするかな」
そうして、僕はそれを行動に移して、さっき取り込んだ洗濯物をハンガーにかけ、またそれをカーテンのレールにかけてそのまま干した。
さとみ「ねえ、洗わないの?」
さとみが横から、そんな質問をしてきた。
その質問に、僕はこう返した。
流「めんどくさいからやらない」
さとみ「めんどくさくてもやらないといけないよー!」
と僕の言い訳を正論で言い返す。
別に洗う必要なくないか?別に濡れただけなんだからまた洗っても意味ないと思うのだが?とそんなことを思いながら黙々と干し直していく。
流「はい、おわり……と」
全て干し終わった僕は、さっきまで座っていたソファーに再度腰を下ろし、テレビをつける。
本当に、どうしてこんなことになったのやら。別に僕はこんなこと望んでいなかった。ただただ普通に過ごして、普通に人生を謳歌したかった。ただそれだけだったのに…。
どうして、こんな非現実なことに見舞われてしまったのだろうか?
□□□
そんなことを考えていると、時刻はもう五時を迎えていた。結構長い時間考え込んでいたようで、全然時間を気にしていなかった。
流「ん?もうこんな時間か……。さーて、今日は何があったかな?」
若干お腹が空いた僕は、そう一人呟きながら冷蔵庫の冷凍室を開けて何があるか模索する。だが、冷蔵庫の中には、何かめぼしいものは入っておらず、材料は無くなっていた。
あるのは、米と朝の味噌汁くらいしか残っていなかった。
流「どうするかな……、今からでも買いに行こうかな……」
とそんなことを考えていると。
ピンぽ〜んと、インターホンの音が鳴り響いた。
流「ん?誰かな?」
玄関に向かった僕は、ドアにある覗き穴から誰が来たのか確認した。すると、そこにいたのはアイツだった。それがわかった僕は、すぐさま鍵を開けてその人を家に通した。
??「お邪魔しまーす。ほら、いつも通り食材たくさん買ってきたよ」
七海だった。
島崎七海、こいつとは中学校からの友達で、僕の唯一の女友達でもある。コイツとは学校が違うが、僕のアパートの隣に彼女の自宅があるため、こうしてたまに僕のとこらに食材を買ってきてはくれている。もちろん、ちゃんとお金を払ったうえで……な。
流「別に頼んでないけどな」
と言葉を一掃するも。
七海「まあまあ、細かいことは気にしなさんなって!」
と陽気なテンションで適当にはぐらかす。
コイツは高校に上がってからというもの、こんなチャラチャラした奴になってしまったのだ。だからといって、コイツは別に悪い奴というわけではない、なんなら凄い良い奴だ。だからこそ、僕は彼女を大いに信用している。
流「まあ……そうかもな。お陰で買い出しに行かなくて済んだし…」
七海「そうそう、結果良ければ全て良しってわけよ!」
流「あーはいはい、わかったわかった」
と適当に相槌を打つ。
七海「ちょっとー!そんな適当にあしらわなくてもさー!」
僕はそんな彼女の言葉を無視しながらリビングにへと足を運ぶ。そして、彼女も僕についていき、やがてリビングにへとたどり着いた。すると……。
さとみ「わあぁーー!!!」
リビングのドアを開けると、いきなりドアの向こうからさとみが脅かしてきた。僕はそれに不覚にも驚いてしまい、変な反応をしてしまった。
流「のわああ〜!!?」
七海「んわぁ〜!」
僕の驚く声に驚いたのか、七海も釣られて驚いて叫んでいた。
七海「ちょっとちょっと!?なによいきなり叫んだりなんかしてー…」
七海は、呆れながら僕にそう言った。
そして、さとみはと言うと……。
さとみ「いえ〜い!大成功ーー!」
嬉しそうに笑っていた。おかげで良い迷惑だったけどな、と言おうと思ったが頑張って押し黙る。
僕は唖然としながらさとみに近づいて、頭を軽く叩いてやった。
さとみ「いてっ!うーー……」
とそんな可愛い声を漏らしながら頭を抑える。それが尊いと思った僕は、頑張って心を落ち着かせて平然を保った。
危ない危ない、尊過ぎてもう少しで尊死する所だった。まあ、死なないと思うけどな。
と余計なことを心の中で呟く。
七海「……ねえ?」
と僕がそんなことをしていると、七海が背中越しに僕に話しかけてきた。僕は後ろを振り向いて七海の方に視線を向ける。
すると、七海は思いがけない言葉を告げるのだった。
七海「誰……、その子……?」
……と。
顔を青ざめながら。
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