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2 影の薄いようじょ

この物語の主人公は、自分の一部を元にして作りました。

放課後の帰り道。

僕はこのわけわからん少女と一緒に帰路を辿っていた。まず勘違いしないでもらおう。僕が誘ったんじゃ無い。あの子が勝手に付いて来るだけだ。なので僕は何一つとして悪くない!とだけ言っておこう。

と、誰に対して言っているのかわからない事を心中で呟いていると。


さとみ「ねえねえお兄ちゃん?」


後ろから付いて来る少女が、僕に声をかけてきた。

だが、僕はそれに無言を突き通し、止まることなく歩き続ける。


さとみ「お兄ちゃんって影が薄いの?」


それでも少女は、そのまま言葉を続けて質問を投げかけてきた。なぜこんな事を聞いて来るのか……。

なんとなくわかるが、午後の休み時間中、僕がほとんど誰にも気づかれなかったから、そんな事を聞いてきたのだろう。

だからなんだっていう話なわけなのだが。

なんせ、何も喋る気なんてないから、多分疲れてるから幻が見えているに違いない。今日はもう早めに寝て、疲れを取るとしよう。

ちょうど明日は休みなわけだしな。


そうして、僕は自分の部屋のアパートの鍵を開けて帰宅する。


流「ただいまー」


さとみ「ただいまー、おかえりー!」


僕がそう言った後、少女も同じようにそう言った。おかえりと言った意味が良くわからなかったが、とりあえずは突っ込まないでおこう。いちいち気にしても仕方ないしな。

そして、自室に戻り服を着替え、冷凍食品の袋を開ける。今回は炒飯である。

これが美味いのよ。

そうして、皿に移していると。


さとみ「わあぁ〜…!おいしそうーー!わたしのもちょうだーい!!」


そう言って、僕の体を揺さぶってくる。

こうやって触れてる時点で、今彼女がここに存在していることを表していて、僕はこれを認めざる終えなくなった。そして、体が揺らされるたびに、冷凍食品の袋を落としそうになる。やばい、溢れる。これで落としてしまったらもともこもないな…。ここはもう致し方ないか……、と決心した僕はその言葉を口にする。


流「わかったから揺らすな、お前のも用意してやるから〜!」


さとみ「っ…!やっったぁーー!!」


少女は嬉しそうにぴょんぴょんと跳ねながらクルクルと回る。


流「無邪気だな」


せつな、僕はそう小さく呟く。

その姿に僕は、諦め気味にため息を吐きながら、新しい皿を取り出して、その子の分を準備するのだった。

我ながら、自分も甘いなとそう思いながら。


□□□


レンチンした炒飯を取り出して、テーブルまで持っていき、その子の目の前に炒飯を置く。


流「ほら、あったかい内に食いな…」


さとみ「ん〜、良い匂いだね!」


流「ソウダナ」


適当に相槌を打つ。

そうして僕らは手を合わせていただきますと言い、食べ始める。うむ、やっぱり美味い。まだちょっと冷たいところがあるけど、まあいいか……。

にしても、こうして誰かと食卓を囲みながら飯を食うのは久しぶりだな。

と、そんな事を考えていると。

僕はそこにいる少女の事について、気になることがあったので、ちょっと質問してみる事にした。


流「なあ、お前?」


さとみ「ごっくん。なに、お兄ちゃん?」


流「……自分で擬音発する奴初めて見たわ……、じゃなくてっ!」


ついいつもの癖でツッコミをしてしまった。とりあえず改めて本題に戻って尋ねる。


流「お前あの時、“なんで見えてるの”的な事言ってたろ?あれってどういう意味だ?」


僕は単純に気になった事を直球で聞いてみる。謎の深い彼女だが、彼女が何者なのか知っておく必要がある。なので僕はそれを聞いた。すると彼女は、思いがけない言葉を口にした。


さとみ「それはね、わたしが妖怪だからだよー!」


流「………はっ?」


一瞬思考が止まった。

あれか?幼女ならね、妖女ってか?

いや寒いわぼけ!良くこんな寒いシャレを思いついたな僕!だが、今そんなことはどうでもいい。どういうこと?妖怪……?存在したんすか?


流「妖怪なんだ〜……」


さとみ「あっ、お兄ちゃんすっごく驚いてる」


少女は、僕の顔を指差しながらそう言ってきた。指を指すな指を。行儀悪いぞ。とりあえず心の中で注意をする。まあ、届かないだけどね。


流「でっ……、なんの妖怪なんだ?子供の姿をしてるから座敷童子か?悪いが家には座敷はないぞ」


と冗談混じりにそう言ってみた。すると…。


さとみ「いいや、悟り妖怪だよ!」


流「………えっ?」


少女は、平然とそう言った。

今この子、さとり妖怪って言ったか?言ったよね?ていうことは、心を見透かされる!?

と、僕が警戒をしていると。


さとみ「大丈夫だよ元だから!なんせ今は、影薄の妖怪だからねー!」


流「影薄の妖怪?」


とりあえず心が読まれない事に喜びを感じる。聞いたこともない妖怪の名前に、僕は唖然としながら首を傾げる。そんな僕を見越したのか、彼女はふふんっと鼻を高くして説明を始めた。


さとみ「わたしはね、その名の通り取り憑いた人の存在を影のように薄くさせる妖怪なんだ〜!だから影薄の妖怪なんだよ」


と言って、説明が終了した。

案外簡単な説明だったけど、完全に理解することができた。ん?てことは、今僕は彼女に取り憑かれていて存在感が薄くなってきてるって事?でも、取り憑いているとは限らないしな……。


流「なあ、もしかして今絶賛取り憑かれてる?」


気になったので、とりあえず聞いてみた。

そうして、こう返答が返ってきた。


さとみ「全然!だってもともと影が薄そうだからいいかな〜てっ!」


なんだろう。喜ばしいのだけど微妙に貶されている気がした。

待てよ?妖怪ならなんで僕が視認することができたんだ?いくら影薄の妖怪でもおかしくないか?本人も知らないみたいな感じだし……。

まあ、いっか……。


そうして、この日から僕と妖怪少女との同棲生活が始まったのだった。

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